InsurTech(保険×テクノロジー)企業の投資総額が180億ドル (約2兆36億円)に達していることが判明した。世界62カ国・地域の1220社が14の分野でInsurTechに参入している。
米スタートアップ・リサーチ会社、ベンチャー・スキャナーが2017年1月から3月にかけて集計したデータによると、保険分野の中でも「自動車」「医療・旅行」「データ・インテリジェンス」「生命・住居・損害」の4つが注目を集めている。最も人気の医療・旅行InsurTechへの投資は総額93億ドル (約1兆351億円)を超えている。
InsurTech投資のトレンドは中・小型投資に移行
14の分野はたとえば、自動車保険、雇用保険、医療保険といった消費者への商品販売を主な業務とするものから、データ管理、インフラ設計、消費者管理など、法人向けのサービスを提供するものまである。
生命・住居・損害(69億ドル)や自動車(66億ドル)、データ・インテリジェンス(28億ドル)InsurTechへの投資規模も、P2P(8600万ドル)などとは比較にならないぐらい大きい。
過去10年にわたる投資の推移を見てみると 、InsurTechへの投資総額は2014年をピークに、年々減っているものの、投資件数は2016年が最も多い。つまり中国の衆安保険やシリコンバレーの人事管理ソフト会社、Zenefits という大型投資が相次いだ2015年などに比べると、中・小型投資の数が増えているということだ。
昨年から引き続きシリーズAを利用した資金調達が最も人気が高く、スタートアップを対象とした国際シード投資ファンド500 Startupsが、第2四半期最多の取引件数(20件)を記録した。
また大手によるInsurTechスタートアップ買収も目につく。今年1月には米医薬品卸売大手マッケソンが、米ヘルスケアのカバー・マイ・メッズ を11億ドル(約1224億4100万円)で買収したのを皮切りに、3月にはIntelが、自動ブレーキの画像認識技術などを開発するイスラエルのモビールアイを、153億ドル(約1兆7030億円)で買収した。
「新しい保険のビジネスモデル」を創るスタートアップ
注目のInsurTechスタートアップを、いくつか見てみよう。まずは4億ドル(約453億2800万円)の大型資金調達に成功したオスカー・ヘルス。ハーバード・ビジネス・スクール卒業生のマリオ・シュロッサ―CEO などが、2013年、ニューヨークで立ち上げた医療保険スタートアップだ。
地域医療ネットワーク「ヘルシックス」と提携することで、リアルタイムな診療イベント通知アプリを提供し、瞬く間に顧客数14万5000人という規模に成長を遂げた。ゴールドマン・サックスやGoogleキャピタルといった、国際大手が支援している。
走行分だけ保険料を支払う「ペイ・アズ・ユー・ドライブ保険」のメトロマイルは、ビッグデータ解析に基づく保険リスク評価というハイテク技術を強みに、2011年の設立以来、中国太平洋保険などから総額1億3500万ドル(約173億5479万円)を獲得。米配車アプリで人気のUberの運転手に、従量制自動車保険も提供している。
そのほか、医療サービス仲介サービス、ブライト・ヘルスや、加入者の診察データ分析から疾患リスクを測定するクローバー・ヘルスなど、高齢化や多忙な生活スタイルに見合った新鮮な発想が、続々と生まれている。
大成功をおさめているInsurTechスタートアップの多くが、保険医療機関との提携業務とコスト削減に重点を置いている。
高額な保険費ばかりがかさみ、消費者に価値を提供できない保険会社は、今後大いに苦戦を強いられるだろう。加入者とサービス機関の橋渡し役を引き受けると同時に、低価格で効率性に優れたサービスを創出できることが、新たな保険産業の常識となりそうだ。(アレン・琴子、英国在住フリーランスライター)
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