仮想通貨ビットコインが大量に消失したとされる事件で、取引所運営会社マウントゴックス(破産手続き中)の社長マルク・カルプレス被告が、業務上横領などの罪に問われた裁判の初公判が東京地裁で開かれた。カルプレス被告は「多くの顧客に多大な迷惑をかけたことを心からお詫び申し上げる」と謝罪したが、起訴事実は否認。無罪を主張した。
当時の時価総額にして500億円近くに上るビットコインが消失した事件の真相解明につなつながるかに注目が集まる。
顧客からの預り金着服の有無が焦点
マウントゴックスは東京を本拠地とし、一時は世界最大の取扱量を誇るビットコインの取引所だった。2014年2月に顧客分の75万ビットコインと自社保有分の10万ビットコインの計85万ビットコインが消失したことが発覚。当時の時価総額で480億円にのぼる。さらに購入用の預かり金28億円の消失も判明し、大きな問題となった。同社はビットコインと預り金消失により負債が急増し、経営破綻に追い込まれた。
同社はビットコイン消失の原因をハッキングによるものだと主張しているが、警視庁は2015年8月に口座のデータを不正に改ざんした疑いで逮捕した。今回の検察側の起訴状では、顧客の預かり金3億4000万円を管理用の口座から外部の口座へ移し、着服した等の容疑がかけられている。
カルプレス被告は経営破綻に至った責任には言及しているが、一方で容疑については全面的に否認し、無罪を主張している。検察側は預り金着服の違法性を追求していく事と併せ、送金が違法でない場合でも、会社に重大な損失を与えた特別背任の罪に当たる可能性もあるとして裁判を進めていく。
今回の裁判では顧客からの預り金着服の有無が焦点となり、ビットコイン消失についての問題は問われていない。しかし、今回の裁判で当時のマウントゴックス社内の状況や管理体制が明らかとなれば、ビットコイン消失問題の解決に進展があると見られ、注目が集まっている。しかし、検察側と弁護側の意見が対立する現状では、審理の行方は長期化が避けられないと見られる。
仮想通貨の法整備は進むが、ネガティブなイメージも残る
ここ最近大きな話題となっているビットコインであるが、マウントゴックスは早くから取引所の運営を行い、その創世記において重要な役割を担っていた。その後ビットコイン消失が大きな問題となったが、そこで初めてビットコインの存在を知った人も多いはずだ。ビットコイン消失問題はビットコインの存在を世に知らしめたと同時に、仮想通貨の法整備の必要性を世に提起した。
各国では仮想通貨の取引に係る法整備を急ぎ、現在でも試行錯誤が続いている。日本でも改正資金決済法が2017年4月に施行され、仮想通貨取引所等は登録制となった。また、取引所は利用者財産の分別管理を義務付けられ、利用者も口座開設時等には身分証明書の提示が必要となった。ビットコイン消失問題を受けて、仮想通貨の取引を法制度で管理する風潮が急速に高まったのである。
とはいえ、仮想通貨の法規制はまだ完全とは言えない。特に海外と取引するケースも多い仮想通貨の法整備には国際的な協調が必要不可欠となるが、足並みが完全に揃っているとは言い難い。ハッキング等への対策や、マネーロンダリングを目的とした取引の排除等、課題も残る。
世界中で急激に伸びているが仮想通貨であるが、法整備は道半ばといったところである。
ビットコインにネガティブなイメージを抱く人や、ビットコイン消失事件が再び起こるのではないかと懸念する人もいるだろう。今後、仮想通貨が一般的に普及していく為には、安心して取引が出来るよう更なる法整備が望まれる。同時に、仮想通貨のネガティブなイメージ払しょくには、ビットコイン消失事件の真相が明らかになる事も重要である。(
FinTech online編集部
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