(本記事は、新井直之氏の著書『執事が目にした!大富豪がお金を生み出す時間術』青春出版社、2018年2月20日刊の中から一部を抜粋・編集しています)
意外にも借金が多いのはなぜ?
「借金」という言葉に、よくないもの、できたらしないほうがいいこと、というイメージをお持ちの方は多いと思います。
経営においても、借入金が多ければそれだけ債務を抱えることになります。利子の支払いだってばかになりません。
誰だってあえて借金をしようなどと考えないものです。
しかし、大富豪は手元に十分な資金があったとしても、あえて金融機関からお金を借りることがあります。
なぜこのようなことをなさるのか?
それは「信用力」を高めていらっしゃるためです。
金融機関は慈善事業ではございません。厳しい審査を通して融資を決めます。回収できる見込みのない相手にはお金を貸すことはないのです。つまり、借金ができるということは、それだけの返済能力があると認められた証なのです。
しかも、大金を借りることができて、その金額を期日に返済していれば、金融機関からの評価はさらに高まります。
また、豪邸や高級車を数多く保有していたとしても、じつは個人の所有物ではないということもあります。会社名義になっていたり、リースや賃貸の形式で利用していたりします。
これは、個人の資産を増やしているだけでは、万が一経営がつまずいたときに差し押さえられてしまったりするからです。
経営者にとって避けなければならないのは、資金繰りに失敗し、経営が立ち行かなくなること。このような事態に陥ってから何とかしようとしても、どうにもなりません。
目先の利益だけ考えれば「借金」は回り道のように思われるかもしれません。
しかし、事前に周りからの信用度を高めておく仕組みを作っておくことは、いざというときの自分を助けてくれるのです。
資産運用は何をしているか?
とある大富豪の方から、「1日1%の金利がつく金融商品を知っているか?」と聞かれたことがありました。年利ではなく1日ですからトイチです。
日頃、幾多のお金持ちのみなさまにお仕えしても庶民感覚が抜けない私ですから、脳裏では「怪しい」という危険信号が点滅しました。
ところが、数日すると別の方からも同じ商品の話が......。
思わず「騙されていませんか?」とお聞きすると、「みんなが怪しくないと思っているような商品は儲からないよ」「リスクが高くても、思い切ってそこにお金を投じることができるかどうか。それがお金を増やせるかどうかの分かれ目なんだよ」という言葉がかえってきました。
じつは怪しげな儲け話を投機と考え、話に乗っかる資産家は少なくありません。
彼らは
「新しい手法で法整備が追い付いていない」
「実態がよくわからない」
「投資している人がまだ少ない」
を「儲かる3か条」だと考えて、逆に攻めていくのです。
そういった話は普通の人は「危険だ」と敬遠します。
自分が知らない、理解できないだけで人は「怪しい」と思ってしまいます。しかし、未開拓の分野でライバルがいないからこそ、利益率は貯蓄や国債のような安定運用とは比べ物にならないのです。
もちろん、怪しい話に乗って騙されたり、損するケースも少なくありません。それなので「こういうお金はなくなってもいいつもりで投じること」と言います。
こと投資のことになると、保守的になり、悩むのが普通だと思います。それでも積極的に怪しい儲け話に投資できる大富豪の方々は、投資とリターンを瞬時に見極める力を日々養っているからです。
悩む時間を取るなら、見極める力をつける、これが資産運用の考え方なのです。
膨大な資産を守るための原則とは?
資産を守るために貯金をする。このような考えは大富豪の方はなされません。
たとえ資産防衛のためであっても、お金を生み出さない時間は作りません。
とはいえ、資産がゼロになってしまっては元も子もないので、金持ちであり続けるために、3つのルールに厳格にしたがって、資産を守り抜いていらっしゃいます。
1つ目が、「投資先は300年以上前からあるもの」。
歴史が浅いものは、信頼と知名度の積み重ねがありません。運用先としては安定性が低く、価値が短い間に大きく変わる可能性があります。
だから、資産を守るためには古くから「価値がある」と認められた土地、金などの現物に投資します。
資産を増やすための攻めの投機では、リスクある商品でも買う一方、資産防衛のためには石橋をたたいて“壊す”ほど慎重なのです。
たとえば、都心の土地を買う場合。もしかしたら多くの方は、地価の上昇率や値上がり予想を調べるかもしれません。しかし、大富豪の場合、古地図などを取り寄せ、300年前のあり様を調査します。
大きな自然災害が起きるとあらわになりますが、土地には古くから安全な場所、危険な場所があります。300年前に海だった土地よりも、当時から栄えていた地域や災害時に被害の小さかった土地を選ぶことで、暴落する可能性の低い不動産を手に入れることができるのです。
2つ目は、「火をつけても燃えないもの」です。
お金持ちは紙幣や株式といったものをあまり信用していません。
その理由は、お札は火をつければ燃え、銀行も潰れることがあり、証券などの電子データも失われる可能性はゼロではありません。
幾度となく戦火に追われたユダヤ人がゴールドを重視し、金歯や指輪、ネックレス、時計などに形を変え、つね日頃から身に付けていたように、お金持ちは燃えても残る資産を大切にします。
実際、私がお仕えしているお金持ちの邸宅には、必ずと言っていいほど、地下には金庫があります。それも、ホテルや旅館にあるようなボックス型ではなく、壁に埋め込んだ耐火金庫です。
その中には、金やプラチナの延べ棒が収められ、非常時の備えとなっているのです。金やプラチナは、最悪、溶けても残るからです。
そして、燃えないという思想は、不動産投資の際も貫かれています。
攻めの投資、投機ではマンションの区分所有も活用しますが、資産防衛で購入するのは、やはり土地です。上が火事で燃えても土地は残り、新たに何かを建てることで、また更なる収入を生み出してくれるからです。
3つ目は「数に限りがある(有限である)もの」です。
人の手で作り出しにくいもの、ともいえるかもしれません。
理論上、通貨は中央銀行と国、株券は企業という発行者の思惑でいくらでも増やすことができます。大富豪たちは、心のどこかで「こうした人工的な価値は、ある日突然暴落する可能性がある」と考えます。
だからこそ、埋蔵量、発掘量が限られている、金、プラチナ、やすやすと増やすことのできない立地の良い土地、発行数の決まっている記念の金貨、現存数の少ないクラシックカーやビンテージのワインやアンティークなどを重視するのです。
また、大富豪の間でビットコインへの注目が高い度が高いのも、綿密なプログラムによって発行量が制限されているとされているからでしょう。
とはいえ、ビットコインは新しい投資先。資産を増やすための攻めの投資に使う方はいても、資産防衛に使おうとする方はまだいません。
この3つのルールをクリアしているのは、土地、金、プラチナといったところでしょうか。お金を生み出す時間を確保する一方で、資産を守るお金の使い道を確保しておくのも大富豪たるゆえんなのです。