画像3
(画像=『みんなの黄ちゃん』はアパートの一室にある)

自宅に訪問したかのようなドキドキ感

『みんなの黄ちゃん』があるのは、天神駅から歩いて15分ほど。最寄りの薬院大通り駅からも5分ほどで訪れることができるが、通行量が多い大通りからは少し離れる。さらに、奥まったアパートの一室にあるため、外からは店内の様子をうかがうことができない。初めて扉を開けるときは、まるで自宅に訪問したかのようなドキドキ感がある。

「本当は路面店が良かったんですけど、なかなか良い物件がなくて。物件探しで悩んでいるときに、アパート全室をテナントにしたいという物件を見つけて、ここに決めました。私が最初の入居者でしたが、その後、私以外にも飲食店やイラストレーターの方のアトリエ兼ショップができたりして。にぎやかになってきたとはいえ、やっぱり分かりにくいですよね(笑)」

夜が更けると常連客でにぎやかに

店がオープンしたばかりの早い時間は人もまばらだが、夜が更けるにつれ、仕事終わりに一息つきたいおひとりさま、天神や中洲などの繁華街ですでにお酒が入ったサラリーマンなどでにぎわっていく。また、メインで扱う自然派ワインを求めて、わざわざ県外から訪れる人も。カウンターの黄さんを中心に、見知らぬ客同士が盛り上がることも少なくない。

「店に来るのは常連のお客さんがほとんどですけど、常連さんが一緒に新しいお客さんを連れてきてくれることもあるし、観光のお客さんが来てくれることもあります。観光客や初来店の方は、ほかのお店の人気メニューがあると喜ばれますね。『あ、あの店のアレがある』って」

過去には、大名にあるビストロ『Yorgo』やワインカフェ『クロマニヨン』などのメニューを提供してきた。現在、店で味わえるのは早良区にある人気フレンチ店『コキンヌ』のテリーヌ。取材当日は、そこに黄さんに頼んで選んでもらった琥珀色が印象的な北イタリアの白ワインを合わせていただいた。

画像4
(画像=オープン前の店内。夜が更けると大勢の客でにぎわう)

客からも同業者からも愛されるワケ

つながりのある店舗にメニュー提供を受けながら、自身は得意のサービスとこだわりの酒で客をもてなす。一風変わったこの営業スタイルについて、黄さんはこのように語っている。

「飲食の仕事の中でも、私はサービスが好き。ここでは他店のメニューを提供していますが、それ以外に食べられるものといったら、おつまみなどの軽食が中心です。だから、おなかが空いている人は、デリバリーを頼んでもらってもいいんです。その代わり、会話をしながらその人が飲みたいと思うお酒を出すのが私の仕事です」

自身の得意分野を生かしながら、足りない部分を外の力を借りながらうまく補っていく。「何か売れるものを」と看板メニュー作りに躍起になるのではなく、他店とのつながりや人脈を生かしてうまくその部分を埋めているのが黄さん流のやり方だ。

「よく繁盛しているねって言われるけれど、そんな実感もなくって……」

取材の最後に、カウンターの中でそう首をかしげる黄さん。黄さんならではのゆるりとした雰囲気と「飲食が好き」という思いが、お客さんはもちろん、同業者からも愛される理由の秘密かもしれない。(提供:Foodist Media

『酒場 みんなの黄ちゃん』
住所/福岡県福岡市中央区警固1-3-6 警固フラット101
電話番号/なし
営業時間/18:30~24:00(日により変動あり)
定休日/日曜、不定休

執筆者:戸田千文