猛暑により、季節性の高い商品の消費増
6月10日時点の気象庁による発表ではエルニーニョ現象による冷夏の恐れがありましたが、7月10日の発表では同現象が秋にずれこむ予測が発表されました。7月は台風が去った後、日本全体が高気圧に覆われたため全国187地点で35度を超える猛暑日になりました。8月も各地点で連日の猛暑日を記録しています。そのため、予想以上の猛暑が関連商品の消費を押し上げているようです。
百貨店では帽子や日傘といった夏物雑貨の販売が前年比で1~2割増となっています。セブン-イレブン・ジャパンでは7月に入って炭酸飲料の売上げが前年の同時期に比べて3割伸びました。また、猛暑やゲリラ豪雨などの影響でタクシー利用も例年になく増加しているようです。内閣府が発表した7月の景気ウォッチャー調査には、「猛暑のため例年になくタクシー業界の景気は良い。」や「今年も非常に暑く、昼間の客が増えている。」といったタクシー運転手の意見がありました。
予想外の株式相場の活況
エルニーニョ現象の秋へのずれ込みによる猛暑は株式相場にプラスに影響しているようです。一般的にエルニーニョ現象の発生した冷夏の年は株式市場も冷え込む傾向があります。同現象の発生した過去5回のうち、4回は日経平均が下半期に下落しました。特に、97年は下落率が約26%、02年は下落率が19%となっています。そのため、サマーストックと呼ばれるビールや夏物衣料の消費関連株の落ち込み懸念が高まっていましたが、今夏の株式市場は好調のようです。
ビールではアサヒ< 2502 >、キリンHD< 2503 >、サントリーHD< 2587 >の株価が6-7月は堅調に推移しました。飲料受託生産の国内最大手である伊藤忠商事< 8001 >は5-7月の3ヶ月間で株価が15%上昇しました。しまむらは夏物衣料の販売が好調3~8月期純利益7%増になり、株価も5-7月の3ヶ月間で5%上昇しています。日経平均株価は7月29日、約6ヵ月ぶりに1万5600円台を回復しました。ウクライナ情勢やパレスチナ情勢などの国際情勢に左右される日もありますが、国内企業の業績は堅調なため日本の株式市場は活況のようです。
今秋以降の経済への影響
6-7月は猛暑だったため、農作物の生育が順調でコメや野菜の価格が高騰するのは避けられる見込みです。エルニーニョ現象が秋、冬に発生すれば、暖冬になる傾向があります。暖冬になれば屋外活動がしやすくなりゴルフ関連施設やテーマパークなどへの外出の機会が増える一方で、季節性の高い商品(冬物衣料、暖房器具、冬用タイヤなど)の売上が落ち込みます。過去を振り返ってみると、暖冬は日本経済全体にマイナスに働いています。暖冬だった2007年は不景気でしたし、大寒波が来た2005年の冬は消費増でした。
結論として、エルニーニョ現象によって、メリット・デメリットがそれぞれあり、恩恵を受ける・受けない産業も異なります。しかし、冷夏や暖冬は季節性の高い商品の需要を押し下げるために日本全体で見れば景気に悪影響を及ぼす傾向があります。
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