2019年6月米国に利下げ観測が浮上しています。なぜなら好調だった米国景気にリセッション(景気後退)の予兆が見えているからです。過去のパターンで見ると、好景気後の利下げはリセッションの合図である可能性があります。実際のところはどうなのでしょうか。

米利下げ観測が浮上

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(画像=Lee Nanjoo/Shutterstock.com)

リセッションとなれば、裏返しで浮上するのが利下げ観測です。景気動向を左右する雇用統計の数値が、非農業部門雇用者数で2019年4月の約22万4,000人から5月は約7万5,000人と大幅に後退しています。2月(約5万6,000人)の数値悪化は悪天候によるものでしたが、今回は季節的要因ではないため、「景気減速懸念を示すもの」という見方があるのです。

利下げの確率はどの程度に考えればよいのでしょうか。米国の政策金利を決定するのはFOMC(連邦公開市場委員会)です。CMEグループのフェドウォッチプログラム(フェデラルファンド金利の誘導目標が変更される可能性を確率で表した数値)の予測によると、7月のFOMCで50ベーシスポイント(政策金利で0.5%)の利下げが行われる確率は2019年6月25日時点で36%と、約3分の1と見ています。

しかし同じ予測で25ベーシスポイント(同0.25%)の場合は64%となっており、利幅を抑えて利下げに踏み切る可能性は十分考えられます。

2000年以降の米国市場を振り返る

2000年以降の米国市場を振り返りながら、過去のパターンと比較してみましょう。2000年以降、米国は2回の大きなリセッションを経験しています。2001年に起きたのが「ITバブルの崩壊」と「9.11同時多発テロ」によるリセッションです。同年4~11月の8ヵ月間にわたって景気が後退しましたが、インパクトの大きさの割にはリセッションの期間は短かったといえます。

そして2007年に発生した「リーマンショック」は米国のみならず、世界経済に壊滅的な打撃を与えました。こちらは2001年よりもずっと深刻で、景気後退期は2007年12~2009年6月までの18ヵ月間に及びます。この期間は第2次世界大戦後で最長です。(2019年7月時点)これをニューヨークダウ工業株30種平均で見ると、2001年にはリセッション直前の3月に1万米ドルの大台を割り込み、同時多発テロが起きた9月には8,200米ドル台まで下落しました。

一方、景気後退が長期にわたった後者のケースでは、景気後退前は1万3,000米ドル台だった株価が、2009年3月には6,500米ドル台までおよそ半値に沈んでいます。これを見てわかるのは、株価は景気後退入り直後に安値を付けるわけではなく、ある程度のタイムラグを経て下落のピークを打つことです。

振り返りからの示唆、今の相場と比較する

2019年現在の相場はどうでしょうか。過去の相場と大きく異なるのは、米中貿易摩擦という2国間の不透明要因があることです。米国のみで解決できる問題ではないだけに深刻といえます。それでもリセッションまで至っていないのは、米国優位の情勢からニューヨーク株式市場が高値圏にあるためです。一方の中国の市場には影響が出ています。

中国人民元は2019年5月に対米ドルで急落、取引の基準値が1年4ヵ月ぶりの安値となる1米ドル6.8365元に設定、上海株式市場もさえない展開が続いています。中国銀行の関係者は「元安は対米貿易摩擦の影響を和らげるために有効」と発言し、トランプ大統領も「元安が貿易赤字の原因だ」と批判しているだけに、元安が米国のリセッションの一因になる可能性は否定できないでしょう。

ニューヨーク株式市場が高値圏にあるだけに、本当に好景気が終焉したのかは断定できない情勢です。ただし株式市場の好調も「米中貿易摩擦はいずれ解決されるはず」という楽観論が背景にあるだけに、米中の対立がさらに深まれば、実体経済の悪化からリセッションに向かう可能性は十分あるでしょう。利下げが実施されれば、円高要因から日本経済にも影響を及ぼす可能性があります。米中貿易摩擦は日本にとって、決して対岸の火事でないことは確かなようです。(提供:YANUSY

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