人生において最も重要な資本といえば「健康」だろう。どんなにお金や時間があっても健康でなければ、人生の楽しみは半減してしまう。

TVや新聞、インターネットなどのメディア上では、医療に関する様々な情報が掲載されているが、その中には誤ったものも多い。誤った健康法は、「無駄な努力」という意味でコストパフォーマンスが悪いだけでなく、有害にも作用する可能性すらある。

今回は、長年SNS上で医療情報の発信に取り組み、『医師が教える 最善の健康法』などの著書を持つ内科医・名取宏氏にQOLを上げていくために必要な健康知識について聞いた。

医師が教える 最善の健康法
名取 宏(なとり・ひろむ)
内科医。医学部を卒業後、大学病院勤務、大学院などを経て、現在は福岡県の市中病院に勤務。診療のかたわら、インターネット上で医療・健康情報の見極め方を発信している。ハンドルネームはNATROM。

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書店の棚には医学的に間違った内容の本も多い

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(画像=pro500 / shutterstock.com, PIXTA, ZUU online)

――名取さんは、以前にも『「ニセ医学」に騙されないために』という本を出版されています。そこから、今回は一歩進んで、「最善の健康法」という形になりました。

ニセ医学に関する情報は、相変わらず山ほどありますから、続編を書こうと思えばいくらでも書くことができました。

しかし、何かを否定し続けるのには限界があると思ったのです。「あれは間違っている」、「これは間違っている」と言い続けていると、多くの皆さんが「じゃあどうすればいいんだ?」と感じるようになるでしょう。

現在でも、健康法について多くの人が素晴らしい本を書いているとは思いますが、本屋の棚を見ていると、それ以上に医学的に間違った内容の本が多く、玉石混淆で石のほうが9割といった状態です。

そういう情報の中で、わずかかもしれませんが、自分自身でも良い情報を増やしていければという思いで「医師が教える最善の健康法」を執筆しました。

――健康本というと、「●●すべき」「■■は絶対するべきではない」といった論調になりがちですが、比較的優しいというか、バランスを見ながら全体的に「QOLを上げていこう」といった内容になっていますね。

そうした内容になった理由は2つあります。

まず1つは「この健康法がいい!」と、確固たるエビデンスがあるものは実はそれほど多くないのです。

ニセ医学であれば、「まったく効果がないどころか有害」「100%ダメ」と断言できるのですが、健康法というのは「まぁ相対的にいい」といったレベルのものも多い。もしかしたら、他にもっといい方法もあるかもしれないし、欧米の研究結果に基づいたものなので日本人には当てはまらないかもしれない。あるいは、男女で効果は異なるかもしれないというケースもあります。

こうした背景を考えると、「絶対これがいい」と言えるようなものはそれほど多くないので、自然と柔らかめの内容になるわけです。

2点目は、やはり個人の価値観による部分が大きいということです。たとえば健康だけ考えるのであれば、絶対に禁煙はした方がいいでしょう。これに関しては、確固たるエビデンスがあるわけですが、それでもやはり「長生きしなくてもいいから吸いたい」という人もいるでしょう。

そういう人の価値観を完全に否定することはできません。そういう個人の価値観と折り合いをつけながらやっていくということも大事なので、それほど強い論調のものにはしませんでした。

極端な糖質制限はわりにあわない

――健康法というと、「やればやっただけ効果がある」と思いがちですが、なかには「やりすぎると有害」なものもあるそうですね。

そうですね。ひとつ例を挙げるとすれば、糖質制限があります。これは非常に極端な主張をなさる方と、一定の支持者がいるので「あんまり良くないなあ」と常々思っていたところです。