世界の大都市では、高級住宅地はたいてい「ヒルズ」と呼ばれる「高台」にあります。ロサンゼルスのビバリーヒルズ、ボストンのビーコンヒルなどがその典型です。また、「六本木ヒルズ」のように、高級コンドも「ヒルズ」と命名されています。これは、富裕層が高いところが好きだというだけの理由からではありません。ローマ帝国以来の歴史も関係しているのです。

アメリカには「ヒルズ」が数多くある

富裕層,ヒルズ,高台に住む
(写真=Michael Urmann/Shutterstock.com)

「ヒルズ」が付く場所で、世界でもっとも有名なのは、ロサンゼルスのビバリーヒルズでしょう。アメリカでも有数の高級住宅地で、セレブも多く住み、ロサンゼルスに観光に行けば必ず訪れる場所となっています。ビバリーヒルズで、持ち家に住む世帯の収入の中央値は約13万ドルとされ、これはアメリカの都市のなかでもトップクラスです。

アメリカには何ヵ所も「ヒルズ」の付く高級住宅地があります。例えば、ボストンのビーコンヒル、カリフォルニア州バークレーのバークレーヒルズなどがそうです。

「ヒルズ」は丘や高台のことですから、ほとんどの場合、高級住宅地は丘や高台にあることになります。「ヒルズ」が付かなくても、丘や高台にある高級住宅地を挙げると、サンフランシスコのパシフィックハイツ、ニューヨークのブロンクスビルなどがあります。

日本では「山手」と「下町」の区別がある

高級住宅地が丘や高台にあるのは、ヨーロッパでもアジアでも同じです。パリならブローニュの森がある16区。ロンドンなら、最近ますます人気のノッティングヒル、プリムローズヒルなどが挙げられます。

アジアの都市のなかでもっとも多くの富裕層が高台に住んでいるのは、おそらく香港でしょう。香港島のビクトリアピークの山頂付近には、大富豪の豪邸が並んでいます。富裕層都市シンガポールも、高台のブキティマに高級住宅地があります。ここには、あの投資王のジム・ロジャーズが住んでいます。

日本も同じで、かつての城下町など多くの大都市には「山手」と「下町」があり、山手は富裕層が多く住む邸宅街となっています。横浜の山手や神戸の山手はその典型でしょう。また、都市近郊(とくに東京近郊)には、「ひばりヶ丘」「富士見ヶ丘」など、「丘」が付く住宅地があり、そこはみな高級住宅地というイメージがあります。

六本木ヒルズから生まれた「ヒルズ族」

「ヒルズ」と言えば、日本では「六本木ヒルズ」が有名です。単にヒルズだけで、六本木ヒルズを指すようにもなっています。六本木ヒルズの命名は、森ビルが以前に建てたアークヒルズが由来とされますが、ここはもともと高台でした。

六本木ヒルズができてから、「ヒルズ」と付く建物が増えました。また、「ヒルズ族」という言葉ができ、富裕層を指すようになったのですから、言葉の力は大きいといえます。

それではなぜ、富裕層は「ヒルズ」に居を構えるのでしょうか? これには、諸説があります。

江戸時代に大名屋敷が高台に集中した理由

日本の城下町は、領主などの上流層が城という高台に住み、町民などは城下の下町に住んでいたという歴史的な経緯があります。

東京の高級住宅地である白金台(しろかねだい)は高台の地域で、平安から室町時代のものとされる土塁が発見されており、長者屋敷を火災や外敵から守っていたといわれています。

江戸時代の大名屋敷の区分が確立されたのは、江戸を壊滅的に焼きつくした明暦の大火(明暦3[1657]年)です。その後、江戸幕府の防火対策の一環として、藩主が住む「上屋敷」は江戸城に最も近い場所に、災害時の予備邸である「中屋敷」は江戸城外堀の内側、物資の荷揚げや保管のための「下屋敷」は江戸の外縁部に多く配置されました。大名屋敷などの大きな建物は江戸城周縁部に移転し、町人地を拡大、広小路や火除け地などの防火地帯がつくられたのです。

古代ローマの時代から丘は高級住宅地

欧米の歴史をさかのぼると、もっと明確な理由があることが見えてきます。古代ローマ帝国は、「7つの丘」によって建国されたからです。

「ローマの七丘(しちきゅう)」(ローマの七つの丘)は、いまも有名です。古代の七丘と現代の七丘は違うとされますが、ローマはもともとテヴェレ川の辺りにあった七つの丘の集落が合体して建国されました。七つの丘とは、次のとおりです。

1)アヴェンティーノ
2)カンピドリオ
3)チェリオ
4)エスクイリーノ
5)パラティーノ
6)クイリナーレ
7)ヴィミナーレ

前4世紀、この七つの丘の周囲に「セルウィウスの城壁」が築かれ、この城壁に守られてローマは発展しました。ローマの支配層はみな、この七つの丘に住み、その一つアヴェンティーノの丘の北側につくられたフォロ・ロマーノ(ローマ人の広場:神殿、公会堂、議事堂などが集まった都市中枢)で政治が行われました。

アヴェンティーノの丘にある「サルヴェッロ公園」(ラツィオ)からは、眼下にテヴェレ川とローマの街が一望できます。アヴェンティーノの丘は、いまでも富裕層が住む高級住宅地となっています。このように、「ヒルズ」は、昔から高級住宅地なのです。(提供:Wealth Lounge

【オススメ記事 Wealth Lounge】
相続対策は「不動産評価」が決め手!その3つの具体策
ビジネスジェットはなぜ日本で広がらないのか?3つの誤解を解く
世界が混迷する今だから学びたい投資の原則!「相場の神様 本間宗久」の言葉
企業もふだんの行いが見られる時代!投資の評価軸として広がる「ESG」とは?
「相続対策の不動産投資」と「通常の不動産投資」。決定的な違いとは?