分裂の可能性が懸念されていた8月1日のフラッグ・デーは、新たなビットコイン「ビットコイン・キャッシュ(BCC)」の 誕生という形で終結を迎えた。

分裂騒動に一旦決着がついたことになるが、今後BCCの取扱いや価格に焦点が当たると予測されるほか、11月に予定されているビットコインの処理容量の拡大など、ビットコイン環境をめぐる騒動は当分続きそうだ。

中国のマイナーが先導して生みだした新ビットコイン

分裂回避対策として様々な手段が用いられたものの、一部のマイナーたちは新通貨の誕生を選んだ。

ビットコインの開発者グループが支持していたソフトフォーク(ブロックサイズは変更せず、情報量を圧縮する手法)では、分裂を回避できるという利点があった。しかしマイニングシェアの71%を占める中国のマイナー にとって(Buy Bitcoin Worldwide調査)、マイニングで受け取る手数料が減るという点が最大のネックとなっていた。

先導したのは中国の事業者ViaBTCで、以前から予告していた通りハードフォークによる強制分裂を成功させた。

BCC開発者「ユーザーからの信用を得ることが課題」

分裂による不測の事態に備えて取引を一時中止していた各取引所は、徐々に落ち着きを取り戻し始めている。当初懸念されていたほどの混乱は、市場で見られないようだ。

ビットコインの価格は8月1日5時に2900ドル(約32万円)台を突破した後、9時には2700ドル(約29万円)台に急落。小刻みな変動を見せながらも2日現在、同水準を保っている。2000ドル(約22万円)台を下回った7月中旬よりもはるかに高い水準だ(Coindesk調査 )。

BCCは分裂直後に300ドルと400ドル(約3万円と4万円)の壁を突破。一時的に落ちこむものの、現在は600ドル(約7万円)台に跳ね上がっている(Coin Market調査)。

CNBCの取材に応じたBCCのコア開発者アモリ・シークエット氏 は、現時点でのBCCへの支援に満足感を示すと同時に、「時間をかけてユーザーから信頼を得ることが課題だ」と述べた。

「分裂=スケーラビリティ問題の解決」ではない

気になるのは今後の展開だ。

いくら同じビットコインだからといって、生後間もないBCCが、時価総額441億ドル(約4.8兆円/コイン・マーケット・キャップ調査 )にまで成長を遂げたビットコインと、同じスタートラインに立っているとは思い難い。

早速BCCを売ってビットコインに交換したViaBTCの利用者からは、「ビットコインの引き出しが出来なくなっている」との苦情が相次いでいるようだ。

ビットコイン・マガジンはTwitterで、「ViaBTCがセキュリティー対策として承認回数を20回に設定しているため、引き出しに時間を要するのではないか」と説明している。

今回の一連の騒動を一言で表すと、「方向性・価値観の違いによる分裂」ということになるのだろう。分裂したのはいいが、BCCにとって本当の意味での生存戦はまだまだこれからだ。

最も重要なのは、「分裂=スケーラビリティ問題の解決」ではない点だ。11月に予定されているSegwitのアクティベートの行方など、引き続き最新の情報を追って行くつもりだ。(アレン・琴子、英国在住フリーランスライター)

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