世界第2位の金持ちと言われているビル・ゲイツ氏(マイクロソフト創業者)は、「銀行機能は必要だが、今ある銀行は必要なくなる」という趣旨の発言をしているそうだ。

数多くのFinTech企業が日々多様なサービスを生み出している現在、銀行を「新たなイノベーションによって淘汰される負け組」と切り捨てる論調も、そこかしこに見られるようになった。実際に、大学生の就職人気ランキングを見ても、銀行は軒並みランキングを落としている。こうした時代に生き残るために、銀行員に採るべき対策はあるのだろうか。

ビル・ゲイツ,銀行
(画像=Getty Images)

存在意義の薄れる銀行の実店舗

金融を意味するFinanceと技術を意味するTechnologyを融合させた造語であるFinTechの分野は、当初は金融サービスの中でも決済関連を中心に発達してきたと言われている。その代表格は、クレジット番号を取扱店に知らせることなく決済ができる「PayPal」だ。また、コミュニケーションアプリとして圧倒的な普及を遂げた「LINE」も、2014年からは「LINE Pay」を開始した。ネットショッピングの決済はもとより、LINEの「友だち」に送金したり、口座残高を銀行口座に出金したりすることも簡単にできる。

店頭の端末にスマホをかざすだけで決済が完了し、スマホでお金の管理が自動化できる家計簿アプリなどによって、今やスマホさえあれば、ほとんどの金融処理が完結してしまう。銀行の実店舗に出かけて行って窓口で待たされているような光景は、次第に見受けられなくなりつつある。

融資機能も銀行から離れつつある

銀行の担っている主要な役割のひとつに、融資機能がある。ところがこの分野にも、巨大企業となったアマゾンが進出を始めている。アマゾンの展開する「Amazonレンディング」は、同社のECサイトに出店している販売業者を対象にしたものだ。アマゾンは当然ながら出店業者の商品販売動向や支払い実績のデータを把握できるので、それを踏まえた柔軟な資金融通が可能になる。

もし出店業者が運転資金を必要としている場合には、支払期日を前倒しにすることによって業者の売掛金回収サイトを速めることができる。業者からすると、これは銀行から融資を受けるのと変わらない効果が得られるわけで、「わざわざ銀行に融資を頼むこともない」と考えたとしても無理はない。

参考になる中国の例

ここで参考にすべきなのが、中国の例だろう。中国ではこれまで偽札が横行していたこともあって、決済サービスにFinTechが行き渡っている。キャッシュレスの文化が隅々にまで浸透しており、むしろ現金で支払おうとすると驚かれてしまうほどだ。

代表格の「アリペイ」は、EC大手のアリババがオークションサイトの決済向けに立ち上げたものだが、アプリをインストールしたスマホで口座を開設し、紐付けた銀行の口座からお金を移動しておく。後はスマホをかざすだけで日常的な買い物や交通費の支払い、ガスや電気などの料金支払いなど、広範囲の決済が可能になる。アリペイと同じく広く利用されているWeChat Payとのどちらかを持っていない限り、中国で暮らすのは無理だと言っても過言ではない。

FinTech時代を生き抜くには

これからの銀行にとって、競争相手は同業種からFinTechを提供する異業種へと限りなく広がっている。けれどもいかにアリペイにせよ、銀行口座とは紐づけされている関係にある。無論ユーザーはアリペイというインターフェースは頻繁に利用しているのだが、それがどこの銀行口座に紐付けされているのかについて、ほとんど意識していないのが普通だろう。

もしユーザーが「この銀行は紐付けしやすい」と感じれば、その銀行はユーザーの経済活動を下支えする口座を提供することになるはずだ。銀行が生き残るためには、FinTech時代に求められる銀行の機能について、もう一度考え直してみる必要がありそうだ。

銀行員個人のキャリア形成の面から考えると、FinTechへの造詣が深ければ、銀行内でのプレゼンスは格段に上がるはずだ。一度銀行を離れて、FinTech業界に転職するのは色々と難しい面もあるだろう。しかし、銀行員として働きながらも、どのようなFinTechサービスが注目を集めているのか情報収集することは可能だ。場合によっては、FinTech業界の人とコネクションを持っておくことも重要になるかもしれない。(ZUU online 編集部)