マイナンバー制度は2016年に導入されたが、マイナンバーカードの普及率は2019年3月現在で12.8%にとどまっている。一方、税務調査の効率化などを目的とした銀行口座との任意の紐付け制度が2018年1月に始まり、再び注目を集めている。
2016年1月に導入されたマイナンバー制度
マイナンバーとは、日本国内に住民票がある個人に割り当てられる12桁の数字で、2016年1月に導入が始まった。通称で「マイナンバー」「マイナンバーカード」と呼ばれるが、正確には「個人番号」「個人番号カード」という。
マイナンバーと言われれば一般的に個人番号のことを指し、「法人版マイナンバー」「企業版マイナンバー」とも呼ばれる法人番号は別物だ。法人番号は法人登記を行った企業や団体に割り当てられている。
マイナンバー制度では、本人が合意すれば銀行などの金融機関口座とマイナンバーを連結する仕組みが2018年1月に導入された。現時点では銀行口座とマイナンバーの紐付けは義務化されていない。
【参考】 総務省 マイナンバー制度とマイナンバーカード http://www.soumu.go.jp/kojinbango_card/
マイナンバーカード総合サイト https://www.kojinbango-card.go.jp/
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行政手続きの効率化による国民の利便性向上などが目的
マイナンバーは税金や年金の支払いのほか、雇用保険などの行政手続きの際などに利用される。国がマイナンバーを導入した目的として、これらの行政手続きにおいて添付が必要な書類を削減することにより国民の利便性を高めることや行政事務の効率化などが挙げられている。
マイナンバーは基本的に、日本国内に住民票をもつ人に割り振られる。そのため、仕事や結婚などの理由で日本国外に滞在しており、日本国内に住民票がない人には番号は割り振られない。その人が海外から帰国して日本で住民票を取ったったときにマイナンバーが割り振られる仕組みだ。
一方で日本国籍以外の外国籍の外国人でも、中長期在留者や特別永住者、仮滞在許可者などで日本国内に住民票がある人にはマイナンバーが割り振られる。このような外国籍の人にもマイナンバーが付番されるため、マイナンバーに関する情報について日本政府は複数言語で制度の情報などを発信している。
マイナンバーを利用する具体的なケースは?
マイナンバーが利用できる手続きについては法律で定められている。利用シーン別に実例を挙げると、学生の場合は奨学金を申請するときや勤労学生の所得控除手続きなどに利用される。主婦や保護者のケースでは、パート先やアルバイト先での手続きのほか、児童手当や出産育児一時金の申請手続きなどに利用される。
民間企業に勤めているサラリーマンなども利用機会は多い。例えば、税務関係書類の提出時や、健康保険や雇用保険などの手続き時など、何かと利用シーンがある。高齢者や障害者の場合でも、年金給付や介護サービスを受ける手続きなどで必要になるほか、災害時に支援サービスを受ける際にも番号の提示を求められることがある。
マイナンバーの記入を伴う手続きにおいては、原則的に運転免許証などマイナンバー以外の身元確認書類の確認も併せて行われる。マイナンバーの記入だけでは「なりすまし」などのリスクがあるため、二重の本人確認でリスクを減らすシステムを採用しているというわけだ。
マイナンバーカード通知書が送られてきたら…
マイナンバーカードの申請・交付については、海外から帰国者などを含めると、若干流れが異なる。
基本的に、マイナンバーの通知カードと一緒に送られてくる「個人番号カード交付申請書」に必要事項の記入などのあとに郵送で申請するか、インターネットを通じてオンラインで申請する。そのあと自宅に届いた交付通知書を持って市区町村の窓口に出向き、マイナンバーカードを受け取る形となる。
マイナンバー通知カードは住民票に登録されている住所に届く。通知カードには数字12桁のマイナンバーのほか、氏名と住所、生年月日、性別、発行日が記載されている。海外から帰国者や新生児のマイナンバー通知書は、それぞれ住民票が登録されてから3週間ほどで登録住所に届く。
個人番号カード交付申請書もマイナンバー通知カードとともに郵送されてくる。交付申請書には表面と裏面があり、申請日や申請者の氏名などの記載欄のほか、顔写真(縦4.5センチ×横3.5センチ)を貼る欄もある。顔写真が剥がれたときのために、顔写真の裏面には氏名と生年月日を記入する。
この交付申請書は郵送で申請を行う場合に使う。交付申請書の記入を終えたら、交付申請書とともに送られてきた送付用封筒を使って郵送する。
インターネット申請は顔写真代節約などのメリットも
インターネットを活用した申請の場合は、郵送による申請のケースとは手続きの流れが異なる。
自身で所有しているパソコンやスマートフォンなどを使って、申請用のウェブサイト「マイナンバー総合サイト マイナンバーカード交付申請」にアクセスする。交付申請書に記載された申請書ID(半角数字23桁)を使って本人のメール連絡用氏名とメールアドレスを登録し、デジタルカメラやスマートフォンカメラで撮影した顔写真ファイルを登録する。
最後に申請者の生年月日(必須項目)などの個人情報を入力して申請が完了する流れとなる。申請が完了すると、最初に登録した本人のメールアドレスに申請完了を知らせるメールが届く。
ちなみにインターネットによる申請方法は証明写真の作成費用がかからないため、節約的な観点からも利用する人が多い。顔写真画像は半年以内に撮影したものであることが条件で、無背景で帽子を被らずに正面から撮影した写真でなければならない。
顔の輪郭が切れておらず、顔が写真の中央にある写真であれば特に問題がない。一方、画像加工アプリなどで顔の見栄えを良くした場合など、申請を受け付けてもらえないことがあるので注意が必要だ。
通知カードを紛失した場合は再発行できる?
