海外の金融商品を購入する場合、為替変動リスクが出てきます。その際にどうリスク回避するか、が大事な選択になります。リスク回避策を取らなかったため、本来であれば利益になっていたのにもかかわらず、最終的にはマイナスになってしまったという可能性も存在するのです。
そのような不遇な運命にならないための為替ヘッジについて解説していきます。
ヘッジとは?
投資信託でも、「為替ヘッジあり」と書いてある商品がありますよね。「円高に振れたが、為替ヘッジをしていたので、企業業績には影響が無かった。」というようなことをお聞きしたことがある方もいるのではないでしょうか。
簡単に言うと、ヘッジとは回避するということです。リスクヘッジというと、リスクを回避するということになります。為替リスクをヘッジするということは、為替の変動リスクを回避するということです。ここで気をつけるべきなのは、「リスク」という言葉の意味です。
金融の世界では、「リスク」とは「危険」ではなく、「変動の可能性」を指します。つまり、損をするのもリスク、得をするのもリスクです。損をすることだけをリスクと考えられる方も多いので注意しましょう。
リスクヘッジをするということは、損をする可能性を潰すということですが、同時に得をする可能性も潰します。
だから、「為替で儲けたい!!」という人は、ヘッジをしないでください。
では、具体的にどんな方法で為替リスクはヘッジできるのでしょうか。
先物を使って為替変動のリスクヘッジをする
先物を使うことによって、未来の交換レートを確定することができます。
例えば、A社という輸出企業があるとします。ひと月後に代金100万ドルを受け取る契約をしています。現在の為替レートは1ドル=100円。今受け取れたら、A社の売上は、1億になりますよね。 でも、もしかしたら、ひと月後の為替レートは1ドル=90円かもしれません。 このようにレートが円高に振れたら、A社の利益は、1000万円吹っ飛びます。
では、A社はどうしたらいいのでしょうか。
「円高になりませんように・・・。」とお祈りするだけでしょうか?ここで「先物」を使ったらどうなるでしょうか。
先物を使うと、今日の時点でひと月後の為替レートを確定できます。
つまり、ひと月後に円を1ドル=100円で買いたいという契約が出来るわけです。
これで、A社は、ひと月後の為替レートが何であろうとも、1億円の収益を確保できます。
もし為替レートがひと月後、1ドル=110円になっていたらどうでしょう?
A社は為替変動から利益を上げれそうですよね。でも、この場合も交換レートは1ドル=100円です。
A社は為替変動で損をしない代わりに、得もしません。これが、為替リスクをヘッジするということなのです。
ちなみに、話を分かりやすくするために、直物と先物の為替レートを同じにしましたが、先物のドルは直物のドルよりも安いです。
直物が1ドル=100円だと、先物は1ドル=99円とか、そういうふうになってきます。
このように先物を使うことによって簡単にリスクヘッジを行うことができます。
金融市場を使って為替変動のリスクヘッジをする
金融市場、つまり、お金を借りることでリスクヘッジを行うことができます。 先ほど登場したA社に再び登場してもらいます。 A社は輸出代金100万ドルを受け取る予定があったんでしたよね。受け取る予定はひと月後。為替レートは分からない。
まず、A社は銀行から、100万ドルを借ります。そして、それを円に換金します。この換金は直物の為替レートで行われますね。つまり、1ドル=100円で一億の円貨を得ることができるわけです。
そして、ひと月後に輸出代金を受け取ったら、そのお金で銀行の借金を返します。借金も輸出代金もドルなので、為替レートを気にする必要はありません。
このように、銀行からお金を借りることで、為替リスクをヘッジすることができます。
お金を受け取ることを見越して、借金をするわけです。
ちなみに、お金を借りたら利息を払う必要があります。100万ドル分の利息分はひと月後の直物レートで支払うことになります。
通貨オプションを使って為替変動のリスクヘッジをする
通貨オプションとは、通貨を買う(売る)「権利」のことです。これは考え方に慣れるまで、ちょっとややこしいかもしれませんね。 さきほどのA社に再び登場していただきましょう。
A社はひと月後に100万ドルの輸出代金を受け取ることになっていましたね。そのとき、A社は、「1ドル=100円で円を買う権利」を購入することができます。これが、通貨オプションを買うということです。
ひと月後に為替レートが1ドル=90円になっていても、1ドル=100円で円を買うことが出来ます。
これが他のヘッジ方法と違うところは、この「権利」を放棄することが出来るということです。もし、ひと月後、1ドル=120円と大幅に円安に振れたとします。すると、A社は「この権利いらないよ。」といって放棄して、1億2千万受け取ることが可能なわけです。つまり、通貨オプションを使えば、「得を取る」可能性が出てくるわけですね。
ただし、この通貨オプション、ただではありません。
行使価格(希望レート)によって、お金を支払う必要があります。このお金をオプション料といいます。
有利な条件での行使価格にすればするほど、オプション料は値上がりします。
簡単に為替をヘッジする方法を見てみました。為替取引の現場では色々な方法で取引参加者は為替リスク回避を図っています。このように様々な取引参加者の思惑があるので、為替市場に厚みが生まれるのですね。
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