バイドゥ(百度)の李彦宏会長兼CEOは3月上旬、両会(全国人民代表大会、人民政治協商会議)期間中に「条件さえ整えば、国内の株式市場に戻りたい」と発言した。同じくIT大手、網易の丁磊CEOも「中国へ戻りA株市場に上場することは、当然考慮している」、検索エンジン「捜狗」の王小川総裁も「環境が整えば、A株市場に戻りたい」と述べている。こうした発言にはどのような意味が込められているのだろうか。科学技術ニュースサイト「中関村在線」が分析を伝えている。

海外上場するIT大手

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(画像=Webサイトより)

BATと称される中国のIT企業3巨頭、バイドゥ、アリババ、テンセントのうち、中国の国内A株市場に上場しているところはない。

2018年2月時点で、時価総額世界5位のテンセント・ホールディングスは、香港市場(2004年)同8位のアリババ・ホールディングスはニューヨーク市場(2014年) バイドゥは、ナスダック市場(2005年)である。また国内回帰発言をした網易は、ナスダック市場(2000年)捜狗は、ニューヨーク市場(2017年)である。国内IT大手は、どこも国内の株式市場に上場していないのである。

A株とは、上海または深センの証券取引所に上場された国内企業の株式を指し、人民元で取引される。上海証券取引所、深セン証券取引所とも1990年に設立され、四半世紀の歴史を経てきた。

IT大手がA株市場を避けたのは、資金調達の不安ではなく、単に上場の条件が厳格だったからである。そのため米国や香港へ逃げ出したのだ。

A株市場上場を避けたワケ

A株市場には第二市場として、ベンチャーを育てる「創業板市場」がある。しかしここへ上場するには、2年連続で1000万元以上の利益を計上していなければならない。このハードルは非常に高い(1元=16.73元)。

ネット通販2位の京東(JD)は、2014年にナスダック市場にした。稼ぎ以上に投資を行う会社で上場前の2年間、2012年は19億5000万元、2013年は5億8000万元の欠損だった。中国では上場いようにもできなかったのである。同社は2017年に至っても欠損を出している。A株市場なら退場処分を受けている。

さらに海外市場は株式流動性の基準も甘い。アリババのケースで見てみよう。2017年6月の段階で、創業者・馬雲の持ち株は1億7827万2449株で、約7%を持つ第三位株主だ。最大株主は日本のソフトバンク <9984> で、持株比率は29.3%、第二位株主は米国ヤフー15%である。この外国人株主比率の高さが、アリババのA株上場には障害となる。上場できないのだ。

条件は整う?

IT大手が両会期間中に、A株市場回帰の議論を持ち出したのは、決して偶然ではない。A株市場の改革を促し、中国経済成長の成果を分かち合おうと提案をしているのだ。

IT大手「奇虎360」はニューヨーク市場を退出し、A株市場に回帰した。時価総額は3000億元を超え、ニューヨーク時代の4倍となった。A株市場のトップ20入りを果たしたのである。さらに富士康(フォックスコン)が、上場の手続きに入っているのも明るいニュースである。

2017年末、A株市場の時価総額は、56兆6200万元に達した。前年比11.85%プラスとなり史上最高を記録した。これはBATなどIT大手を受け入れる体力がついてきたことを意味する。そのA株市場にとっても、時価総額トップ20には金融機関が多く、バランスは良くない。さらに海外上場組は“外資身分”とされ、今後さまざま制約を受けやすいことも指摘している。

IT大手とA株市場ならびに証券監督管理委員会とのせめぎ合いは、当面続きそうである。実際にBATの国内A株市場に回帰となれば、株式市場間の大きな地殻変動を伴う。中国の企業統治改革にも関わる部分であり、今後もこの動きは見逃すわけにはいかないだろう。(高野悠介、中国貿易コンサルタント)