住宅ローンの固定金利には「短期固定金利」と「長期固定金利」があります。さらに、長期固定金利の中でも、全期間の金利を固定するタイプを「全期間固定金利」と呼びます。「全期間固定金利」の代表的な商品がフラット35ですが、最近では、大手銀行も全期間固定金利に力を入れています。

(本記事は、平井美穂氏の著書『 住宅ローン 借り方・返し方 得なのはどっち? 』河出書房新社(2017年1月15日)の中から一部を抜粋・編集しています)

「フラット35」と「銀行の35年固定金利」のメリット・デメリット

住宅ローン,金融機関
(写真=PIXTA)

マイナス金利の導入以降、人気となっている「全期間固定金利」。だからといってフラット35で安易に借りてしまうと、損する場合があるので注意が必要です。

通常、住宅ローンを借りるときには「団体信用生命保険(団信)」に加入します。死亡や高度障害で所定の状態になった場合に、団信で残りのローンが弁済される仕組みです。しかし、フラット35は一般的な銀行と比べると融資基準がゆるく、団信に加入できない人にも融資をしています。そもそも、団信の加入が任意であるため、保険料の支払い方法も一般的な銀行の住宅ローンと異なります。

銀行で借りる住宅ローンでは、団信の保険料は金利に含まれているので、月々の返済以外に支払う必要がありません。一方、フラット35で団信に加入する人は、毎年1年分の保険料を別途支払う必要があります。たとえば、借入額3000万円を2017年1月の金利である1.12%(自己資金1割以上の場合)で借りた場合、35年間に支払う保険料は204万円にもなるのです。

2017年1月時点の都市銀行の35年固定金利は、三菱東京UFJ銀行が1.32%、みずほ銀行が1.15%。借入額3000万円を、フラット35の1.12%で借りる場合と比較した35年間の総返済額の差は、三菱東京UFJ銀行が+120万円、みずほ銀行が+18万円となります(元利均等返済)。その他の費用の比較では、フラット35は事務手数料が高く、都市銀行は保証料が高いといった特徴がありますが、このあたりの費用はほぼ同額となるケースが多くなっています。

月々の返済額、総支払額など全てに勝る「20年固定」

20年固定という選択肢もあることを、ぜひ知っておいてほしいと思います。とくに借入時の年齢が40歳を超えている人ならば、有効な手段になりえます。

常づね「住宅ローンの攻略法は、年金暮らしが始まる前に、いかに完済のメドをつけるか」といい続けています。子どもが生まれるたびに買い替えをし、三度の住宅購入を経験した両親が、最後に家を買ったのは50歳のときでしたが、定年後は退職金でローンを完済しました。年金暮らしをしているいま、「年金収入のみでは、ローン返済などとてもできない」といっています。

最近は、年金収入より家計支出が大幅に上まわり、過度な労働を余儀なくされる「過労老人」が増えているそうです。これから借りる皆さんは、年金暮らしが始まる65歳までに完済する計画を立ててほしいと思います。

重要なのは、借入額を決める際に「退職時ローン残高」と「退職金・年金支給予定額」をきちんと把握しておくことです。借入時の年齢が40歳で定年退職が60歳の場合、退職金で完済するのであれば、35年も固定する必要がありません。そこで有利な金利選択法として登場するのが、一部の金融機関で扱っている「20年固定金利」です。これは返済期間は35年で設定して、金利を固定する期間を当初20年のみとする商品です。40歳の人が60歳時には退職金で完済する予定として、三菱東京UFJ銀行の35年固定金利(1.32%)と三井住友信託銀行の20年固定金利(0/95%)で比較してみましょう。当初の返済期間は35年で設定します。すると、月々の返済額、20年間の総支払額、ローン残高と、すべてにおいて20年固定が勝ります。

また、金融機関によっては全期固定の20年にしかできない場合があるので注意しましょう。たとえば、フラット35が扱う20年固定は、返済期間も最長20年となります。

「提携ローン」や「プライベートローン」の比較・検討をしよう

提携ローンとは、不動産会社が提携している金融機関の商品を斡旋するローンです。大手不動産会社が取扱う提携ローンの場合、融資基準が緩和されて、審査が通りやすいケースも見受けられます。ただ、最近では斡旋手数料を取る不動産会社も多く、5万~8万円が相場となっています。

一方、プライベートローンは、提携ローンを使わずに自分で金融機関を訪ね、申込みから契約までおこなうものです。

不動産会社は基本的に提携ローンを利用するように誘導します。全顧客の審査状況を把握し、融資実行まで不手際がないよう一元管理したいからです。実際、資金は自分で調達するといっていたお客様が、引き渡し直前になって「金融機関から融資を断られた」と相談にくることがあります。また、手続きをうっかり忘れてしまう人もいます。融資を受けられずに売買契約を解除したいと思っても、すでに支払った契約金は戻りません。提携ローンにはローン特約という保全措置がついてますが、プライベートローンにはつかないのが原則です。

