要旨

ジョンソン首相,EU離脱
(画像=PIXTA)
  1. ジョンソン首相の誕生は、必ずしも「合意なき離脱」への道ではないが、政策の予見可能性が一段と低下し、ただでさえ迷走し続けてきたEU離脱のプロセスは、さらに混乱しかねない。しかし、国民投票によって引き起こされた問題の収拾には、EUに強硬姿勢で向き合う(と期待される)首相が舵を取るプロセスが必要なのだろう。
  2. 「合意なき離脱」はジョンソン首相のプランCであるにも関わらず、可能性が高いと見られるのは、(1)「より良い合意に基づく離脱」というプランAも、「離脱と新たなFTAを現状維持協定でつなぐ」プランBも、EUが否定している上に、10月末までの短期間での実現が不可能なこと、(2)「合意なき離脱」が議会に阻止されないよう休会にする選択肢も排除していないからだ。
  3. 10月31日に「合意なき離脱」となる可能性は「合意あり離脱」よりも高いが、政権基盤の弱さにより抑えられるため、5割を大きく超えるメイン・シナリオではないと見ている。すでに、保守党内、議会では「合意なき離脱」阻止の動きが出始めている。他の手段が尽きれば、野党と与党からの造反派の賛成による不信任案の成立、総選挙という流れになるだろう。ジョンソン首相が、より柔軟な姿勢に転換することもあり得る。
  4. そもそも、10月31日が「合意あり離脱」にせよ「合意なき離脱」にせよ、総選挙のための「離脱延期」になるにせよ、先行き不透感は解消しない。「合意なき離脱」も「ブレグジットの終着点」ではない。離脱延期の末に再国民投票を経て、離脱を撤回しても、英国内に深い亀裂が残り、失われた信用を取り戻すことはできない。
ジョンソン首相,EU離脱
(画像=ニッセイ基礎研究所)