(本記事は、まつのすけ氏の著書『会社員をしつつ、株で元手40万から月250万ちょい稼いでいる件』ぱる出版、2018年10月24日刊の中から一部を抜粋・編集しています)

上場サインを読んで「先回り」せよ!

会社員をしつつ、株で元手40万から月250万ちょい稼いでいる件
(画像=SFIO CRACHO/Shutterstock.com)

経済規模が大きい国は、同じ国の中に複数の株式市場が存在していることが多いです。

米国ではニューヨーク証券取引所、NASDAQ、NYSE Arca、NYSE MKTなどの株式市場があります。

日本では東京証券取引所(東証一部・二部・JASDAQ・マザーズ等)、名古屋証券取引所(名証一部・二部・セントレックス)、札幌証券取引所(札証・アンビシャス)、福岡証券取引所(福証・Q‐Board)があります。

とある市場に一度上場したら、ずっとその市場で上場しなければならないというルールはありません。

時として別の市場にも重複上場することや、市場変更を行うことがあります。

たとえば、東証二部から一部へ、東証マザーズやJASDAQ、名証、札証、福証から東証二部や一部に変更されることがあります。

それに伴って市場が変化した銘柄に膨大な買い需要が発生して、大きく株価が上昇することがあります。

逆に大きく下落することもあります。

年金基金、保険会社、投資信託、信託銀行、投資顧問会社などの機関投資家は、一定の厳格なルールに基づいて資金を運用していることが大多数だからです。

そのルールの中に「東証一部上場企業であること」や「時価総額○億円以上」といった条件が入っていることが多々あります。

中小型株というのは流動性に難があることが多いことから、多額の資金を運用している場合は、資金量が大きいと自分の売りで株価が暴落してしまい、少し悪材料が出ただけで売るに売れなくなるといったリスクが有るので、こうした事態を回避するためにあります。

また、東証一部というのは日本の株式市場の頂点であり、「東証一部上場企業」というのは高い信頼性・ブランド力があり、社会的・経済的な信用力がUPして、投資したいと思う投資主体の増加も期待できます。

したがって、東証一部に上場する銘柄は膨大な買いが入ってくる可能性が高く、発表された翌日は売出し(PO)【企業が新たに株式を発行したり、既に発行されている株式を投資家に取得させようと投資家に募ること】や立会外分売(企業や大株主が証券取引所の取引時間外に株をディスカウント価格で売りに出すこと)とセットでない限り、大きく株価が上昇することが多いのです。

東証一部上場の要件というのは公開されており、東証一部上場を目指している企業がそれを充足するために取る行動というのもパターン化されています。

そうした点に着目して、東証一部への昇格期待がある銘柄を事前に買っておき、発表後に売るという投資手法があります。

東証一部の上場企業数は17年で約2倍!

日本の株式市場の頂点である東証一部に上場する企業は増加の一途を辿っています。

1990年末には1191社、2000年末は1447社、2010年末は1670社、2017年末は2062社が上場しています。

東証二部、マザーズ、ジャスダック、地方市場から東証一部に昇格する企業や東証一部に新規上場する企業が増加しています。

今後も日本全国での経済活動の結果として、トレンドが続く可能性が高いでしょう。やはり上場企業というのは成長意欲がある会社が大多数なので、できれば東証一部を目指したいという会社が多いです。

日本経済の着実な発展に伴って企業の利益も確実に増加していき、それによって東証一部の要件をクリアする企業が増えることが見込めます。

今後も対象企業は山のようにあり、東証一部昇格というイベントを活用して超過収益を狙うことが可能です。

東証一部に昇格するための5つの基準

東証一部に昇格するためには、東京証券取引所が定めている複数の条件をクリアした上で、企業が東証に申請して承認される必要があります。

東証一部指定基準、市場変更基準(マザーズから・JASDAQから)は東証が公表しています。※一部指定・指定替え・市場変更基準のURL( https://www.jpx.co.jp/equities/listing/criteria/transfers/

