人間の集中力は43歳前後が最も高い!

これは、いったいなぜでしょうか。決して、「成人したから」ではありません。

米国での研究によると、人間の集中力は43歳前後が最も高いそうです。高齢者と若年者を比べても、集中する能力に差はないことがわかっています。

大人になって集中力が落ちた気がするのは、集中する能力が低下したせいではなく、社会的要請のためです。

大人は「したいこと」よりも「しなくてはならないこと」に囲まれています。しかも、「しなくてはならないこと」はたくさん同時進行していて、マルチタスクで処理することが求められます。これがフローを遠ざける原因となっているのです。

人間の大脳は二つ以上の複雑な課題を並列処理できないことが、最近の研究でわかっています。一見、器用にマルチタスクをこなしているような人も、実は、1度には一つのタスクだけに集中していて、集中の対象を頻繁に切り替えているのです。

切り替えの回数が多いほど、全体の集中力は落ちます。なぜなら、あるタスクに着手してから深い集中に入るまでに、平均23分の時間を要するからです。切り替えのたびに集中が途切れるのは、脳の働かせ方として、明らかに非効率です。

今、マルチタスクが求められている背景には、言うまでもなく、デジタルツールの浸透があります。パソコン1台でいくつもの仕事を同時並行できるのは、便利なようでいて、一つのことに集中するには不向きです。ひっきりなしに入ってくるメールや通知も、集中力を削ぎます。デジタルデバイスの影響で、現代人の集中力は確実に低下していると言えるでしょう。

「時間の予約」が勉強の密度を高める

では、集中力を高めるためにはどうすればいいのかと言えば、第一にすべきは、やはり「デジタルデトックス」です。

勉強に専念したいときは、パソコンのメールソフトを閉じ、スマホも着信がわからないようサイレントにして、画面が見えないよう裏返しましょう。

第二にすべきは、時間管理です。大事なのは、「集中を予約する」習慣をつけることです。

資格試験の勉強をするとき、多くの人は、「今日はこの単元まで」「これが理解できるまで」といった目標を設定して、その日の勉強に臨むでしょう。しかし、集中力を高めるうえで効果的なのは、「○時まで勉強する」とシンプルに時間を区切り、タイムプレッシャーをかけることです。

会社の会議で、「結論が出るまで」と決めて始めるよりも、「○時まで」と決めたほうが、ムダなく話が進んで、議論の質が高まるのと同じです。

集中力の持続時間には個人差がありますが、45分、90分など、学校の授業時間の長さをワンセットと考えて、スケジュールを組むのがいいようです。

「自発性」も、集中力を高める大きな要因です。

予防医学研究者の石川善樹氏は、ハーバード大学留学中に、教授から「うかつに仕事を始めてはいけない」と言われたそうです。何も考えず、とりあえず本やパソコンを開いてしまうのではなく、「今、自分は何に知的好奇心を抱いているのか」をきちんと意識してから開くべきだ、ということです。

「なんのために勉強するのか」を意識するというプロセスを経てから勉強を始めるか否かで、集中力は大きく変わります。「やらされ感」を持ちながら勉強するのではなく、自分が何をしたいのかを、自分自身に対して宣言することが、集中力のスイッチになるのです。