中国最大の小売りイベント「双十一」が目前に迫ってきた。今年は例年以上に見どころ満載だ。ざっくりいうと、ポイントは3つある。

1.アリババVSJD(京東)の2トップのシェア争いが激化。
2.2トップを中心としたオンライン、オフライン融合の新業態開発が活発化。
3.ユニクロも同じように進化版O2Oへチャレンジ。

ユニクロ、ファーストリテイリング <9983> は双11において外国企業トップの売上を誇り、中国における知名度、注目度は日本国内に劣らず非常に高い。ネットニュースサイト「今日頭条」は、今年のユニクロはどのような“打法”で双十一に臨むのだろうか、という記事を載せている。上に挙げた1~3の順に考察し、中国小売業の近未来に迫ってみたい。(1元=17.14日本円)

1.双十一は、アリババVS京東の2強対立構図に

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北京のユニクロ(写真=humphery/Shutterstock.com、2016年撮影)

双十一とは、11月11日のことをを「独身の日」と呼ぶようになった世相を利用して、小売業最大のイベントとなったセールのことである。

●アリババの売り上げは7年で2400倍に

2009年11月11日、ネット通販最大手のアリババが「独身の日セール」として売出しを仕掛けたことに始まる。この第一回のとき、アリババの売り上げは、5000万元に過ぎなかった。それが倍々ゲーム以上で成長し、2016年には1200億元を超えた。わずか7年間で2400倍になったのある。瞬く間に中国最大のセールとなった。

もっともこの数字は、アリババ1社だけに限った数字である。もちろんネット通販他社も追随した。昨年のトータル売上高は1770億元にのぼり、シェアはアリババ68.2%、2位の京東22.7%、蘇寧2,2%、その他6.9%だった。

このネット通販シェアは、じっとしているわけではない。2017年の第二四半期には、アリババ51.3% 京東32.9%にまで接近した。ところが第三四半期には、アリババ59.0%、京東26.9%と再び差が開いている。激しいつばぜり合いが続いているのだ。今年の双十一は、シェアがじり貧となっているアリババがその流れをとめられるかどうか。ここ数年の総決算のような位置付けとなりそうである。

このアリババVS京東の争いでは、さまざまなニュースが飛び交った。その中から2つ紹介しよう。

●アリババ

40を超えるファッションブランドに対し、京東からの撤退を求めた。二者択一の踏み絵を迫ったのである。実際に多くのブランドがこれに応じている。こうした事態に対し、京東とネット通販3位の唯品会は、不当な競争制限であるとの共同声明を発している。

●京東

アリババ攻囲網の形成に成功した。騰訊(テンセント)今日頭条、百度、奇虎360、網易、捜狗のネット企業大手6社と協力し、オンライン、オフライン小売融合の最終解決を図ろう、というプロジェクトを立ち上げた。いずれもネット界のスターばかりである。中国において彼らのアプリを見ないで一日過ごすことは、ほとんど不可能だ。とくに騰訊は、株式時価総額でアリババに次ぐ中国第二位の大企業で、常に並び称される巨頭である。そして微信、QQなどの超強力なSNSを持っている。騰訊の持つデータは、京東にとって実に心強いサポートとなるだろう。騰訊のニュースページから「購買」をクリックすると、京東のページへと誘導される。

2.オンライン、オフラインの融合ショップ開発競争

アリババと京東は新業態の開発でも激しく競い合っている。

アリババは「盒馬鮮生」というO2O新型店を展開している。この店は3キロ以内なら、最速30分で生鮮、冷凍配送を行う。そして“生鮮スーパー+飲食+ネット通販+物流”の「複合型商業総合体」を標ぼうしている。上海浦東に立地する金橋店は順調に推移し、2016年の売上は2億5000万元に達した。今年9月以降、拡大ペースを速め、現在約20店舗である。

京東は「京東之家」「京東3C専売店」という体験型小売店を2016年11月からを展開を始めた。主に商品サンプルを体験してもらい、スマホで発注するスタイルである。3Cとは、Computer、Communication、Consumer ElectronicsのCを取ったもので、情報家電とIoT関連商品を指す。2017年中に両者で300店舗を目指している。

また京東は、株主でもあるウォルマート134店舗の、生鮮配送を「京東到家」という配送システムで行っており、自らもオフライン生鮮スーパー「7Fresh」を開業する。

いずれもオンライン、オフラインの小売融合を目指す試みだ。アリババの創業者・馬雲はこれを新小売り概念と言い、京東の創業者・劉強東はこれを「無界零售」境界のない小売と呼ぶ。今年はネット通販大手にとって、これらオフライン店舗の力を動員する初めての双十一となる。注目度の高いもう一つの理由である。

ある調査によると、全国で生鮮を扱うネット通販はすでに4000社にのぼるという。しかし利益を上げているのは、1%に過ぎない。4%が赤黒トントンで、88%が赤字、7%は巨額赤字であるという。今年の双11では、毛ガニなど高級食材にも力を入れており、こうした状況に活を入れられるかどうかも見ておきたいところだ。


