変動金利で住宅ローンを借りている人は、今後の金利動向が気になるところだ。金利は経済成長や、政府の財政状況によって左右され、今後は金利が上昇する可能性も排除できない。金利の上昇要因を理解し、リスクに備える準備をしておきたい。
政府試算の経済成長推移は楽観的?
政府は「経済財政運営と改革の基本方針2018」を6月15日に閣議決定した。ここで注目されたのは、基礎的財政収支(プライマリーバランス、以下、PB)が黒字化を達成する時期である。結果的に、元々2020年度に達成予定だったPBの黒字化が2025年に先送りされることになった。
上記方針を策定するにあたり、前提となったのが「中長期の経済財政に関する試算」である。同試算では、「成長実現ケース」と「ベースラインケース」の2つのケースにおいて、2027年度までの実質GDP、名目GDP、GDP成長率、名目長期金利、物価上昇率などの経済指標についての試算結果を公表している。
住宅ローン
同試算におけるポイントの一つは、「成長実現ケース」における名目GDPと名目GDP成長率の試算結果がこれまでの実績と比較して高い水準となっている点だ。これまでの名目GDPの実績は500兆円弱から550兆円の間で推移することが多かったが、この先の試算では名目GDPは毎年3%前後の成長を続け、2027年度には名目GDPは743.9兆円になるとされている。
また、、同ケースにおける名目長期金利は2020年度まで0%としているが、その後は上昇に転じて2027年度には3.5%になると試算されていることである。つまり住宅ローンを借りている人は2020年ど以降は金利が上昇する見通しとなっていることに注意が必要だ。
住宅ローンの変動金利が基準とする指標は短期プライムレートであり、名目長期金利の水準とは一致しないが、短期プライムレートが低水準のまま推移するとは考えにくい。長期金利が上昇するということは、経済成長や物価成長に対する期待が強まっていると考えられるので、政策金利も現状の水準よりも高い水準になるだろう。 そうなると政策金利に連動性のある短期プライムレートも上昇すると考えるのが妥当である。住宅ローンを変動金利で借り入れている場合、政府の見通し通りとなれば住宅ローンの返済額が増加することなる。
しかし、これらの数字を見て筆者が疑問に思うのは、長い間500兆円台で推移していた日本経済が本当に3%台の経済成長を続けることができるのかということである。楽観的すぎではないだろうか。