「お金を借りる=悪いこと」とか、「できれば借金はしないほうがいい」という考えの人は多いでしょう。たしかに、計画性も返せる見込みもない借金はよくありません。しかし、家を買うときに住宅ローンを利用するのは一般的ですし、企業や投資家はお金を借りて投資や事業を行うので、必ずしも借金が悪いとは言えないはずです。
借金の「良い」「悪い」を判断する基準とは?
個人がお金を借りるケースとしては、住宅ローンや自動車ローンなどが多いですが、これらに悪いイメージはないでしょう。
一般的に、住宅は一括で購入するのが難しいですし、自動車はなくては生活できない地域もあるでしょう。このような借金は、「生活のために必要」であり、また「資産になる(現金化できる)」借金と言えます。
一方で、ギャンブルや浪費のための借金は「悪い借金」といえます。そもそもスリルや生活に必要のないものを得るために借りるお金だからです。
借りた額以上の価値が得られるなど前向きな借金もあれば、その場しのぎで計画性のない後ろ向きな借金もあります。借金をする理由や目的によって、「良い借金」か「悪い借金」かが決まるのです。
自己投資のための借金もある
このほかに、お金を借りても悪くないと考えられるのはどんなものでしょうか。たとえば将来の自分や家族が利益を得られること、具体的には教育ローンが考えられます。
親が「子供の教育費が足りない」という場合や、社会人が「スキルアップをしたい」という場合に学費に充てる教育ローンを借りることで、学歴や資格、知識を得ることができます。これは、子供や自分の将来のためにお金を借りる、一種の投資といえるでしょう。
目的は良くても返せなくなる借金はダメ
たとえ必要だとしても、返済できなくなるような借金は「良い借金」とはいえません。
お金を借りるときには金融機関の審査があり、返済能力の範囲内のお金を貸してくれるはずです。しかし人生は予定通りにいかないもの。働けなくなったり急にお金が必要になったりすることもあり、「返せる予定が返せなくなる」こともあり得ます。
日本では古くから「お金を返せなくなること」は何物にも代えがたい恥と考えられていたようです。
国際連盟事務次長も務め、かつて日本銀行券(五千円券)の肖像にもなった教育者・新渡戸稲造氏は著書『武士道』で、武士が借金をした際の借用書に「恩借の金子(きんす)御返済相怠り候節は衆人の前にてお笑いなされ候とも不苦候(くるしからず)」と書かれていたと紹介しています(カッコ内、筆者注)。
「借りたお金を返せなければ、囚人の前で笑われても結構です」という意味です。武士は何よりも笑われることを嫌っていたので、笑われることは耐えがたい恥だったわけです。
そもそも、無理な借り入れはするべきではありません。奨学金が返済できない若者が増えて問題になっていますが、こうした実態を踏まえ、改めてお金を借りることの意味を考える必要があります。
必要なものを手に入れるため、スキルを身につけるため、資産を築くため、事業を行うため、といった前向きな借金をしたいものです。「借金はすべて悪いもの」という偏見を捨て、良い借金か悪い借金なのかをしっかりと見極めるようにしましょう。(提供=auじぶん銀行)
執筆者:福島佳奈美(ファイナンシャルプランナー)
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