(本記事は、近藤珠實氏の著書『伝わる!電話、メール、ビジネス文書の仕事活用術』の中から一部を抜粋・編集しています)

文書
(画像=PIXTA)

情報を伝えるのが目的

どのような文書でも、ビジネスにおける文書の最大の目的は「読み手に情報を伝えること」です。小説やエッセイのように、面白さは目的ではありません。必要な情報を、わかりやすく伝えることが最大にして唯一の目的なのです。

では、必要な情報をわかりやすく伝えるためにはどうすればよいのでしょうか。

作成するときの心構え
情報を伝えることが第一
面白さが自己主張ではなく、情報を正確に読み手に伝えることがビジネス文書の目的。

読み手はどんな人々?
どのような情報が求められるかは、読み手によって変わる。どんな人たちに、どのように読まれるかを意識する。

主題と結論をはっきり書く
ビジネス文書でもっとも大切なことは、テーマと結論。この2つをはっきりさせる。

読み手のニーズを考える

まずは、何が必要な情報かを見極めなければいけません。そのためには、読み手のニーズを正確に把握する必要があります。

読み手がどのような人で、何を求めているかをあいまいにしたまま書き進めたレポートは、焦点がぼやけ、とてもわかりにくいものになります。

読み手はどのような人で、何についての情報を求めているのかを考えましょう。たとえば、現場から離れた管理職に向けて現場の改善点をまとめるならば、現場の雰囲気を伝える情報を盛り込まなければいけません。

読み手のニーズがわかれば、「何を書くべきか」がわかり、次の段階に移ることができます。

結論を明確に

ビジネス文書には、必ず結論が必要です。「つまり、何を言いたいのか」が明確ではない文書は、理解しづらくなってしまいます。

したがって、主題と、主題に対する結論をはっきりさせてから書き始めるようにしましょう。たとえば、主題が「A案とB案のどちらがよいか」で、結論が「A案を採用するべきだ」なら、その旨が明確に伝わる文章にしなければいけません。

逆に言うと、主題と結論がはっきりすれば、後は肉付けをするだけ、とも言えます。そして、ビジネス文書における肉付けとは、調査と分析です。

書き始める前に考えるべきこと
読み手
どのような人(役職や肩書き、年齢など)が読むのか?

文書の目的
そもそも何のために作られる文書か?
どんな場面で読まれるのか?

主題
何についての文書なのか?

結論
最終的に、何を読み手に伝えるのか?
伝わる!電話、メール、ビジネス文書の仕事活用術
(画像=伝わる!電話、メール、ビジネス文書の仕事活用術)

調査はスピードか、質か?

調査は、主題に関して、結論を導くために必要な情報を集める行為です。

A案とB案を天秤にかけるなら、A案とB案を採用した場合に予想される出来事を、十分に調べ上げなければいけません。

急ぎのレポートの場合ならば、集める情報の量を減らすしかありませんが、時間がとれるならば、情報量を増やしましょう。結論の説得力は、情報量によって左右されるからです。

結論を出すべき期日が決まっている場合は、スピードを優先すべきです。しかし情報源が怪しいものであってはレポートの価値そのものが低下するので、ごく少数の、質の高い情報源を探り当てるようにしてください。

時間が十分にとれる場合も、質の悪い情報を多く集めると、この後の作業である分析が混乱する恐れがあります。調査の段階でも主題を忘れずに、主題に沿った情報だけを集めるようにしましょう

スピードか質か
文書作成に取り掛かる前に、スピードと質のどちらを重視すべきかを考える。


扱うテーマがさほど緊急性が高くないなら質を重視しなければいけない。質とは、情報の豊富さ、まとめかたのわかりやすさ、そして分析のための視点の新しさだ。説得力があり、かつ非凡な結論が出せるかどうかが問題になる。

スピード
扱うテーマの緊急性が高いほどスピードが大切になる。スピードが重視される文書では、書き手の主観は要らない。情報の正確性と豊富さがポイントだ。
伝わる!電話、メール、ビジネス文書の仕事活用術
(画像=伝わる!電話、メール、ビジネス文書の仕事活用術)

情報を整理する分析

情報を集めただけでは、何を言いたいのかわからないレポートになります。情報を分析して徐々に結論に近づいていく過程を文章にまとめることで、読み手は、結論に説得力を感じるようになります。

ここでも大切なことは、主題を忘れないこと。分析は手段でしかありません。主題を忘れると、分析が目的にすり替わってしまうことがあるので注意してください。

結論は二度書いてもOK

情報を分析し終えれば、結論が導かれます。質の高い情報が十分にあり、分析の論理に問題がなければ、説得力がある結論が出ているはずです。

前に記したように、主題と結論はレポートでもっとも重要なものです。したがって、レポートの冒頭で主題と結論を先に示し、その後調査と分析を経て、再び結論を記す手法もあります。

二度結論を書くことになりますが、このほうがわかりやすいケースは少なくありません。とくに、込み入った主題についてまとめる場合は、先に結論が来た方が、その後の情報が頭に入りやすくなります

ビジネス文書のNG
不要な情報が多い
情報量の多さは大切だが、意味がない情報を盛り込んでも価値には繋がらない。どの情報に意味があるか精査するためには、主題が明確でなければいけない。

主題のぶれ
主題があやふやになってしまう場合。基本的なミスだが、実はとても多い。書いているうちに主要でない部分に熱中してしまい、本質がずれてしまうのだ。

主観的すぎる
報告書はもちろん、意見を通すための企画書でも、客観性が大事。情熱は大切だが、あくまで客観的に、エビデンスを大切にしよう。
伝わる!電話、メール、ビジネス文書の仕事活用術
(画像=伝わる!電話、メール、ビジネス文書の仕事活用術)

point

  • どんな文書も情報を読み手に伝えることが目的
  • 主題と結論を明確にすることが大事
  • 読み手のニーズをつねに意識する
伝わる!電話、メール、ビジネス文書の仕事活用術
近藤珠實(こんどうたまみ)
現代の社会生活にマッチした作法を提唱するマナーのエキスパート。東京神田生まれ。1975年、「現代作法研究会」を発足。
1977年、作法をより現代的にマッチしたものとするため、指導を受けていた國學院大學名誉教授の命名により、新作法「清紫会」を結成。同時に「清紫会」新・作法学院を開設し学院長に就任。以後、生徒を指導するかたわら、執筆、テレビ、講演、社員教育、学校教育等幅広く活動している。
プライベートでも仕事でもスグに役立つ、「日常マナー」のほか「ビジネスマナー」の人気講師として講座を定期開催。

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