(本記事は、酒井威津善氏の著書『儲けのしくみ 50万円からできるビジネスモデル50』自由国民社、2017年4月22日刊の中から一部を抜粋・編集しています)

新しい常識を創る

儲けのしくみ 50万円からできるビジネスモデル50
(画像=Benoist/Shutterstock.com)

「これはこういうものだ」私たちは多かれ少なかれそうした「先入観」や「固定観念」、そして常識や慣習にとらわれています。

実は、この常識や慣習を打ち破ることこそ、新たなビジネスモデルを作る絶好のチャンスなのです。

そんな簡単に思いつかないと諦めないでください。

成熟している業界で見事に常識を破ったビジネスモデルをご紹介しましょう。

●自己負担5万円で100人呼べる結婚式

会費婚

なんと、自己負担5万円で結婚式が挙げられるサービスです。

「5万円?少し前に流行っていた格安結婚のこと?」いいえ。違います。きちんとした結婚式です。それも100人も呼べるような。

いったい、どういう仕掛けになっているのでしょうか?

一般的な結婚式では、式前日までにホテルなどの会場側へ費用の全てを支払うのが普通です。100人も呼べば、ホテルなどの場合、安くても300?400万円以上。高級車が変えるほどのお金です。結果、結婚式=お金がかかるという常識が頭をもたげ、結婚式そのものを挙げない人が増えてしまったのです。

会費婚が覆したのが、この常識。次のような仕組みになっているのです。

・結婚式の費用は後払い
・自己負担の5万円以外の費用はすべて出席者から「会費」として回収
・参加費の金額に応じた価格メニュー

一般的な結婚式では、事前に費用を払った後、出席者からの「お祝い」でその分を埋めます。(赤字もあるでしょう)お祝いでもらうものを定額にした「参加費」に置き換え、結婚式の費用にあてがったわけです。

●なぜ、これがうまくいくのか

うまくいく理由は2つ。

1つは、結婚という絶対的な需要があること。結婚する人は減っても、結婚という文化、儀式そのものがなくなることはさすがにないでしょう。

そしてもう1つが、時代背景。学費のために借りた奨学金の返済ができず、自己破産をする人が増えているというニュースが踊りました。デフレ経済が一層加速し、ますます世帯収入は減る一方。

大学に行きたいけど、お金がない。結婚式も同様です。人生に一度の結婚式くらいなんとかしたい。

その人間心理を汲みとって、費用は先に支払うものという常識を覆し、参加費は定額、費用は後払いと心理的な負担を減らした点です。

なお、「後払い」の仕組みには注意が必要です。利用者側からすれば大きなメリットですが、運営側にとっては大きなリスクです。

万が一の想定をし、余力の資金を確保しておくことが欠かせません。

●この公式を使って考えられるビジネスモデルの例

結婚式以外にもこの方法が転用できます。

例えば、「お葬式」。すでにアマゾンが定額でお坊さんを呼べる「お坊さん便」を取り扱っています。

これをもう一歩アレンジして、会費制版を出すことは可能です。祝儀が香典に変わるわけです。(お香典という性質上、そのままでは難しく、もう一歩工夫が必要でしょう)

商業出版もいけそうです。例えば、あらかじめ購入者を確保しておき、そこから逆算して価格と販売数を決める。

現在のようなどれだけ売れるかがわからないという常識を覆すわけです。クラウドファンディングに似ていますが、出版にかかるコストを大幅に下げることが可能です。

できれば、時限制にして事前購入と発売後の価格を別にしておくのがベストでしょう。

さらにこの応用例として「従量課金制」を持ち込むことも考えられます。

例えば、

・テーマパークの従量課金制→入場料+施設利用料を滞在時間で課金する(この事例の逆です)
・大学の授業→受けた科目の分だけ授業料が発生
・教習場→早く免許を取得するとその分安くなる

