「在宅時の割り込み」に注意

ただ、在宅勤務なら割り込みを完全に防げるかというと、必ずしもそうではありません。実は、思わぬ邪魔者が潜んでいます。

その代表格が、SNSに付属するチャットツール、メッセージツール等です。集中して業務に取り組んでいるとき、スマートフォンに届いた通知がつい気になってしまい、手を止めて返信しないと落ち着かない気持ちになってしまうのです。

これでは、オフィス勤務の「割り込み」となんら変わりません。

そこで、在宅時でも特に集中する場面では、スマホへの通知をオフにする、あるいは電源を切っておく。さらにメールやSNS、チャットツールも閉じておく。こうしたルールを決めておくことが不可欠です。

在宅勤務にはリテラシーが求められる

当社ではこれまで約300社に対して、在宅勤務導入のサポートをして参りました。その経験からわかったことは、会社と同じように自宅で仕事をすればいい、という単純なものではないということです。

ここまでの話と矛盾するようですが、在宅になった途端に、逆に集中力が途切れ、効率が落ちるという人もいます。周囲に人がいない孤独や寂しさから仕事の調子が上がらないという人もいますし、文章での業務報告が苦手で意思が伝わりにくいという人も。中には連絡がとれず、音信不通になる人もいます。

家で仕事をするのにも、それに必要なリテラシーがあるのです。

こうしたリテラシーの有無を判断するために、当社では、秘書検定の在宅勤務版とも言える「在宅秘書検定」という仕組みを導入し、合格ラインに到達した人に在宅勤務で働く環境を提供するようにしてきました。

在宅勤務・成功のコツ
在宅秘書検定では6つの能力が問われる(画像=THE21オンライン)

在宅勤務がオフィス勤務と最も異なるのは、仕事の状況が上司や周囲には見えないということです。

本当は提案書作成が順調に進んでいたとしても、順調であることを上司に伝えない限り、上司は状況を知ることができずに、不安になるものです。

だからこそ、仕事を一緒に進めている方々が心配にならないように、特に周囲の方々が心配するような次の3点に関しては、意図的に自ら積極的にコミュニケーションを行っていく能力が求められます。

1)「お願いした仕事は、いつやってくれるのだろうか?」(計画)

2)「予定してくれた通り、今、やってくれているのだろうか?」(状況)

3)「仕事の結果は、どうだったのだろうか?」(結果)

恥ずかしながら、こうした観点に目を向けていなかった頃は、スタッフ同士の関係もぎくしゃくし、当社の離職率は50%を越えていました。ところが、在宅勤務に必要なリテラシーを明確にし、仕組みを固めた後には、離職率が5%以下に低減したのです。

仕組みを整えることで、在宅勤務は生産性を高めるとともに、社員の満足度を上げる強力な武器となると確信しています。

中山史貴(なかやま・ふみき)
一般社団法人シェア・ブレイン・ビジネス・スクール代表理事
本名 中山匡 栃木県生まれ。東京大学大学院工学系研究科システム量子工学専攻修士課程修了。経営コンサルティング会社に入社後、31歳で独立。「広がる事業には、美しい方程式が秘められている」という理念のもと、ビジネスモデルのロードマップを描けるコンサルタント養成にも力を入れ「ビジネスモデル・デザイナー認定講座」をスタート。また、2009年より、一般社団法人一般社団法人シェア・ブレイン・ビジネスを設立。結婚・出産をきっかけに、フルタイム勤務を断念した女性を在宅勤務スタイルで起業家とつなぐ「在宅秘書サービス」や「シェア秘書サービス」を立ち上げる。現在、150社以上に導入。1,500名以上の秘書が登録。(『THE21オンライン』2019年07月17日 公開)

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