ツイッターやフェイスブック、インスタグラムといったSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)が幅広い世代に浸透していった結果、特定の対象に批判が集中する炎上騒ぎが日常茶飯事となっている。そして、企業がそのターゲットとなるケースも多く、対応が不適切だとさらに混乱は拡大し、世間の信頼を失うハメにもなりかねない。

不正などに関する内部告発はもとより、飲食メーカーにおける製品への異物混入や、従業員が業務中に不謹慎な動画を撮影してアップする“バイトテロ”など、その火種はあちこちに存在している。しかも、これらの情報を目にした人たちが次々とSNSで拡散するので、企業側は極めて迅速な対応が求められる。

いったい、どのような観点からどういった手を打っていけば、事態は沈静化へと向かっていくのだろか? 特集の第1回目では、言わば反面教師として最近の著名な事例をもとに検証してみよう。

今年最大の不祥事「吉本興業騒動」を徹底検証してみる

ビジネスパーソンの危機管理術
(画像=Brian A Jackson/shutterstock.com,ZUU online)

おそらく、2019年に発生した企業絡みの不祥事で最も注目され、その対応も酷かったケースとして多くの人たちが筆頭に挙げるのは吉本興業のケースだろう。所属芸人が同社を介さず、いわゆる“闇営業”で反社会的勢力のパーティーに招かれて謝礼を得ていたことが発覚し、その参加者たちが謹慎処分となった騒動だ。

だが、それだけではことが収まらないどころか、同社の経営陣まで巻き込んでの大波乱となったのは周知の通りだ。企業の不祥事対応コンサルティングを手掛けている落合武彦氏(仮名)は、本名を明らかにしないことを条件に、この騒動に関して本音の論評を行ってくれた。

日頃から揶揄されている薄給が根源にあるとの巷の見方はさておき、当事者たちが希望していた謝罪会見の開催について、吉本興行側が難色を示したことが第一の失敗だったという点では、落合氏の見解も他の専門家の間のコンセンサスと一致している。

その挙げ句、7月20日に謹慎中の宮迫博之氏と田村亮氏が独自に会見を開く結果を招いた。もしも吉本興行側が主導したものだったなら、謝罪に終始する内容となるはずだった。

しかし、同社が頑なに会見を阻止してきたことから、彼らの不満が鬱積し、衝撃の証言が飛び出すことになる。そう、吉本興業の岡本昭彦社長によるパワハラ疑惑で、宮迫氏と田村氏を含む4人の芸人に「おまえら、テープ(レコーダーを)回してないやろな」と念を押したうえで、「おまえら全員クビにする力がある」などとまくし立てたという。

非難囂々の吉本興業社長会見はむしろ成功だった!?