プライベートローンは、手間がかかるうえにリスクが伴うこともあって、一般の人にはハードルが高いもの。そこで、提携ローンを利用する人が圧倒的に多いのが現状です。しかし、プライベートローンのほうがメリットを得られる場合もあるのです。

提携ローンは取引実績の多い都市銀行が多く、いわば「取引に慣れていて無難な銀行」になります。都市銀行は金利競争力が十分あるとはいえ、金利の種類によっては都市銀行よりもさらに条件がよい金融機関も存在します。

引き渡し日まで時間に余裕があるのならば、次のような順番で検討することをお勧めします。まずは提携ローンの金融機関で事前審査を受け、融資をしてもらえる金融機関を確保します。そのうえで、提携ローン以外にも対象をひろげ、金利・諸費用面でさらに有利な金融機関がないか比較・検証してみましょう。

借入方法は「ペアローン」より「単独借入」が賢明か

たとえば、夫婦で4000万円を借りるときに、1本目は夫が債務者となって2400万円を借入し、2本目は妻が債務者となって1600万円を借入するといった、夫婦で2本のローンを組む方法がペアローンです。

ペアローンにおける最大のメリットは、ローン控除を夫婦で受けられる点です。控除の対象となるローン残高は1人上限4000万円(消費税課税物件の場合)であり、夫婦で借入すると、最高で8000万円まで適用されます。ただし、控除額は年末残高の1%かつ納税している所得税と住民税の一部を合算した金額の範囲内となります。

ペアローンでは、夫が死亡した場合でも、妻のローンは残ります。ローン控除の面でさほど差がないのであれば、あえて夫婦で借入して、万一の場合のリスクをパートナーに残す必要があるのか悩ましいところです。

夫だけでは年収が足りない場合に、夫婦で協力して住宅ローンを借りる方法は他にもあります。それが「単独借入の収入合算」です。単独借入なので、債務者となるのは夫のみです。借入額に対して必要となる年収の不足分は妻の年収を合算し、収入合算者である妻は連帯保証人となる借入方法です。

病気やリストラで夫の収入が途絶えたときは妻が返済しなければならないというリスクは、ペアローンと同じです。しかし、夫が死亡・高度障害になったら、ローンのすべてが団体信用生命保険で弁済され、遺族がローンの返済をする必要がなくなります。

ただし、夫の立場からすると、ペアローンよりも自分自身の借金が増えてリスクが増大します。ペアローンであれば、妻にもしものことがあった場合には妻の借入分はなくなりますが、単独借入ではローンの返済額に変化がないからです。

さらに、単独借入だとローン控除を利用できるのは債務者である夫だけとなり、収入合算した妻は除外されます。ローン控除を受けるためには、「連帯保証人」ではなく「債務者」となる必要があるのです。

「フラット35」は特殊で、夫婦別々のペアローンは組むことができません。夫あるいは妻が債務者、収入合算する配偶者は「連帯債務者」となり、あくまでも1物件に対して夫婦で1本のローンを借入する方法になります。両者とも債務者になるため、収入合算した妻もローン控除を受けられます。また、夫に万一のことがあった場合は、収入合算した年収の割合にかかわらず、ローンの全額が団信で弁債されます。

いろいろなケースがあるので一概にはいえないのですが、借入額が4000万円を大きく超え、夫のみでは税金を上限まで取り戻せず、妻が今後10年間は継続的に働くといった場合は、ペアローンが有効でしょう。

一方、夫の年収が妻の年収を大幅に上まわり、今後その差がますます拡大するといった夫婦の場合は、ペアローンはあまりおすすめできません。

いずれにしても、それぞれのメリット・デメリットをよく検討し、ローン控除還付金や万一の際の遺族の保障や経済力を確認して判断するようにしてください。

平井美穂(ひらい・みほ)
平井FP事務所代表。宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナー(CFP)、証券外務員1種。大学卒業後、新築マンションの販売会社で営業を経験。なかでも特殊ケースの顧客の住宅ローンプランニングが得意。その後、銀行およびモーゲージバンクへ転職し、融資業務・金融商品販売に従事する。出産を機に独立系ファイナンシャルプランナーとなり、公正中立な立場で「相談者がもっとも得する住宅ローン」の借り方をコーチしている。5000件超の相談実績を誇る、実践派の住宅ローンプランナー。

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