通知カードの発行主は市区町村長で、地方公共団体情報システム機構(J-LIS)が市区町村長から委任を受けて発行している。また通知カードには有効期限は特に設けられていない。
まれに通知カード記載の個人情報に誤りがあるケースがある。その場合は申請者が現在居住している自治体の窓口に出向くか電話連絡するなどして、正しい情報が記載された通知カード等を発行してもらう。
通知カードを紛失した場合は再交付を受けることが可能だが、その際には交付手数料が必要になる。
マイナンバーカードの受け取り方は?
マイナンバー交付申請を郵送かオンラインで終え、しばらくすると交付通知書(はがき)が自宅に届く。通知には交付場所が記載されているので、交付通知書と通知カード、運転免許証やパスポートなどの本人確認書類などを持っていけば、マイナンバーカードが受け取れる。
病気などやむを得ない理由で本人が交付場所に行けない場合は、代理人が必要書類を用意すれば申請者本人に代わってマイナンバーカードを受け取ることができる。
マイナンバーを受け取る際には4種類(うち3種類は同一番号も可)の暗証番号を設定する。1つ目は署名用電子証明書用の暗証番号で英数字6〜16文字で設定する。ほかに利用者証明用電子証明書、住民基本台帳用および券面事項入力補助用の暗証番号が必要で、それぞれ数字4桁(数字4文字については同じ番号の設定可)を設定する。
受け取ったマイナンバーカードには有効期限がある。有効期限はマイナンバーカードの表面に記載されており、申請者が20歳未満の場合はマイナンバーカード発行から5回目の誕生日、20歳以上の場合はカード発行から10回目の誕生日が有効期限となる。有効期限を越えた場合は住民票を登録している自治体で更新の手続きが必要になる。
銀行口座とマイナンバーを紐付ける任意制度がスタート
前半部分でも触れたが、マイナンバーと銀行や郵便局の口座を紐付ける制度が2018年1月1日から始まっている。この制度は「預貯金口座付番制度」と呼ばれ、預貯金口座開設や、口座に登録されている住所変更などに、預貯金者が個人番号(マイナンバー)を金融機関側に届け出る形で運用される。
一方、現在のところマイナンバーの届け出は任意となっており、届け出ないことによる支障はない。制度スタートに伴い、銀行などの金融機関は届け出に関する情報を掲載した専用ページを開設するなど、口座利用者などに対する周知を進めている。
この制度の目的の一つに、税務調査などの効率化や適正化がある。国が発行するマイナンバーと口座の情報を紐付けることで個人の所得や資産が把握しやすくなり、課税や徴収などを円滑で適正に行いたいというわけだ。一方で預金者側にはメリットがあまりないという声もあり、どれだけ導入が広がるかは不透明だ。
この預貯金口座付番制度は導入から3年以内、すなわち2021年までに普及状況を加味して制度の修正などが検討されることになっている。修正内容によっては、現在は任意のマイナンバーの届け出が将来的には義務化される可能性もある。一方、個人資産に対するプライバシー保護の観点から義務化に不安感を示す人も多い。
マイナンバー制度をめぐる詐欺メールに注意を
マイナンバーをめぐっては、マイナンバー制度が導入された2016年前後から不正に個人情報を入手しようとする詐欺メールなどの事件も起きている。
総務省はマイナンバー制度に便乗した不審な電話やメール、郵送はがき、戸別訪問などに対する注意喚起を国民に行っている。例えば、「口座番号の確認が必要」などと不正に情報を盗みとられたり、最終的に商品販売の勧誘をされたりするケースが起きており、十分に注意する必要がある。
総務省はマイナンバー制度全般に関する相談窓口として、マイナンバー総合フリーダイヤル(電話0120-95-0178)を設けている。(岡本一道、金融・経済ジャーナリスト)
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