ある銀行が成功報酬型のラップ商品を発売した。成功報酬は運用が成功した場合に発生するが、成功報酬型ラップ商品には成功報酬だけではなく、実際には多くの投資家が意識していないコスト(信託報酬)がかかる。より深く成功報酬型ラップを知るためのポイントを解説する。

ファンドラップとは何か

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(画像=PIXTA)

フルーツの詰め合わせを定期的に買う、と考えるとファンドラップをイメージしやすいだろう。メロン、りんご、みかん、洋ナシ、マンゴー、キウイといったフルーツの中から、季節に適した数種類をバスケットに入れて、透明なビニールラップに包まれて届けられる。詰め合わせの内容は、フルーツ店にお任せしている。店側が旬な商品をセレクトするわけだ。

ファンド:Fund=投資信託、ラップ:wrap=包む、くるむという意味で、フルーツの代わりに投信を、金融機関の運用者がセレクトしてくれる、というわけだ。投資信託の組み合わせを「お任せ」して運用してもらうのがファンドラップということだ。

キーワード:ラップ、投資一任とは?

ラップは投資一任の形を指すことがほとんどだろう。投資判断や投資に必要な権限を任せる形、資金を預けて「運用をお任せ」する形が投資一任だ。ファンドラップの場合は、投資対象がファンド(投資信託)で、その組み合わせを金融機関の運用者が決める形で、その対価として投資顧問報酬(この場合はラップコスト)を投資家が支払う。

キーワード:投資顧問報酬、系列と独立系、販売者との違いは?

ファンドラップは投資顧問報酬を受け取る。投資顧問報酬とは、正規のライセンス(登録)を持つ投資助言業(アドバイス)が行うサ―ビスの対価である。投資に対して顧問としてアドバイスをするコーチ料といったイメージだ。ただしFPやコンサルタントで投資助言業登録をしていない業者は、投資顧問報酬を受取れない。銘柄のアドバイスなどを行うと金融商品取引法違反となる。

なお、投資顧問は系列でない「独立系」であるほうが投資家想いであろう。アドバイスを受けても自社の系列の商品ばかり勧められる場合、他の良い商品選択ができないからである。結果として投資家のリターンに悪影響が考えられる。

投資顧問は「販売者とは異なる」仕組みである。証券会社などで金融商品販売や仲介業を行う者は「販売者」であり、売買の手数料や、販売の手数料(コミッション)を受取る。販売者は高い手数料が期待できるものや、頻繁な売買手数料がインセンティブにつながる。しかし投資家の運用の成功に、高いコストや頻繁な売買コストが悪影響であることは明らかである。投資助言業者はこれらのコミッションを受取らない。

成功報酬型の場合、投資顧問報酬はどう計算?

成功報酬型の投資顧問報酬(この場合はラップコスト)は、当初の水準よりも上回った場合、その超過分に対して一定の比率をかけるものだ。一例を挙げると成功報酬率32.4%、100で運用開始し、5.000%で運用でき105になった場合を考えてみる。(仮定で成果を保証するものではない)
100 運用 → 105  5.000%運用
超過運用分(105-100)=5 
5 × 成功報酬率 32.4%  → 1.620%相当
投資家受け取り 5.00% ― 1.62% =3.380% (税引き前)
このケースでは、成功報酬は1.620%であったといえる。

仮に基準の 100を上回らなかった場合、投資家はラップコストを支払う必要はない。しかし、実質的なコストは「ラップコスト」だけではないのが、ファンドラップで注意が必要な点である。

ファンドラップのコスト 「ラップコスト」+「信託報酬」

投資対象が株式だけのラップであれば、コストはラップコストのみである。株式を保有し続けても、「保有コスト」はかからない(口座維持手数料など無料の前提)。 しかし、ファンドラップの場合の投資対象は「ファンド」である。ファンドは保有している場合に必要な「信託報酬」というコストが実際にはかかっている。投資家が預けた財産から自動的に差し引かれているので、「気付きにくい」だけだ。

信託報酬が、仮に0.432%かかる場合には、この信託報酬コストを考慮した部分がリターンとなる。実質的には前例の 100 → 105 5%運用はその前に信託報酬0.432%が差し引かれているわけだ。 前提の実際は 「100で運用開始し、5.432%で運用でき、信託報酬差し引き後で105になった場合」となる。前提に一文追加する必要がある。
  100運用 → 105.432 (5.432%運用)
運用5.432%で投資家受け取り 3.380%となり、その差額はコストだ。実質コストは、ラップコスト1.620% + 信託報酬0.432% =2.052%となる。

この事例は、信託報酬が1%を下回っている場合としたが、信託報酬が仮に1.50%程度ある場合は、運用が成功しなくても、投資家は1.50%の報酬を払うことになる。ファンドラップの場合は「運用が成功しなければ、費用は無し」とはならない。「運用が成功しなければ、ラップ手数料は無料」ということなのだ。

安東隆司(あんどう・りゅうじ)
RIA JAPANおカネ学株式会社代表取締役。元プライベート・バンカー、CFP®、海外ETF専門家、立教SS大学講師、TVコメンテーター。日米欧の銀行・証券・信託銀行に26年勤務後2015年独立。顧客の投資成功には高い手数料は弊害、証券関連手数料を受取らない内閣総理大臣登録「投資助言業」経営。著書。『個人型確定拠出年金iDeCo プロの運用教えてあげる!』等。