APUの特徴の1つは、意思決定が早いこと
立命館学園(立命館大学、立命館アジア太平洋大学、4つの附属中学校・高等学校、小学校を含めた総合学園。いわば持株会社です)では、1980年代から「教職協働」という表現を使っていますが、その意味するところは職員の立場からも教育現場の改革・改善に取り組むことが可能だということです。特にAPUでは、新しい大学の形を創っていこうという意識が強く働いています。
たとえば、日本語と英語による2言語の教育システムやカリキュラム、入学時から進路を意識したキャリア形成プログラムなどの教育課程の具体化は、教員と職員の双方が知恵を出し合って決めています。
APUの村上健(事務局長)は、「APUは物事を決めるプロセスにおいて職員の関われる範囲が広く、他の大学に比べて、意思決定が早い」と感じています。
「たとえば、海外の学生募集で出張に行くようなとき、旧態依然とした大学ですと、承認を得るまでに時間がかかります。
下位者からの決裁依頼が上位者に提出され、当該上位者が決裁したあと、さらに上位の決裁者の決裁を受け、さらに上位の決裁者に回り……と、多段階の決裁が必要だからです。けれどAPUは、『1週間後にカンボジアに行く』という案件も課長の判断で基本的にOKですから、スピード感や機動力がすごくあります。職員が東アジアだけでなく、南アジア・アフリカ・中南米にまで学生募集に出かけていき、ネットワークを創っています。
一般的に、大学という場所は議論が多く、『会議をいくつもやる』という仕組みができてしまっています。けれど、APUはシンプルです。会議の階層が少なく、部署ごとの裁量権を明確にしてあるので、物事を早く決定することが可能です。
たとえば、教学の問題であれば教学の部署で決めていき、入学に関することは入学の課や部で決めています。APUは、日本の大学の中ではグローバル化の先陣を切っているため、参考にできる前例があまりありません。したがって、課題が次から次に出てくるため、部署の裁量権を強くしていかないと迅速に対応できないわけです。
しかし、すべての会議で効率やスピードを重視しているわけではありません。教育改革などの議論をするときは、ポンポンポンと決めるのではなくて、丁寧に決めていくことが必要です。ただ、ある程度方向性が固まり、仕組みに移していく段階になってからの意思決定は、早いと思います。
APUの学長は、これまでにも特徴的な人が多かったのですが、出口さんはビジネスの世界にいらしたので、なかでも、物事の決め方のスピード感が圧倒的に早いです。APUは以前から他の大学よりも意思決定のスピードは早いほうですが、それでも出口さんの意思決定の早さには驚かされました。ズバッと本質を言われます」(村上健)