(本記事は、西田一見氏の著書『ビジネスNo.1理論』現代書林、2014年7月15日刊の中から一部を抜粋・編集しています)

大成功するためには、「他喜力」は絶対に欠かせない

ビジネスNo.1理論
(画像=Jacob Lund/Shutterstock.com)

真のNo.1に到達するためには、大きな力が必要です。それが「他喜力」です。

「他喜力」とは、文字通り「他の人を喜ばせる力」のことです。

この言葉を聞くと、「なんだ、そんなあたりまえのことですかあ。要するに顧客満足や従業員満足のことですよね、いつも考えていますよ」と思う人がいるかもしれません。

しかし「他喜力」はもっともっと奥深いのです。

他の人を喜ばせる──。

たしかに誰もがよく知っている、あたりまえのことです。しかし、ここにこそビジネスで成功する本質があります。

脳科学的に見れば、ビジネスとは、商品、サービス、店、会社、さらには自分という人間に対して、お客さんの脳、ユーザーの脳、消費者の脳、取引先の脳をいかに「快」にするかの競争だと言えます。脳を「快」にさえできれば、自然と心も財布も開くものです。これが、ビジネスの本質です。

では、相手の脳を「快」にするにはどうするか。まさに、相手を「喜ばせる」ということになります。

「利益より先に人を喜ばせることを考える」「お客さんを喜ばせ続ける」「より大きな社会貢献を追求する」……、このように相手を「喜ばそう」とすれば、イヤでも相手のことを考えます。

どうしたら喜ぶかを追求するエネルギーがわいてきます。なぜなら人間は、人を喜ばせると自分もうれしくなる生き物だからです。

成功の大きさは、どれだけ人を喜ばすことができるかにほかなりません。あなたが喜ばせたい人、つまりあなたにとって大切な人の数は、「あなたのことを大切に思ってくれている人」の数です。

その数が、あなたの人生の成功度、また幸福度の指標になります。その理由は、人間という社会的動物は、自分以外の人との出会いによってしか成長しないからです。また自分以外の人と一緒でなければ、心からの幸せは感じられないからです。

あなたが大切に思う人、喜ばせたい人が増えるたびに、あなたの幸せになる力、成功する力も確実に大きくなるのです。

ですから「他喜力」は、ビジネスを大成功させる上で非常に大事な力であり、また素晴らしい人間として評価され、多くの人から愛されるために絶対に必要な力なのです。

「いつもお客さんに快適な気分になってもらいたくてオフィスをすみずみまで掃除する」

「今日会った人に感謝の気持ちを伝えるため、香りのいいハガキに手書きでしたためて、お礼状を出す」

「今夜忙しい時間をやりくりしてやって来る友人のために、地元のおいしいものを食べてもらえるお店を予約する」

「大切な相手に喜んでもらいたくて、サプライズの誕生日パーティーを開催する」

こうしたことは、決して売上げを伸ばすためのハウツーではなく、お客様に喜んでもらいたい、喜んでもらうのがうれしいという気持ちから生まれてくるものです。

ところが、この「他喜力」を100%使い切って毎日仕事をしています、と自信を持って言える経営者やビジネスマンが、果たして今どれくらいいるでしょうか?

お客様、お取引先、上司、部下、仲間……、あなたは大切な人を喜ばせていますか?残念ながら、100%本気でまわりを喜ばせている人はほとんどいないと思います。

人は「自分を喜ばすこと(自喜)」に目がいって、「他喜」と真摯に向き合うことを忘れてしまいがちです。

そして、「他喜力」を100%使い切って毎日仕事をし、大成功を収めつつある人ほど、決して「YES」とは言いません。

なぜなら、どんなにやり切っても「他喜」には限界がないことを、彼らは知っているからです。

喜びは自喜と他喜の2つに大きく区別することができる

私たちの脳が感じる喜びを観察すると、喜びは2つに区別できることがわかります。

その2つとは、自分自身を喜ばせる「自喜」と自分以外を喜ばせる「他喜」です。

まず、「自喜」から解説していきましょう。

「自喜」は、さらに大きく2つに分けることができます。1つは「自分以外の人に喜ばせてもらう喜び」、もう1つは「自分を喜ばせる喜び」です。

例えば「欲しいプレゼントを買ってもらった」「仕事を手伝ってもらえた」など、人から何かをしてもらえたときはうれしいですよね。これが前者の、自分以外の人が自分に対して与えてくれる喜びです。

