前回8月の米雇用統計では、雇用者数が前月比15万6000人増と予想の18万人増を下回った。もっとも、8月に限ると7年連続で予想を下回っており、この背景についてウオール街の市場関係者からは季節調整の歪み等のアノマリーが指摘されている。

問題は、間もなく発表される9月の雇用統計である。8月からの反動増、あるいは8月分の上方修正を期待する声も一部で聞かれたが、ハリケーンの影響でトレンドが見えにくくなってしまった印象は否めない。

ちなみに3日現在の予想では雇用者数は8万人程度の増加に留まる見通しだ。8月までの3カ月平均は18万5000人増となっており、9月もほぼ同程度の増加が予想されても不思議ではなかったが、先に述べたハリケーンの影響で一時的にこれまでのトレンドからかい離した数字が出る可能性がある。

気になるフルタイム就業者の減少

8月の結果で懸念されたのは賃金の低い伸びだった。8月の時間当たり賃金の伸びは前年同月比2.5%上昇と4月以降は同じ数字が並んでいる。物価を押し上げるためには「3.0〜3.5%の伸び」が必要と考えられているのであるが、一向にこのレンジに近づく気配がない。

8月の家計調査でフルタイム就業者の減少が加速したことも気がかりだ。8月のフルタイム就業者数は前月比16万6000人減と7月の5万4000人減から減少幅を拡大させている。

ただし、フルタイム労働者が積極的にカットされているわけではなく、高い技術を持った労働者の不足が深刻化しており、高齢による退職者の補充が間に合わないことが減少につながっているようだ。

フルタイム就業者数は4月をピークに減少傾向にあるが、過去2回の景気の山がフルタイム就業者数のピークとほぼ一致していたことから「景気減速のシグナル」として警戒する向きもある。

その一方で、パートタイム就業者数が2カ月連続で増加しており、フルタイムの減少とパートタイムの増加が賃金の伸びを抑制している可能性もありそうだ。