3.ユニクロもオンライン、オフライン融合の進化版に

「そんな海のものとも山のものとも知れない新型店よりも、まずユニクロ中国の取組みを見ればよいではないか」--。今日頭条の記事は、そんな指摘とも言えるものである。詳しくみてみよう。

●大都市のショッピングセンターには無印などと並んで必ずあるユニクロ

まず中国におけるユニクロにおける存在感は、どのようなものだろうか。ユニクロは上海などあちこちのSCに入居しすぎたところでは、一部に不振店舗を抱えている。しかし地方大都市の有力SC内では、ZARA、H&M、無印良品などと並び、競争力が高いテナントで、SCにおける看板店舗となっているところが多い。日本国内同様の影響力を確立しているといってよい。それも日本でブレークしたときのように、低価格で認知されたわけではない。ブランド力で立っているのだ。

2016年の双十一、そのユニクロの売上は2分53秒で1億元を突破し、ネット通販用在庫は、10時間も経たないうちに底をついてしまった。そのときユニクロはネット上でこう声明を発した。「もしお客様がお望みなら、ユニクロ実店舗にある商品を、ネットセール特別価格にて販売いたします。」こうして、はからずもネット上から実店舗への流れが生じ、オンラインとオフラインが融合したのである。業界では、これこそオンラインオフライン融合の進化版である、と評加した。

そしてユニクロは今年の双十一を最初からこの進化版として迎えようとしている。

その前に消費者調査を見てみよう。ユニクロは、第三者機関とともに“2017年双十一消費者期待度大調査”を行っていた。これは全国で1万6750人の消費者の意識を調査したものだ。それによるとこの期間中、消費者は困難を抱えていること、高品質商品への期待が大きいことが示された。具体的に見ていこう。

・双十一では価格への期待を持っていると同時に品質の保証も求めている(88%)
・販売者に価格の透明性を求めている。それは誇張された割引率ではない(76%)
・セール期間を24時間だけでなく、延長を望んでいる。もっとゆっくり選びたい(72%)
・セールに踊らされることなく、真に必要な実需商品を購入したい(66%)。
・ネット上だけではなく、実体店舗でもセール同等の価格で、季節商品を購入したい(65%)

以上の結果は、双十一ネット通販セールに伴う弊害を如実に表している。それは次のような点に集約される。

それは「値引きによって、消費者は不必要なものまで買ってしまう」「販売者は値引きをしても利益を確保しなければならないため、品質への関心がおろそかになっている」「一部の販売者は、事前に値上げをし、双十一であたかも値下げしたかのように装い、消費者を欺いている」というものだ。

これらの分析に基づいて、ユニクロは進化版O2Oを構築し、今年の双十一に臨む。全国の500を超える店舗で、ネット発注から店舗受取りまで、24時間以内のサービスを完成させる。消費者は任意の店舗で受取りが可能である。省を跨いだまったく別の場所でもこのサービスを実現させ、出張や旅行など出先の衣料需要にも対応する。

また実店舗ならではサービスもレベルアップさせ、単体ネット通販との差別化を図る。無料の裾上げなどの改修、補修、寸法測定サービス、交換などである。こうして実店舗を活用することにより、物流も通常の店舗物流で収まる。双十一に特有の巨大な物流負荷もかからない。

果たして想定通りの展開となるのだろうか。そして今年の双十一はユニクロ中国に何をもたらすか、注目は大きい。

どうなる中国の新小売業 赤字を恐れず実行する中国

実店舗の在庫を使うという考え方は京東も表明している。提携先であるウォルマートの店舗在庫を利用するものだ。ユニクロと同じ考え方である。

つまり中国は、新しく作った実験店舗でも、既存のビッグネームでも、あらゆるチャンネルを通じて、オンラインオフライン融合の取組みを進めているのである。どこが生き残るか現段階では不明だが、今年の双十一はその試金石となりそうだ。

ひるがえって日本はどうだろうか。こちらでは既存の実店舗企業がオンラインに打って出る、というパターンが普通である。ネットスーパーや、最近では青山商事 <8219> が、生地を選べば体型データに基づいてスーツを製作し、配達するサービスを始めている。

しかし日本のネット通販大手は、新しい小売概念を示しているとは言いがたい。何となく閉塞感が広がっている。もちろん中国は一人当たりの所得では中進国に過ぎずない。そのまだ欲しいモノがたくさんある中国と、モノが行きわたっている日本とを同列に比較はできない。

しかし中国ではさまざまなアイデアが沸騰し、赤字を恐れずそれを実行に移している。この点は評価すべきであろう。いろいろな意味から、今年の双十一の動向は、しっかりと見極めたい。(高野悠介、中国貿易コンサルタント)

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