離婚する夫婦に未成年の子どもがいる場合、養育費の問題が発生する。一般的に離婚の際、親権を持たない親が一方の親に、月々決まった金額を支払うといった約束をし、取り決めを交わす。

ただし養育費を毎月きちんと支払ってくれるケースは意外と少ない。そのような時には、どう対処したらいいのだろうか?

そもそも養育費とは何か?

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(写真=PIXTA)

筆者は先日Aさんという女性から養育費の相談を受けた。

Aさんは1年前に夫と離婚した。慰謝料はなく財産分与の話もうまくまとまった。また3歳の娘の親権はAさんが持つことで夫と同意した。養育費は月々3万円という金額で合意し、離婚協議書を作成した。

離婚してすぐは、元夫からは毎月養育費が振り込まれていたが、3カ月ほど前から滞るようになってきた。Aさんは夫に督促をしているがなかなか支払ってくれない。「何度督促しても、なしのつぶてです」と、今ではAさんはやや諦めモードに入っている。またAさんは「このまま支払ってくれないと時効になるのでは」と心配している。

Aさんの心配は当然だが、これは間違いである。確かに離婚の慰謝料は離婚後3年で時効、また財産分与は離婚後2年で時効になる。しかし養育費には時効がない。養育費は子どもが請求できる権利であり、親権を持った親は、あくまでも子どもの代理人として請求するのである。時効はなく、滞った養育費も後で支払ってもらうことができる。

養育費はどう決める? 金額や支払い方法には決まりがない

筆者は、まず以上の点を説明した上で、以下のようなアドバイスをした。

養育費の金額や支払い方法については、特に決まりがあるわけではない。基本的に離婚する夫婦で話し合い、月々いくらにするか、毎月の支払いか、2カ月に一度の支払いにするかなどを決めることになる。

また養育費の支払い期限は、基本的に成人になるまでだが、夫婦で合意すれば、大学を卒業まで、と決めても構わない。つまり、養育費については、夫婦間の事情を鑑みて、ある程度自由に決めることができる。

ただ、養育費はいくらでもいいと言っても、ある程度基準がないと、なかなか金額を決められない。そこで、裁判所が資料として作っている「養育費算出表」が参考になる。これは、今までの判例等を参考にして、義務者(支払いべき人)の年収と権利者(要求できる人)の年収を基に算出したものである。

この算出表を基にして、月々の支払金額や支払い方法、期限等を決めることになる。それらの事項が決まれば、「離婚協議書」を2通作成して、夫婦が署名・捺印し、それぞれが保管することになる。

滞った場合はどうすればいいのか?

それでは、Aさんのように、夫が支払いをしなくなったら、どうしたらいいのか?

まず、夫には養育費がないと子どもの生活に支障があることをきちんと伝えるべきである。多くの人が、養育費の支払いを夫婦間で行うため、夫(または妻)に支払い義務があり、妻(または夫)に請求する権利があると誤解している。しかし、あくまでも請求できる権利は子どもにあることは、先程説明したとおりである。

自分の子どもの生活のためであれば、支払いを続けていこうと思う人も多いはずだ。また、数箇月支払いが滞ったからといって、すぐに「支払いがなければ法的措置をとる」などの内容を記載した内容証明郵便を送るのは、考えものである。相手方が感情的になり、逆効果になる可能性もあるからだ。

ただ、全く払う意思が見えない状態が半年、1年と続いていった場合には、内容証明郵便を送っても構わない。内容証明郵便を受け取った後に、支払ってくれる場合も少なくないが、それでも支払ってくれない場合は、家庭裁判所に養育費の支払い請求をするための「調停」を申し立てる方法が有効である。

この調停は、調停員を介してお互いの考えを述べたり、お互いの意見を聞いたりする場である。基本的には、お互いの話し合いではあるが、専門家である調停員がうまく話をまとめてくれ、合意できる確率は高い。

この調停で養育費について合意できれば、調書が作られ、法的な拘束力を持つことになる。是非活用してほしい制度である。(井上通夫、行政書士)

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