Microsoftとアクセンチュアが、ブロックチェーン技術を利用したID(身分証明書)のプロトタイプを発表した。

世界中で11億人、人口の6分の1が公的なIDを所有していない(非営利人権保護組織「ID2020」による)。このため、日常生活で何らかの支障を感じているという現状を、安全性・透明性の高い国際IDネットワークを構築することで、改善するという試みだ。

アクセンチュアは2020年までに75カ国からの難民700万人に、デジタルIDへのアクセスを普及させることを目標としている。

2030年までに全人類にデジタルIDを

自分の出生証明書や卒業証明書を自国に残して来た」という難民・移民は、けっして珍しくはない。自分の存在や経歴を証明したくても不可能なやるせなさは、経験した者にしか理解できない苦難だろう。

様々な事情でIDがないために、「家を借りられない、就職できない、銀行の口座開設やパスポートの申請が出来ない」などどいった大きな壁に苦しみ、社会から人間としての存在を拒絶されている人々が地球上に11億人以上もいるのだ。

「ID2020」ではテクノロジーを駆使し、2030年までに世界中のすべての人々がアクセス可能なデジタルIDの発行をめざしている。「IDの所有は基本的な人権の一部」というコンセプトに共感し、現在はプライス・ウォーターハウス・クーパースやシスコシステムズといった国際企業が参加している。

共有可能だがプライバシーも重視 究極の次世代IDネットワーク

Microsoftとアクセンチュアの共同プロジェクトは、「ID2020」が2017年6月に開催したサミットで発表されたものだ。既存の商用・公共の記録システムをブロックチェーン化し、一般市民が自分の個人情報にアクセスできる環境を構築して行く。

ブロックチェーン最大の利点のひとつである共有性を利用し、世界中で情報の共有が可能になるため、既存の証明書を所有している必然性がなくなるというわけだ。偽造、改ざんといった不正の防止にもつながり、効率的かつ透明性の高い、究極の次世代IDネットワークの誕生が期待できる。

今回のプロトタイプでは、バイオメトリック・データ(生体認証情報)とブロックチェーン技術を組み合わせている。

個人情報の共有という点でプライバシーが懸念されるが、アクセスの権限は本人のみにあたえられており、組織などの第三者は本人の許可なしにアクセス出来ない仕組みになっている。

また第三者が観覧できる情報は個人認証を目的とした範囲にとどめられており、本人の居所の追跡やそのほかの目的では利用できない。(アレン・琴子、英国在住フリーランスライター)

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