住宅ローンを変動金利で借りる人が増えているようだ。日本経済新聞は7月4日、変動金利が上昇すれば返済額が増加し、返済が難しくなる可能性があると警鐘を鳴らした。政府が公表した「中長期の経済財政に関する試算」などを確認し、住宅ローンを変動金利で組む上での金利上昇リスクについてみていこう。

政府試算の経済成長推移は楽観的?

政府は「経済財政運営と改革の基本方針2018」を6月15日に閣議決定した。ここで注目されたのは、基礎的財政収支(プライマリーバランス、以下、PB)が黒字化を達成する時期である。結果的に、元々2020年度に達成予定だったPBの黒字化が2025年に先送りされることになった。

上記方針を策定するにあたり、前提となったのが「中長期の経済財政に関する試算」である。同試算では、「成長実現ケース」と「ベースラインケース」の2つのケースにおいて、2027年度までの実質GDP、名目GDP、GDP成長率、名目長期金利、物価上昇率などの経済指標についての試算結果を公表している。

住宅ローン
(画像=「中長期の経済財政に関する試算」の成長実現ケースにおける試算値/筆者作成)

同試算におけるポイントの一つは、「成長実現ケース」における名目GDPと名目GDP成長率の試算結果がこれまでの実績と比較して高い水準となっている点である。これまでの名目GDPの実績は500兆円弱から550兆円の間で推移することが多かったが、この先の試算では名目GDPは毎年3%前後の成長を続け、2027年度には名目GDPは743.9兆円になるとされている。

また、もう一つのポイントは、同ケースにおける名目長期金利は2020年度まで0%としているが、その後は上昇に転じて2027年度には3.5%になると試算されていることである。住宅ローンを借りている人は金利が上昇する見通しとなっていることに注意が必要だ。

住宅ローンの変動金利が基準とする指標は短期プライムレートであり、名目長期金利の水準とは一致しないが、短期プライムレートが低水準のまま推移するとは考えにくい。長期金利が上昇するということは、経済成長や物価成長に対する期待が強まっていると考えられるので、政策金利も現状の水準よりも高い水準にあろう。そうなると政策金利に連動性のある短期プライムレートも上昇していると考えるのが妥当である。住宅ローンを変動金利で借り入れている場合、政府の見通し通りとなれば住宅ローンの返済額が増加することなる。

しかし、これらの数字を見て筆者が疑問に思うのは、長い間500兆円台で推移していた日本経済が本当に3%台の経済成長を続けることができるのかということである。楽観的すぎではないだろうか。

楽観的な経済見通しが実現しないと金利は予想よりも上昇する可能性も

財務省によると債務残高(対GDP比)は2009年より200%を超えている。多額の債務を抱える日本の財政状態は各国と比較しても悪い。少子高齢化が進む日本を想定すると、社会保障費が増加し債務の増加要因となる。また、労働力人口(生産年齢人口)の減少は、経済成長を抑制する要因である。単純に考えると、債務残高は増加して、GDPが減少するという予想をしてしまう。

政府の試算通り、政府各種の施策のもとで経済成長を続ければ税収も増えて財政状態が改善する可能性も考えられる。しかしながら、政府の見通しが実現しなかった場合を考えると、日本の財政リスクの高まりから金利が急上昇するというリスクがあることを想定しておいた方がよいと考えられる。

見通し通りに経済成長しなかった場合について考えてみると、経済成長に伴う税収を得られないことから債務の増加要因となる。経済成長できなければ、債務残高(対GDP比)は上昇することになる。その結果、日本の財政に対する信認が揺らぐことになれば、国債価格が急落して金利が急騰することになる。

返済余力にもよるが、変動金利にて住宅ローンを借り入れている方は、一度借入期間にわたり金利が少なくとも3%程度に上昇したときに返済が可能かどうかをシミュレーションした方がよいと考えられる。そして、必要に応じて住宅ローンの返済方法の変更について検討してはどうだろうか。

選択肢としては、すべて、あるいは一部の住宅ローンを固定金利の借入に変更するなどの見直しである。変動金利の方が今は金利が低いが、将来的に大きな負担になる可能性がある。

金利が急騰した場合、住宅ローンの返済が困難になるリスクから住宅を投げ売る状態にもなり、住宅価格下落などによる住宅市場の混乱が更なる景気悪化をもたらす可能性があることも注意が必要だろう。

安住 保
国内外証券にて証券アナリストを務め、一兆円規模の新規上場も担当した。現在はブログ・YouTube「元証券アナリストのデイトレ日記」を運営。マクロ的な視点での分析をベースに国内外の金融市場動向についての情報の提供をおこなっている。