(本記事は、まつのすけ氏の著書『会社員をしつつ、株で元手40万から月250万ちょい稼いでいる件』ぱる出版、2018年10月24日刊の中から一部を抜粋・編集しています)

イエローカードレベルの不祥事銘柄を狙う!

会社員をしつつ、株で元手40万から月250万ちょい稼いでいる件
(画像=solarseven/Shutterstock.com)

上場企業に商品の欠陥・回収、品質偽装・表示違反、粉飾決算、環境汚損などの不祥事が勃発して大きく株価が下落することがあります。

この不祥事というイベントは投資機会となるケースがあります。

狙いは致命的な不祥事ではない場合です。

そういう大きく株価が下落した銘柄のリバウンドを狙う投資手法です。

上場廃止や倒産というリスクがあるものの、成功すれば短期間で大きな利益を獲得することが可能です。

社会的に大きなニュースとなるような不祥事が勃発すると、上場企業の場合は株価が大きく下落するのが通例です。

そのまま上場廃止となるケースもあるものの、不祥事勃発直後の暴落が底となり、結果的にその局面で買っていれば大きなリターンが出るケースも散見されます。

たとえば、次のような不祥事です。

・不適切会計のビックカメラ
・店員の客に対する犯罪が発生したペッパーフードサービス
・ジェットコースターで死亡事故が発生した東京ドーム
・不適切会計のオリンパス
・異物混入があった日本マクドナルドホールディングス
・不適切会計のバリューHR

もちろん中にはタカタ等の上場廃止に至る「致命的な不祥事」もあるので、再発防止や時間の経過によって元に戻るレベルの不祥事なのか、そこを見極めるのが重要になります。

業績に致命的な悪影響が及ぶか否か、上場廃止に至るか否か、新たな悪材料が出るか否か等に注視しつつ、底入れするか、チャートが底打ちして反発してきたらエントリーするか、を検討します。

ESG投資の観点で、粉飾の疑惑、死亡・傷害事故、製品に対する欠陥・瑕疵、組織ぐるみの規範逸脱などの不祥事が生じた銘柄は機械的に売る、というルールの大口投資家も数多くいると言われています。

不祥事銘柄にはこうした大口投資家の売りが断続的に入り、短期的に株価が大きく下落する可能性があります。

一時的事故にとどまるか、それとも悪影響が拡大するかの判断は難しく、難易度は高いものの、大きなキャピタルゲイン獲得の可能性もあることからダイナミズムがあります。

大きな不祥事が発覚した場合、まずは株価が大きく下落することが多いです。

まずは「パニック売り」が生じて、ストップ安が数日間に渡って続くこともあります。

通常の投資尺度では考えられない水準まで売り込まれることもあります。

しかし、「止まない雨はない」ように、どこかのタイミングで株価下落が止まって反発する局面が訪れることが多いです。

暴落した株価の底値がどこになるのかの手掛かりは、究極的には業績への影響となります。

株価が割安だと判断した投資家の買いが入ると需給バランスが買い方優勢となり、株価が底を打ちます。

たとえば、会社側が業績に及ぼす影響を公表することで、株価下落が停止して反発する契機になることもあります。

一例として、日産自動車が2017年9月29日に無資格者が自動車の完成検査をしていたと発表すると、翌営業日の10月2日には一時マイナス5%まで大きく株価は下落しました。

しかし、同日夕方の記者会見において、完成車のリコール(回収・無償修理)で発生する費用が当時の試算で250億円以上と発表されると、翌営業日に株価は一旦下げ止まりました。

株式投資家が強く嫌気する状況の一つは、何が起こるのかわからない不透明性です。

悪材料・マイナス要因の発表でも、それで不透明感が払拭された場合は、「悪材料出尽くし」となり、大きく株価が上昇することがあります。

特に業績や上場維持への不透明感が強く、発表された材料をファンダメンタルズからみて、大幅に割安な水準まで株価が下落していた場合は、割安訂正が生じることがあります。

業績への影響が明確になると、不透明感の欠如から最悪の事態を想定してオーバーシュートしていた株価が修正される局面に入ります。

とはいえ、追加で不祥事が続々と生じた場合、一時的な反発後に再度下落することもあります。

あくまで本業が順調でそれに対する影響度が小さい場合は妙味が出る好機となります。

本業への影響が軽い「不適切な会計処理」で夢の10倍株

ビックカメラは2002年に池袋本店などを不動産証券化して、信託受益権を約290億円で有限会社山三マネジメントに売却しました。

それを2007年に買い戻した際の清算金について、2008年2月中間決算で約49億円の利益を計上しました。

山三マネジメントの290億円の調達のうち14億5000万円が、ビックカメラからの劣後匿名組合出資で、山三マネジメントの全持分を有するケイマン諸島のSPCは、ビックカメラがすべての無議決権優先株式を保有していました。

ビックカメラのリスク負担額は約5%で、ビックカメラの売却取引として会計処理されていました。

しかし、290億円のうち75億5000万円が株式会社豊島企画からの優先匿名組合出資でした。

豊島企画の出資はビックカメラ関連会社の東京企画の保有現金から実質的になされたもので、会計処理においては東京企画からビックカメラ創業者の新井氏への貸付金として処理されていました。

また、山三マネジメントに豊島企画が出資した75億5000万円については、新井氏が保有するビックカメラ株式を担保として借り入れたお金で充当されました。

つまり、豊島企画は実質的には新井氏が支配する会社で、「ビックカメラの子会社に当たる」と考えられたのです。

以上のことから、山三マネジメントにおけるビックカメラのリスク負担額は約31%であり、信託受益権の売却はビックカメラからの金融取引として処理する必要があり、虚偽記載ではないかと問題になりました。

