「銀行にとっての脅威は、FinTechスタートアップではなくIT企業である」との見解を示すレポートを、世界経済フォーラム(WEF)が発表した。
FinTechスタートアップは金融・保険市場に革命を起こすことには成功したが、現時点では市場シェアを飛躍的に拡大するというレベルには至っていない。そんな中、AI(人工知能)やビッグデータ、クラウドなど最先端の技術を開発・提供するAmazon、Facebook、Googleが、三大脅威として挙げられている。
IT企業に協力を求める大手金融企業が続出
200ページにもおよぶレポートでは、最新技術を活用したサービスや商品開発という点で、銀行が完全にIT企業に遅れをとっている現状が指摘されている。
独自の高品質・高精度なAIサービスを提供する「Amazon AI」、AI子会社DeepMindを運営するGoogle、開発したAIロボットが独自の言語を話し始めたため、プログラムを強制終了したと報じられているFacebook(Gizmodoより )。3社ともにAIだけではなく、様々な最新技術の研究に余念がない。
これらの大手IT企業に技術提供を求める金融関連企業は後を絶たない。一例としてはナスダックやキャピタルワン、Aonといった大手が、「Amazon Web Service」を利用している。
大手に行く手を阻まれ苦戦するスタートアップ
それではFinTechスタートアップの位置づけはどうなるのか。WEFはFinTechスタートアップがメジャープレーヤーになりそこなった要因を2つ挙げている 。
一つ目は「消費者の移行の鈍化」。一時期は消費者が銀行からスタートアップになだれ込むと期待されていたが、現実はそう甘くはない。利用金融機関の乗り換えは、それだけでコストや手間のかかる作業だ。スタートアップの商品やサービスを利用する消費者は増えているが、国際規模で銀行を窮地に追いやるレベルにはほど遠い。
二つ目は代替となる資本市場など、「新たな金融エコシステムの構築に苦戦している」点である。WEFの見解では、馴染みのないエコシステムやインフラを新たに築くよりも、既存のものを改善して行く方が効率的かつ効果的ということになる。
レポートの共同著者、デロイトの金融サービス・カナダ部門の責任者、ロブ・ガラスキ氏は、「FinTechは金融サービスにおける革命の方向性を定義付けた」と評価する反面、消費者移行に伴うコストと大手ライバルの迅速な対応により、「拡大という点では苦戦を強いられている」と語った(CNBCより)。(アレン・琴子、英国在住フリーランスライター)
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