などです。商品やサービスを変えずに、価格のあり方を変えることでいくらでも新しいビジネスモデルを生み出すことが可能です。

もちろん、価格だけではありません。

場所や時間、提供方法などその業界で一般的な方法とされていることをぜひ、疑ってみてください。そこに大きなビジネスチャンスが眠っているはずです。

オーダーメイド化する

なかなか売上が伸びない。マーケティングを駆使しても良い結果がでないのであれば、ぜひ試してみていただきたいのがご紹介する「オーダーメイド」。

「オーダーメイド?そんなことをしたらコストがかさむだけだろう?」

と思うことなかれ。見事としか言いようのない事例があります。

●お守りのカスタムメイド

OMAMO

池上實相寺が展開する、その名も「OMAMO(オマモ)」。

40種類の和柄の中から願いごとに合わせて、僧侶が選ぶオーダーメイド型のお守りを提供するサービスです。

仕組みはいたって単純です。

Webページへ進み、?分の願い(悩み)ごとを記?し、15種類の配?イメージの中から1つ選び、メールアドレスを記?するだけ。。あとは僧侶が願いごとの内容に合わせて柄を選び、届けられます。

価格は3千円(税込、国内送料無料)。

●なぜこれがうまくいくのか

「お守りのオーダーメード」。単に物珍しいから、と片付けてはいけません。

このビジネスモデルには、

・スーツやメガネと同じ「統一プライス」
・一から作るのではなく、柄を選ぶ「パターンオーダー」
・本来できなかったことができるようになった

といったすでに成功しているビジネスモデルの要素、3つが含まれています。

特に注目するべきは、2つめと3つめです。

従来のお守りと言えば、神社の社務所の窓口で販売されているものでした。

種類は、主に「健康」「金運」「縁結び・出産」「学業」「安全」「厄除け」の6つ。

神社の特性に合わせて、販売されているものも限られていました。

言い換えれば、「決まったもの」の中から選ぶしかなかったわけです。

神社と言えば、畏れ多い場所。「与えてもらう」という謙ったイメージです。

こちらから何かリクエストできるような雰囲気はありません。

このイメージを逆転させ、「与えてもらうもの」から「選ぶもの」に価値を変換させたのが最大の成功要因です。

●この公式を使って考えられるビジネスモデルの例

お守り以外にも、一方通行で選ぶ余地のない商品やサービスを探してみましょう。

例えば、同じ神社で言えば「おみくじ」もそうですよね。

おみくじを振る→番号を選ぶ→札を取る

どの神社でもこのパターンです。

これがカスタムメイドできたら、100円よりも高い値段設定ができそうです。

神社以外のケースだと、

・オーダーメイド・ダイエット
→ダイエットメニューを公文式のように個別で作る

・オーダーメイド・リモコン
→利用者宅の家電に応じたリモコンまたはスマホアプリです。技術的には可能でしょう

・オーダーメイド・テンプレート
→パワーポイントやエクセルなど既定版ではないもの

・オーダーメイド・クッキング・レシピ
→ 食材提供ではなく、365日分(もしくはある程度のパターン)のレシピを家庭の事情に合わせて提供

・オーダーメイド・ブックガイド
→ かなり近いものが存在しますが、読み手が解決したい問題や仕事、家庭その他で悩んでいることについて、解決に導いてくれる本の紹介

・オーダーメイド・旅行情報
→ パックツアーを販売するのではなく、あくまで「オススメの旅行プラン」の情報を提供

などが考えられそうです。

既存の枠に収まったものを、あえて「制限」を取り払ってみる。

そこに新しいビジネスチャンスが生まれるはずです。

儲けのしくみ 50万円からできるビジネスモデル50
酒井威津善(さかい・つよし)
フィナンシャル・ノート代表。ビジネスモデルアナリスト。東洋情報システム(現TIS株式会社)にて10年間に渡り、法人向けシステム提案、企画・設計に従事したのち、不動産証券化業、住宅建設業、人材紹介業、システム開発業、遊技機製造業などで計12年間CFOを歴任。2013年より独立。様々な業界の財務モデルに基づく実践型ビジネスモデル構築ツール「BM Schema(ビジネスモデルスキーマ)」を用いて、所員3名の税理士法人、年商1億2千万円の小売業、年商42億円の住宅メーカー向けに事業基盤再構築、新ビジネスモデル構築を実施し、キャッシュ・フローを前年比110%以上に改善するなどに成功。 ※画像をクリックするとAmazonに飛びます