また、東証マザーズや東証二部に上場してから1年間経つと、市場変更の可能性があります。

「1年ルール」と呼ばれています。

さらに、東証マザーズに上場してから10年を経過した場合、東証一部か二部に昇格するのが基本となる市場選択制度が導入されています。

「10年ルール」と呼ばれています( https://www.jpx.co.jp/equities/listing/criteria/mothers/index.html )。

JASDAQから市場第一部への市場変更については、市場変更日時点において上場後6ヵ月以上が経過していることが条件となっています。

東証一部の市場変更基準には、主に次のような基準があります。

【東証一部昇格のための5つの基準】

1.株主数(指定時見込み):2200人以上(会社四季報やIRへの問い合わせで確認)

2.流通株式(指定時見込み):2万単位以上(有価証券報告書や会社四季報などのデータから類推)

3.時価総額(指定時見込み):40億円以上(JASDAQからは時価総額250億円以上)(ヤフーファイナンスやネット証券の画面などで確認可能)

4.経常利益・時価総額:最近2年間の経常利益5億円以上or時価総額が500億円以上(会社四季報で確認可能)

5.その他:最近5年間の有価証券報告書に虚偽記載がない等のコンプラ系基準、昇格の意思があるか否か(企業のIR・ニュース・中期経営計画などで確認可能)

このうち、1、3、4、5は事前に調査可能です。2はリアルタイムでチェックするのは難しいものの、有価証券報告書や会社四季報などのデータから類推することも可能です。これは厳格な基準があるわけではなく、2万単位に満たない場合等でも見込みで昇格するケースがあります。

ちなみに、前述の東証一部の上場基準を満たしたら、自動的に東証一部に昇格するわけではありません。

その企業が東証一部に上場する意思決定をしなければ、東証一部に指定されません。

形式的には東証一部の基準を充足していても、企業に意欲がないことから、万年東証二部という銘柄もあります。

たとえば、帝国ホテル(9708)、広島電鉄(9033)、北陸ガス(9537)、中央魚類(8030)などは東証一部の条件を長らく充足していますけれども、ずっと東証二部のままとなっています。

これらの企業はこれまで昇格の意思がなく、東証に申請をしてきませんでした。

昇格する銘柄を世界一カンタンに見つける4つのポイント

東証一部へ昇格すると多くの機関投資家の買い対象となり、かつ企業の信用力の向上などの効果でより一層の業績UPの期待が増幅することから、東証一部昇格が発表されたら翌日は株価が大きく上昇することが多くなる、という話をこれまでしました。

例外的に株価が上昇しないケースとしては、昇格と同時に株価に大きな悪影響を及ぼす売出しや立会外分売を発表した場合でしたね。

こうしたケースでは東証一部昇格のプラスを、短期的な需給悪化が打ち消してしまい、トータルで下落することもあります。

しかし基本的には、東証一部に昇格する銘柄を、上場承認の発表前に保有していると、発表後に売却することで利益を獲得できる可能性が高いです。

見つけ方のポイントは、東証二部からの1年ルール、地方市場から東証二部への市場変更、株主数や流動性増加のアクションなどが挙げられます。

1)東証二部・マザーズ上場からの1年ルール

東証二部やマザーズに上場から1年間経過すると、市場変更できるようになって東証一部に昇格する例が多いです。

東証二部・マザーズに新規上場した企業は上場の1年後、地方市場やJASDAQから東証二部に市場変更した銘柄は、そこから1年後に東証一部へ昇格できるので、そのような銘柄をピックアップするのがポイントとなります。

確認の方法としては日々、TDnet(適時開示情報閲覧サービス)で確認するのが基本となります( https://www.release.tdnet.info/inbs/I_main_00.html )。

