2018年7月、IR実施法が可決され、日本版IRの具体像が見えてきた。しかし、ギャンブラーが金を落とす魅力や、外国人観光客を誘致する方法等、その具体像は不透明だ。
アジアのその他のカジノとの比較から、日本版IRの立ち位置について考える。
IR実施法が可決
2018年7月IR実施法が可決された。IR実施法では、今後開業される予定のカジノにおいて、6000円の入場料を取ることが決まった。。さらに、ギャンブル依存症になるのを防ぐために入場回数制限を週3回としたが、このような規制は、世界のギャンブル産業の常識からすると大きな隔たりがある。
アジアでは、世界最大規模のマカオカジノがある。そのほか、シンガポールや韓国、フィリピン、マレーシア、カンボジア、ベトナムなど各国にゲーム場が開設されているが、日本のカジノ政策は外国と比較してどのような違いがあるのだろうか。
日本のカジノ法案には「カネの匂い」がしてこない
アジアのカジノ中では、シンガポールでは入場料を取るようだが、マカオをはじめ、多くのゲーム場が入場料を取らないシステムだ。レストラン、ホテル、ショッピング、風俗などを含めた総合的な集客力において、質の面で、日本がよほど勝っていない限り、海外からわざわざ客を集めることは難しいだろう。
一方、国内では、競馬、競艇、競輪、パチンコといったギャンブルが競合する。また、ビットコインなど金融取引の中には、投機性の強いものがあり、こうした投資家(投機家)は潜在的なカジノの顧客になるだろう。しかし、そうしたパチンコや金融取引に入場料に相当するモノは存在しない。
マカオカジノの収益構造を見ると、一回に最低でも1000香港ドル(約1万4000円相当)をベットしなければならないVIPテーブルがどこも経営の屋台骨となっている。主要顧客は本土の中国人富裕層である。一回の訪問で数億円相当を平気で負けてくれる顧客をどれだけ多く獲得できるかが、業績を決定付ける指標となっている。
日本では、ギャンブル依存症になるのを防ぐために入場回数制限を置いたがが、世界のギャンブル産業の常識からすると大きな隔たりがある。カジノを含む統合型リゾート(IR)実施法には、ビジネスサイドから見ると“カネの匂い”がしてこない。