近年、世界中で男女の所得格差に焦点が当たっているが、富裕層間でも男女格差が存在する。女性ビリオネアの割合が極めて低いという状況は、過去数年変化していない。

国際資産情報会社、ウェルスX(Wealth-X)が発表している富裕層レポート「ウェルスXビリオネア・センサス2019年版」から、ビリオネアに占める女性の比率、国際比較などを紹介する。

女性の活躍の場が徐々に広がり、ビジネスや資産運用に関心を持つ女性増加傾向にあることから、今後、女性の富裕層は増えていくものと期待される。

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世界のビリオネアに占める女性の割合

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(画像=GaudiLab / shutterstock.com, ZUU online編集部)

ビリオネアとは資産総額10億ドル(約1394億 5248万円)以上の人を示す。「ウェルスXビリオネア・センサス2019年版」によると、世界のビリオネア人口は2604人で、このうち88.3%を男性が占め、女性は11.7%にとどまっている。

3年前と比較しても、女性の比率は横ばいとなっている。「ウェルスXビリオネア・センサス2016年版」では、全ビリオネアのうち男性が88.1%、女性は11.9%だった。

こうした格差は、「女性の社会進出の遅れ」に起因するものとの見方が強い。

実際、男性ビリオネアの61.1%が自ら富を築いたセルフメイドであるのに対し、女性のセルフメイドは16%しかいない。女性ビリオネアの53.7%は相続による富を保有しているが、家族から財産を相続した男性ビリオネアはわずか7.9%にとどまる。

財産や事業を相続・継承し、そこから自分でも富を築いたビリオネアは男女ともに約30%と同じくらいの割合だ。

ただ、2012年と比較して、女性ビリオネアが9%増えている事実などを考慮すると、ゆっくりとではあるが女性ビリオネアは増加傾向にはある。またフォーブス誌のデータによると、女性ビリオネアは2010年の109人から2019年の244人と、2倍以上に増えている。

女性ビリオネアトップ10中、9人は「相続・継承兼セルフメイド型」

フォーブス誌が2019年2月のデータに基づいて発表したビリオネア・ランキングによると、世界のビリオネア2153人のうち、女性は244人で全体の11.3%となっている。また、女性ビリオネア・ランキングのトップ10をみると、相続・継承兼セルフメイド型が圧倒的に多い。

世界でもっとも裕福な女性は、資産総額493億ドル(約5.4兆円)という、世界最大の化粧品メーカー、ロレアル創設者の孫娘フランソワーズ・ベタンクール・メイヤー氏(仏)。2位は世界最大のスーパーマーケットチェーン、ウォルマート創業者の両親をもつアリス・ウォルトン氏(米)、3位は米大手菓子メーカー、マースの共同経営者ジャクリーン・マーズ氏(米)。

中国最大の不動産デベロッパー、碧桂園集団創業者の娘、楊惠妍氏(中)やBMWの大株主、ズザンネ・クラッテン氏(独)、故スティーブ・ジョブス氏の夫人、ローレン・パウエル氏(米)、米大手投資会社フィデリティ・インベストメンツCEOのアビゲイル・ジョンソン氏(米)などが続くが、9位のジーナ・ラインハート氏をのぞいて、いずれも家族が成功させた事業を引き継ぎ、さらに富を増やした女性ビリオネアばかりだ。

女性ビリオネアの割合が高い国、ドイツ

興味深いのは、女性ビリオネアの割合が国によって異なる点だ。ビリオネア人口がもっとも多い3カ国だけでも、1位の米国は12%、2位の中国は8%であるのに対し、3位のドイツは19.6%とほぼ5人に1人が女性である。