一方、「大会で優勝してうれしかった」「第一志望に合格できてうれしかった」「会社が成功してお金持ちになれてうれしかった」などは、自分を喜ばせる喜びです。

けれども「自喜」というのは、自我の欲求を満たす行為に過ぎません。人間というのは、自我の欲求が満たされ続けると飽きるのです。「もうこれでいいや」となってしまう。つまり、ある程度のところで立ち止まってしまう「限界のある幸せ」です。

次に「他喜」について考えてみましょう。

私はこれまでに多くの一流経営者に会ってきましたが、その方々に共通しているのは、みな一様に「マザコン」であることです。

「えっ、マザコンですか?」と思う読者もいるでしょうが、実はこのマザコンこそが「他喜」の好例です。

母親が、お腹を痛めて自分を生んでくれたからこそ、今の自分がある。「その母親に感謝したい」「母親が喜ぶ顔を見たい」「母のために何ができるだろうか?」「自分が何を頑張れば母は喜んでくれるだろうか?」……とあれこれ思いを巡らせながら毎日を生きているわけです。

母親を喜ばすのに「これでいい。これで十分」という限界など存在しません。母親に喜んでもらうためのおもてなしを、母親以外の多くの人たちにもしていく。それが、「他喜」なのです。

自分のことばかり考えるのではなく、生んでくれた母親に本気で感謝し、真剣に恩返しを考えれば、やらなくてはならないことはたくさんあるはずです。

それがモチベーションとなり、夢となるのです。

ですから、「自喜」とは違い、「他喜」には限界がありません。「あの人を喜ばせることができた。あの人にもっと喜んでもらおう」と、いつでも自分に問いかけて行動することで、脳は強化されていきます。

また、「あの人を喜ばせることができた。次はあの人も喜ばせたい」と、より多くの喜びを与えることもできます。「自喜」だけを追求すれば歩みが止まってしまいますが、こちらにはゴールがないのです。

「他喜」も、「自喜」同様、2つに大別できます。

1つは「他人を喜ばせて感謝される喜び」、もう1つは「他人を喜ばせて、その姿を見てただ『うれしい』と実感する喜び」です。

前者は「仕事を手伝ったら『ありがとう』と言われた」「電車で席を譲ったら『ありがとう』と感謝された」といった具合です。

人から「ありがとう」と言われる喜びは、非常に大きなものです。「ありがとう」というひと言を聞きたい──その思いがあれば、「逆境」を乗り越えることも、「成功」のその先に行くこともできます。それほど強いものなのです。

ただ、「他人を喜ばせて感謝される喜び」には、弱点があります。それは「感謝の量が足りないと不満を感じるようになる」という点です。

例えば、「あの人に喜んでもらいたくてこれほど一生懸命準備したのに、自分が想像していたほど感謝されなかった」と思うと、気分が沈んでしまうのです。

つまり、「他喜」ではあるけれども、自分へのリターンを期待しているというところが「自喜」に近いのです。

実際、「なんだよ。もっと喜べよ、もっと感謝しろよ」と不満を感じているとしたら、それは「自喜」に類似しています。

「自分が相手にしてあげたことに、相手が喜ぶべきだ」という一方思考で物事を見ると、どうしても自己中心的になってしまうのです。

これに対して、「他人を喜ばせて、その姿を見てただ『うれしい』と実感する喜び」はどうでしょうか?「自分の提供した商品・サービスでお客さんがこんなに喜んでくださっている。本当に良かった」「自分が企画したイベントでみんながこんなに笑顔になっている。ああ、良かった」……など、自分への見返りを求めずに「ああ、こんなに喜んでくださった。良かった」と思える状態です。

「無上意」という仏教用語があります。「これ以上ない行為」という意味の言葉ですが、見返りを求めずに自分以外の人間の喜びを追求することは、まさに無上意だと言えるでしょう。

ビジネスNo.1理論
西田一見(Hatsumi Nishida)
メンタルトレーナー&目標達成ナビゲーター。株式会社サンリ代表取締役社長。サンリ能力開発研究所にて大脳生理学と心理学に基づく科学的なメンタルトレーニングの研究をはじめ、脳の機能にアプローチする画期的な潜在能力開発プログラム「SBT(スーパーブレイントレーニング)理論」を指導。さまざまな心理分析データから夢・目標達成をサポートする「目標達成ナビゲーター」として、講演・講習などですでに数百万人もの指導実績を持つ。

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