全ての開示情報を一つ一つチェックして確認する手間を省きたい場合は、キーワード検索欄に「東京証券取引所」などのワードを打ち込んで探しましょう。

2)地方市場(名証、札証、福証)→東証二部や、JASDAQ→東証二部と市場変更

こういった銘柄は、その後に東証一部に昇格することが多いので、要チェックの銘柄となります。

これらの銘柄の中で、東証一部昇格の要件を満たしている、あるいは株主数・流動性が増えたら満たす場合で、業績面もわるくない企業は投資候補となります。

3)株主優待の新設・拡充

東証一部へ昇格条件のうち、業績などは満たしているものの、株主数や流動性の基準はクリアしていない銘柄があります。

株主数や流動性を増やすための施策として、株主優待を新設あるいは拡充する企業や、立会外分売を行う企業があります。それらを組み合わせる企業もあります。

株主優待は絶大な人気があり、株主優待銘柄を購入する個人投資家は数多いことから、魅力的な優待を用意すると、株主数が一気に増加する可能性が高いです。

他のすべての東証一部の条件を満たしているものの、株主数のみ満たしてなくて、JASDAQから東証二部に市場変更して株主優待を導入した場合は、東証一部昇格を狙っている可能性が高まります。

4)売出・立会外分売、株式分割

立会外分売は大株主が証券取引所の取引時間外に、終値から数%ディスカウントした価格で保有株式を不特定多数の投資家に売却するディールです。

個人投資家もネット証券で参加できます。これも株主を増やすための特効薬です。

また、「2万単位以上」という流通株式等の条件をクリアするために、株式分割を行う企業もあります。

このような流動性を高めるアクションも、東証一部昇格狙いのシグナル察知として有用です。

株主数や流動性以外の東証一部昇格要件を充足している銘柄が、JASDAQや地方市場から東証二部に市場変更して、株主優待を新設して、立会外分売や株式分割を行った場合などは、投資妙味が高いと判断できます。

もちろん東証一部昇格期待があったとしても、業績悪化などがあった場合は、株価は軟調に推移します。

東証一部昇格狙いでの投資は中期投資になるので、ファンダメンタルズに問題ないか会社四季報、ネット証券のツール、月次の情報を確認できる企業はその情報などをチェックしましょう。

つまり、上場市場を登りつめようとしていて、「株主数」や「時価総額」を増やそうとしている企業に注目せよ!ということです。

東証一部昇格を狙っていて株主数が足りない場合、立会外分売や売出しで大株主の株を個人投資家に幅広く売って、増加を目論むことがあります。

また、株主優待の新設や拡充によって、株主数と時価総額を増やそうとする企業があります。

新興市場→東証二部に昇格、立会外分売や売出しで株主数や流動性の増加、時価総額上昇や株主数狙いで株主優待新設・拡充といった事象を立て続けに連発している企業は、東証一部昇格狙いとして面白いです。

なお、東証一部昇格狙いの投資手法については、著名個人投資家のv‐com2さんの「昇格期待の優待バリュー株で1億稼ぐ!」(すばる舎)という書籍も参考になります。

また、深いルールまで把握する上では、東京証券取引所が発行している「新規上場ガイドブック」が参考になります。(※ https://www.jpx.co.jp/equities/listing‐on‐tse/new/guide/index.html

会社員をしつつ、株で元手40万から月250万ちょい稼いでいる件
まつのすけ
株式投資メインで稼ぐ個人の兼業投資家。人気投資ブログ「The Goal」管理人。投資歴約13年。33歳で「億り人」に到達。下落率の少ない低リスク運用を特徴とし、安定的に年平均20-100%の利益を獲得、現在の年間利益は約3178万円。東証一部昇格狙い、株主優待投資、新高値投資などが得意分野であり、現状に飽き足らず、優位性がある取引手法を日々模索している職人的投資家。ダイヤモンドZai、日経マネー、日経ヴェリタス、日経トレンディ、Yen SPA!、SPA!、週刊ポスト、マネーポストなど著名メディアに多数登場。フィスコソーシャルレポーター。

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