シンカー:グローバルな景気動向は堅調で輸出の増勢が続き、日本が比較優位を持つ資本財が堅調な伸びをみせるとともに、競争力の改善を反映してシェアも上昇するとみられる。政策も景気刺激的であることの安心感が、生産がしっかりとした増加を続けることができる中で、徐々に企業の先行きへの警戒感を和らげていき、生産の拡大も継続するだろう。これまではまだ海外の回復や政府の景気対策に支えれた景気回復であるが、今後は企業活動の拡大による設備投資、雇用、賃金の回復が中心となる自立的な形に進化していくだろう。生産の増勢は、IT関連財から裾野が広がってきているようで、在庫は抑制された水準となっていることもあり、生産のしっかりとした拡大は続くとみられる。
![SG証券・会田氏の分析](https://cdn.zuuonline.com/600/400/uploads/pixta_17153138_S.jpg)
6月の鉱工業生産指数は前月比+1.6%と堅調な結果となった。
ゴールデンウィークの日並びの良さによる工場停止などで落ち込んだ5月の同-3.6%からリバウンドした。
2016年後半からIT関連財を中心とする生産・在庫循環がグローバルで好転し、日本の生産・輸出も強く持ち直してきた。
4-6月期の実質輸出は前期比-0.5%と1-3月期の同+2.9%から鈍化し、IT関連財と中心とした輸出・生産の増勢には一服感が出てきているため、内需の力強い回復が生産の強い拡大に必要になってきていた。
2014年4月の消費税率引き上げの下押しをようやく乗り越え、雇用の増加と賃金の上昇を背景に、消費活動がしっかりしてきた。
4-6月期の耐久消費財の出荷は前期比+4.6%となり、1-3月期の同-2.8%からリバウンドし、4-6月期の非耐久消費財の出荷も前期比+3.3%(1-3月期同+1.8%)と強い。
人手不足を背景とした効率化と省力化を目指す設備投資だけではなく、4月の新年度入り後に日本の製造業が新製品の投入などで攻勢をかけようとしていることがうかがえるなど、企業活動が活発になってきた。
4-6月期の資本財(除く輸送機械)の出荷は前期比+4.8%となり、1-3月期の同-2.4%から強くリバウンドした。
そして、政府の景気対策の効果と2020年のオリンピックに向けた建設投資も強くなっている。
生産の増勢は、IT関連財から裾野が広がってきているようだ。
4-6月期の生産は前期比+1.9%と、1-3月期の同+0.2%から増勢が加速した。
経済産業省の判断は「生産は持ち直しの動き」となっている。
7月の日銀展望レポートでは先行きのリスク要因として、「米国の経済政策運営やそれが国際金融市場に及ぼす影響、新興国・資源国経済の動向、英国のEU離脱交渉の展開やその影響、金融セクターを含む欧州債務問題の展開、地政学的リスク」を挙げている。
4-6月期の日銀短観でも、足元の業況は良好であるが、企業も同様に先行きの警戒感をまだ持っていることが確認されている。
グローバルな景気動向は堅調で輸出の増勢が続き、日本が比較優位を持つ資本財が堅調な伸びをみせるとともに、競争力の改善を反映してシェアも上昇するとみられる。
政策も景気刺激的であることの安心感が、生産がしっかりとした増加を続けることができる中で、徐々に企業の先行きへの警戒感を和らげていき、生産の拡大も継続するだろう。
円安の動きも再開し、日本の製造業の攻勢は十分に報われる結果となるだろう。
これまではまだ海外の回復や政府の景気対策に支えれた景気回復であるが、今後は企業活動の拡大による設備投資、雇用、賃金の回復が中心となる自立的な形に進化していくだろう。
生産の経済産業省予測指数は7月に前月比+0.8%(誤差修正で同-0.3%)、8月に同+3.6%と堅調である。
7月(誤差修正)と8月の予測指数、9月を横ばいとすると、7-9月期の生産は前期比1.9%となり、在庫は抑制された水準となっていることもあり、生産のしっかりとした拡大は続くとみられる。
ソシエテ・ジェネラル証券株式会社 調査部
会田卓司
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