要旨
- トランプ大統領による5月5日の対中関税率の引き上げ発表によって、合意間近とみられていた米中通商交渉が難航していることが示された。同大統領は米中首脳会談が実現しない場合に対中関税の対象を輸入品全額に拡大する可能性を示唆しており、実体経済への影響が懸念されている。
- 足元の経済指標は生産や企業景況感が悪化している一方、消費者センチメントや消費は底堅い状況が続いており、まちまちの結果となっている。
- 金融市場はインフレが政策目標を下回っていることに加え、通商政策に伴う景気減速懸念から、年内複数回の利下げを既に織り込んでいる。このため、FRBは政策目標の達成に加え、金融市場にも配慮した、難しい金融政策運営を迫られている。
- 米中貿易摩擦をはじめ、理不尽とも言える圧力によって合意を引き出そうとするトランプ大統領の政策チキンゲームに米経済は無理やり付き合わされおり、非常に不安定な状況と言える。
- 当研究所は、現時点では関税強化策が回避されることや資本市場の不安定な状況が長期化しない前提で、19年の成長率を+2.5%、20年を+1.9%と予想しており、予測期間において政策金利の据え置きを予想している。
- ただし、来週のFOMC会合や米中首脳会談など見通しに大きな影響を与えるイベントが目白押しとなっており、経済や金融政策見通しに対する不透明感は強い。