要旨

改正相続法,銀行預金
(画像=PIXTA)

相続が発生すると被相続人の預貯金は凍結され、遺産分割協議によって預貯金の帰属が定まるまで相続人はお金を引き出すことができないのが原則である。一方で、葬式代など即座に必要なお金が必要となることもあり、改正相続法では遺産分割前の預貯金引き出しについて二つの制度を用意している。

一つ目は、相続人が単独で、自分の相続分に三分の一を乗じた額を引き出せるとするものである。ただし、銀行実務では被相続人の出生から死亡までの戸籍を必要書類とするなど手間がかかるという難点がある。

二つ目は、遺産分割の審判または調停手続きが申し立てられているときに、家庭裁判所から預貯金債権について仮分割の仮処分出してもらうことで、預金を引き出すことができるという制度がある。しかし、これも家庭裁判所での手続きとなるため、手間がかかる。

別の方法として、預貯金を特定の相続人に相続させる遺言を書いておくことが考えられるが、銀行実務ではやはり被相続人の出生からの戸籍を求めるなど簡易な手続きにはなっていないようである。

信託銀行や一部地銀の遺言代用信託を利用することで、被相続人死亡により、事前に指定した特定相続人に信託財産を引き継がせるということが可能となり、また、金銭引き出しのための必要書類も多くはなく、検討の余地がある。