地銀の収益が落ち込んでいる。
銀行員の誰もが肌で感じていたことであるが、新聞記事でそれを目にすると、様々な思いがこみ上げてくる。

折しも、その日は終戦記念日だった。不安、絶望、焦燥……72年前、戦時下の日本で戦況の悪化を肌で感じながら人々はどんな想いを抱いたのだろう。状況が悪化するほど自由闊達な議論は制限され、精神論が幅をきかせる。我々銀行員が直面している状況と重なる部分が多いように感じられるのだ。

やることなすこと「八方ふさがり」

上場地銀,減益
(写真=Thinkstock/GettyImages)

「これから先、どうやって食っていけばいいのか…」。お盆明けのある朝の職場で、新聞記事に目を通しながら同僚がため息をついた。『上場地銀、過半が減益』その新聞の見出しが示すように多くの地銀が収益の減少に直面している。だが、それは皆が日々の仕事で薄々感じていたことだ。どんなに頑張っても、もはや我々に勝ち目はないのかも知れない。新聞記事により、そんな思いが確認されただけのことだ。

日銀のマイナス金利政策の影響で、銀行の本業である融資での収益は伸び悩んでいる。それを補うための新たな収益の柱となるはずの保険や投資信託など金融商品の販売もアゲインストの風が吹いている。M&Aや企業再生支援などのコンサルティング業務に活路を見出そうとする銀行もあるが、それとて一朝一夕に収益を生むようなものではない。

それだけではない。アパートローンに活路を見出そうとすれば、やり過ぎだと当局から目を付けられる。消費者ローンだってメディアの批判を浴びている。「日本は銀行の数が多すぎる」それならばと、他行と一緒になれば、今度は公正取引委員会からにらまれる。そりゃ、ため息もつきたくなる。やることなすこと、すべて「八方ふさがり」というのが我々の置かれた状況なのだ。

「結局、何をやってもダメなんだ」

「我々の仕事って、特攻みたいなものだよな…」件の同僚が新聞をめくりながらそう言った。終戦記念日の記事が、我々の置かれた状況と重なっているように感じたのだろう。

そう、確かに似ている。我々の営業現場には確かに絶望的ともいえる悲壮感が漂っている。もちろん、命まで奪われることはないが……本部から指示される方針に従い、営業ノルマを達成することで、努力は評価され、報われる。そう信じてきたが、いまでは多くの銀行員が本部の方針に疑問を感じている。

どんなに頑張って金融商品を販売しても、金融庁に「顧客の利益になっていない」と切り捨てられてしまっては浮かばれない。アパートローンの獲得に身をすり減らしても、当局に「やり過ぎだ」と言われれば逆賊扱いだ。本部の方針に従ってどんなに必死に働いても、それが正当に評価されることはない。たとえ口に出さなくても、多くの銀行員が薄々感じている。「結局、何をやってもダメなんだ」と。

残された燃料は限られている

なぜ、ここまで追い込まれてしまったのだろう。収益を上げなければ生き残れないという危機感は必要だが、「どのような方法」で収益を上げるかという発想が貧困だったことに尽きるのではないか。従来の銀行の仕事の範疇でしか生き残る術を考えることができなかった。「銀行とはこうあるべきである」という固定概念があまりにも強すぎたのだ。

マイナス金利政策がこのまま続けば、どんなに融資を増やしたところで収益はあがらない。銀行同士が不毛な消耗戦を繰り広げるばかりだ。どんなに金融商品の販売を強化したところで、手数料引き下げの波に抗うことはできない。当然、今後はこの分野でも稼げなくなることを覚悟しておかなければならない。では、銀行はいったいどうやって収益を稼ぐのだろう? 残念ながら、経営陣も現場の銀行員も現段階でそれを見つけることができないでいる。

恐らく、「銀行はこうあるべきである」という固定概念を捨て、様々な可能性を模索しなければいけない局面を迎えているのだろう。銀行が人材派遣業を行う。銀行が不動産仲介業を行う。大まじめににそんなことを考える時期に来ているのではないだろうか。

「いつか神風が吹いて銀行の業績は回復する」。まさか経営者がそんな馬鹿げた妄想を抱いているとは思えないが、残された時間は限られている。

我々銀行員は片道燃料を積んでどこへ向かおうとしているのだろうか。燃料が尽きないうちに、経営者は新たなビジョンを示さなければならない。もはや我々にはそう多くの燃料は残っていないのだ。(或る銀行員)

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