ビックカメラの会計処理問題が浮上した後、東京証券取引所はビックカメラの株式(3048)を監理銘柄に指定しました。

上場企業が上場廃止基準に該当する可能性がある場合は、証券取引所はその銘柄を一定期間、監理銘柄に指定します。

上場廃止が決まると証券取引所での売買が不可能となるので、事前にその可能性を投資家に周知するのが主な目的です。

監理銘柄に指定された後に上場廃止基準に該当する恐れがなくなれば、監理銘柄の指定が解除されて、再び通常の銘柄として取引されるようになります。

これを受けてビックカメラは、2009年2月20日に7期分の過年度決算を修正しました。さらに経営責任を取って新井氏が会長を辞職しました。

証券取引等監視委員会はビックカメラと新井元会長に対して、課徴金の納付命令を行うように金融庁に勧告したものの、金融庁は新井元会長については違反事実がないという決定を行いました。

その後、東京証券取引所は2009年3月に「訂正内容は重要ではあるものの、その影響が重大であるとまでは認められない」として、ビックカメラの監理銘柄指定を解除して、無事に東証一部の上場は維持されました。

上場維持の観測が広がってからストップ高連発となり、その後は一時的な下落を経て、株は長期上昇トレンドとなりました。

私はビックカメラの株式を購入してその後ほとんど売却して、現在は優待単元株の100株だけをホールドしています。

ビックカメラの虚偽記載は問題があるものの、本業への影響は軽微だと判断しました。

本業の家電、その他の物品販売で問題があったわけではなく、不祥事があったのは複雑な会計処理です。

確かに会計不祥事のニュースが流れると企業イメージに悪影響が及びます。

家や勤務先の近くにビックカメラがあったら便利ですし、かつ家電以外にも多様なアイテムがある店舗もあり、ポイントの使い勝手は幾多の家電量販店の中でも抜群に良好です。

この不祥事が業績に及ぼす影響は軽微だと考えて、後は粉飾決算として上場廃止に至るか否かの判断でした。

この点、過去に粉飾決算で上場廃止になった銘柄との比較、東証の思考・行動様式に鑑みると、ビックカメラの会計処理の誤りを理由に、東証が上場廃止に追い込む可能性は高くないと判断しました。

また、仮に上場廃止となったとしても、ビックカメラは個人顧客相手のリテール商売を展開していることから、個人も多い既存株主に致命的な悪影響を及ぼすようなファイナンスを行うリスクは小さいと考えました。

それなりの金額での現金化、もしくは潜伏期間を経ての再上場が期待できると考えました。

以上のことから2009年1月のビックカメラの虚偽記載という不祥事事件は買いのチャンスであると捉えました。

実際にここは絶好の買い場となり、その後は大きく株価が上昇してなんとテンバガーを達成しました。

本業に影響が皆無もしくは軽微と推察できる会計処理の不祥事で、上場廃止に至るような粉飾ではない場合、買いのチャンスとなることが大きいと考えています。

ESGの観点で会計不祥事銘柄は無条件で売りというルールに基づいて、機械的に売買している大口投資家の売りが嵩んで、株価が暴落したところで買いを入れられるのは、自己責任で機敏に売買できる個人投資家ならではのエッジ・優位性です。

中には監理銘柄入りで安く投げ売りして、解除されてほとぼりが冷めた後に高く買い戻した大口投資家もいるかもしれません。

このようなことはなく、その逆を行けるのが個人投資家のメリットです。

ビックカメラと同様に会計処理の不祥事で株価が大きく下落したところで購入して、その後の大きな株価上昇でキャピタルゲインを獲得した銘柄としてバリューHRがあります。

2015年1月、子会社が架空の売上及び仕入れ計上を行ったという不適切会計が発覚しました。

しかし、東日本大震災後に業績が低迷した時期に数字作りのために行った粉飾で、金額面もマイルドな水準だったことから、本業に及ぶ影響は軽微でした。

実際に一時的に株価は大幅に下落したものの、調整は短くその後は再び力強い上昇トレンドとなり、株価は底値から5倍以上まで上昇しました。

タカタなど本業に直撃する不祥事に関しては、それが及ぼす影響を冷静に判断して底値で買いを入れるのは難易度が高いです。

しかし、ビックカメラやバリューHRなどのように会計不祥事で上場廃止に至る可能性は高くないと判断でき、かつ本業への影響が軽微と判断できる場合は、「明けない夜はない」ことにベットするのも選択肢の一つです。

もちろん、粉飾決算=買い、というわけではないのですが、「不祥事株」を狙うときの1つの判断基準にしていただければ、と思います。

会社員をしつつ、株で元手40万から月250万ちょい稼いでいる件
まつのすけ
株式投資メインで稼ぐ個人の兼業投資家。人気投資ブログ「The Goal」管理人。投資歴約13年。33歳で「億り人」に到達。下落率の少ない低リスク運用を特徴とし、安定的に年平均20-100%の利益を獲得、現在の年間利益は約3178万円。東証一部昇格狙い、株主優待投資、新高値投資などが得意分野であり、現状に飽き足らず、優位性がある取引手法を日々模索している職人的投資家。ダイヤモンドZai、日経マネー、日経ヴェリタス、日経トレンディ、Yen SPA!、SPA!、週刊ポスト、マネーポストなど著名メディアに多数登場。フィスコソーシャルレポーター。

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