株式投資の王道は好業績株に対する投資でリターンを得ることではないだろうか。企業が成長して一株当たりの利益(EPS)が増えれば企業価値は向上する。企業価値の上昇が株価上昇の材料となる。一方で、「株は倒産しかけからの復活が一番おいしい」といった逆張りのスタンスが高パフォーマンスにつながることも多いから相場は面白い。直近の銘柄で検証してみよう。

逆張り投資の魅力

上場廃止,東芝,東電,シャープ
(写真=Alexander Tolstykh/Shutterstock.com)

倒産しそうな株への投資を「コントラリアン」といい、投資方法の一つだ。リスクもあるが、ハイ・リターンを上げられる機会がある。

シャープや東芝のような大企業の場合、雇用面や技術流出面で政府も「大きすぎてつぶせない」との判断から産業革新機構などを通じて支援するケースが多い。支援が入れば株価は回復する。「投資の神様」のバフェット氏も逆張り投資を好んで行う。リーマンショック後に、瀕死のゴールドマン・サックスやメリルリンチに投資して大きく利益をあげたのは有名な話だ。

経営危機が表面化した東芝株の株主として、「プライベート・エクイティ・ファンド」と呼ばれる未上場企業に投資するファンドの名前が上がっている。会社再生や仮にいったん上場廃止したとしても企業価値を高めて再上場することで、短期間で大きく儲けるチャンスがあると見ているからだ。

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東芝は約10ヶ月で約3倍

東芝 <6502> の経営問題が最初に表面化したのは15年5月だった。原子力関係の連結対象子会社である米ウェスチングハウスに関して、巨額の減損が必要であるとの理由から決算発表を延期したことが最初のきっかけとなった。

東芝の株価は、15年4月末の481円から、7期にさかのぼる業績の下方修正、16年3月期の赤字拡大などで一貫して下げ続け、16年2月12日に155円の安値を付けた。反発のきっかけとなったのは、16年3月期の赤字額が確定し始め、子会社の売却、人員削減など大規模リストラ案が出たことだ。株価は155円を底に同年12月16日には475円まで回復し、約10ヶ月で約3倍になった。

東芝は、17年3月期も引き続き大幅赤字となり債務超過の可能性があるとの報道で、16年12月から再び急落をはじめ17年2月17日に2番底の178円を付ける。ただ、16年安値155円を割ることはなかった。株価は178円から反発しはじめ、6月16日には344円と約4ヶ月で約2倍になった。

シャープは約8ヶ月で約5倍

シャープ <6753> の株価が100円を割り込み87円の安値を付けたのは16年8月5日だった。

液晶ディスプレイの大型投資とディスプレイ価格の急落を理由に、15年3月期、16年3月期と2期連続で2000億円を越す赤字を計上した。17年3月期第1四半期の赤字を発表したのが16年7月29日で8月5日には87円の安値を付けた。

台湾の鴻海精密工業がシャープに出資することが決まったのは16年8月11日。その後株価は急騰、17年4月には504円を付け、約8ヶ月で株価は約5倍になった。鴻海精密による構造改革の進展で、17年3月期の営業利益は黒字転換し、最終利益の赤字は縮小したことを好感した上げだった。

東京電力は約10ヶ月で約7倍

東日本大震災と原子力発電所の事故で東京電力 <9501> の株価は12年7月には120円の安値をつけた。東京電力の11年3月期の最終赤字は1兆2473億円となり、12年3月期も7816億円、13年3月期も6852億円の赤字を計上した。

ライフラインの会社でなければいつ倒産してもおかしくない状況だったが、株価は120円を底に反転、13年5月には841円を付ける。約10ヶ月で約7倍になった。大きすぎてつぶせない典型例だったといえるだろう。

ジャパンディスプレイは約4ヶ月で約3倍

ジャパンディスプレイ <6740> はもともとが産業革新機構の再生案件だった。

リーマンショック後に、日本の電機メーカーの液晶パネル事業が大きく落ち込み、アジア勢の台頭もあって窮地に陥ったときに、政府系の産業革新機構の主導によりソニー・東芝・日立のディスプレイ部門が統合して12年に誕生した会社だ。日本の技術流出を防ぐための事実上の国策企業である。

14年に株価は800円台で上場したものの、15年3月期から3期連続の大幅赤字を計上し、16年8月には138円まで下げた。やはりディスプレイの投資で損失を拡大したシャープの株価と同じような推移だった。

産業革新機構からは14年の上場時に2000億円の資金が投入されていたが、16年から17年にかけても750億円の投資追加がされたことで株価は持ち直し、16年12月には398円を付けた。約4ヶ月で約3倍だった。

タカタは約7ヶ月で約4倍 その後倒産

17年7月末に上場廃止となったタカタはどうだろう。タカタのエアバッグの事故による死亡者が出てリコールが出始めたのが15年。

その後株価は低迷し16年5月には310円の安値を付けた。ただ、タカタはエアバッグでシェアも高かったため代替出来る企業も少なく、生き残るとの見方が主流だったため、17年1月5日には1233円の戻り高値を付けた。約8ヶ月で約4倍だ。もっとも、その後タカタは倒産して株式市場からは退場することになってしまった。退場前にも7月7日に15円を付けた後になぜか急騰、7月14日には153円をつけ5日で10倍になったことは記憶に新しい。

当然ながら「見極め」が大事

倒産しそうな大企業の株価が大きく下げても戻ることが多いのは、機関投資家が大口の売りを出すからだと言われている。機関投資家の売りに併せて積まれたショートポジションに買い戻しが入る事も戻しを早める要因だろう。

大企業の大株主には年金や投信など大手の運用会社が大株主として名を連ねることが多い。運用会社によってルールが違うが、累損がある一定額を超えた場合、株価が100円を割った場合、なにか大きな事故を起こした場合など、運用者の責任としてその企業の株を強制的にポートフォリオから外す基準が決められている。基準に抵触したら、どんな株価であろうと持ち株は全部売る。その大口の売り終わった時点で一旦反発することが多くなる。そうした、陰の極を見極められれば効率的な投資チャンスが生まれてくるだろう。

ただ、JALやタカタの例のように大企業でも上場廃止になってしまうリスクもある。この投資はあくまで経験豊富な投資家向けだろう。投資の王道は、企業業績のいい成長銘柄を長期で持つことだ。(ZUU online 編集部)

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