来週から始まる企業決算を見据えて

他の経済指標に目を向けてみよう。7月のJOLTS(米求人労働移動調査)では求人件数が過去最高を更新し、採用率、離職率も前月から上昇しており、雇用情勢の底堅さが確認されている。また、9月のISM製造業景況指数では雇用指数が予想外に上昇したことも明るい材料だ。

一方で、8月のPCE(個人消費支出)は前月比0.1%増と7月の0.3%増から伸び率が鈍化。インフレ調整後では0.1%減と、今年1月以来のマイナスとなっており個人消費はさえない。コアPCE価格指数も前年同月比1.3%上昇と7月の1.4%上昇から低下しており「消費の弱さが物価の足を引っ張っている」との見方もある。

税制改革による法人税引き下げへの期待から株価は堅調に推移しているものの、景気の雲行きはパッとしない。年末商戦についてもNRF(全米小売業協会)が前年比3.6~4.0%増と前年の4.0%増を若干下回る見通しを示すなど慎重だ。

こうした中で、来週からは米7〜9月期の企業決算の発表が本格化する。発表に向けて雇用統計で弾みをつけたいところであるが、目下のところ不透明感は否めない。

もちろん、前述の通り米南部を襲ったハリケーンの影響で数字の善し悪しの判断が難しくなっている点は考慮すべきであろう。結果として、今回発表の雇用統計の数字はあまり材料視されず、来週からの決算発表を見定めようとするムードが広がることも考えられる。

マーケットの関心は「ポスト・イエレン」へ?

さらにもう一つ、気になるのが「ポスト・イエレン」を巡る動きである。周知の通り、FRB(米連邦準備理事会)のイエレン議長は来年2月に任期切れとなる。再任の可能性も残されているが、交代観測は強まっており、次期FRB議長はウォルシュ元理事と現職のパウエル理事の争いとなっている様子だ。

金融政策はウォルシュ氏なら「タカ派」、パウエル理事の昇格なら「ハト派」となる見通しで、10月中旬までには指名される予定である。議長交代により金融政策の方向性も大きく変わる可能性があることから、マーケットの関心が議長交代に向いていることは否めず、その点からも今回の雇用統計への反応は意外と鈍いかも知れない。(NY在住ジャーナリスト スーザン・グリーン)

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