2018年の日経平均株価は年間では7年ぶりに下落。12年末から始まった「アベノミクス相場」では初の下落となった。米中貿易摩擦をはじめ、依然として世界経済の不透明感が漂うなか、2019年はどうなるのだろうか?
新年特集「2019年にお金で泣く人、笑う人」では、全7回にわたり、相場見通しや個人の所得に関わる税制改正動向、不動産市場見通し、新しい投資のカタチなどをお届けしていく。第5回では、さくら事務所の会長で不動産コンサルタントの長嶋修氏に2019年の不動産見通しを語って頂いた。(聞き手:ZUU online編集部)※本インタビューは2018年12月14日に実施されました
目次
2018年の不動産市場を総括……「3極化」が加速した1年
──まずは、2018年の国内不動産市場の振り返りからお願いします。
2018年を総括すると、相変わらず不動産投資、購入の意欲が旺盛な1年だったと言えるでしょう。
2013年からのアベノミクス相場で株価が右肩上がりで上昇を続けてきたように、不動産価格、特に都心3区の中古マンション価格も上昇を続けてきましたが、2017年にはやや頭打ち感が意識されてきました。そこにきて、2017年末〜2018年初頭にかぼちゃの馬車事件が起こりました。
不動産関係者の間では、銀行が融資を引き締め、不動産市場が大きく冷え込むことが懸念されましたが、蓋を開けると、物件価格の下落はわずかに留まりました。もちろん、スルガ銀行は融資を引き締めましたが、他行が思い切り融資を引き締める状況にはならず、大きな影響には至りませんでした。
このような振り返りをした上で2018年を振り返ると、不動産市場では「3極化」が加速しました。都心の超一等地や郊外・地方の駅前、駅近といった価格が上昇、維持するエリア、なだらかに下落するエリア、底なしに価格が下落していく廃墟のようなエリアの3つに分かれるイメージです。
――3極化の加速にはどのような要素が影響しているのでしょうか?
ひとつの特徴として、居住者が求める駅からの距離が非常に短くなっています。過去5年間、都心7区(中央、千代田、港、新宿、渋谷、目黒、品川)+文京区において、駅から徒歩1分離れるごとに中古マンションの成約単価の下落率が大きくなりました。たとえば2013年には、1平米8000円だった数値が、2018年5月には1平米1万8000円になっています。
駅前や駅近は非常に強い需要があり、いまだ上昇を続けているエリアがあるその一方、駅からの距離が遠いと郊外や地方はもちろん、都心部でさえも土地価格が下落しています。
――駅からの距離がより求められるようになったのは、どのような背景が考えられますか?
ひとつは30代以下の若い世代の自動車保有率が低下している点です。基本的に徒歩圏内で生活ができる環境を求めるようになりました。さらには、共働き世帯の割合が年々増加傾向にあり、利便性においても重視されています。共働きで小さなお子さんがいる家庭だと、クルマで保育園まで送り届けて、家にクルマを戻し、そこからまた徒歩で駅に向かうのは時間的に難しいものがあります。
もうひとつは、単身の若い方も、駅からの距離を求める傾向が強くなっている点が挙げられます。専有面積が10平米にも満たない、トイレとカウンターキッチンと寝るスペースだけといった家賃6万円〜7万円の物件が割と人気を集めています。これは例ですが、北千住駅から徒歩10分で20平米7万円の物件よりも、渋谷駅から徒歩5分で9平米7万円の物件を選ぶ傾向が強く見られるようになりました。
料理もしない、テレビも普段見ない、家に人を招くこともありませんから、「寝に帰るだけ」の場所としてのニーズが高まっているのではないでしょうか。居住快適性よりも、時間を大事にする人が増えてきているのが印象的です。この傾向は今後も続くでしょう。