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3. 【高速読書2回目】青ペンなぐり書きリーディングで記憶
ドッグイヤーのページを中心にダブルテクニックで読む
1回目を15分で読んだら、2回目に入ります。
2回目は、1回目からある程度時間を開けて、1回目とは違う場所でおこなうようにしましょう。このように分散することで脳に記憶が留まりやすくなります。
2回目は経験に関係なく10分で読んでいきます。でも、心配はいりません。一回読んでいるので全体像はつかめているし、重要な内容はドッグイヤーされたページにあることはわかっています。
だから、ドッグイヤーされたページを中心に読んでいけばいいのです。
速読は誰かに習わなくても、同じ本の読書を重ねることで誰でも速く読めるようになってしまうものなのです。
これは知人の経営者から聞いた話ですが、楽天の三木谷さんはものすごい多読家だそうです。1冊をすごい速さで読むそうで、周囲も驚くと言います。これはなぜというと、これまでにさまざまな本を読みすぎて、書いてある内容をほとんど一瞬で理解できているからなのだと私は思います。
例えば、同じ話し方の本を読むのも、1回目より2回目のほうが知っている箇所も情報も増えるので速く読めます。経営とか人事とか、少し難しい組織論の本などでも同じです。昨年は『ティール組織』という海外の翻訳本が流行しました。これは総数が300ページ近くあり、さすがに誰でも読むのに時間がかかります。
しかし、ある程度、組織論の本を読んだ経験があり、さらに実際に人事の現場やマネジメントの仕事に関わっている経験があれば、理解していることが多いので読むスピードが格段に速くなるはずです。
これと同じように、一度読んで内容も理解できている本を、「漢字だけリーディング」と「つまり読み」を駆使しながら再確認する意味で読むのが2回目となります。これにより、ダブルの効果で読むスピードは驚くほど速くなります。
エピソード記憶を活用!「青ペンなぐり書きリーディング」とは
2回目は、すべてのページを読む必要はありません。
ドッグイヤーしたページの前後と、1回目で理解が追いつかなかった部分だけでOKです。
私の場合は2回目で読むのは全体の70%くらいです。残りは一度読んだ段階で、もう二度と読む必要はないとあっさりと捨ててしまいます。つまり、良い本の必要なエッセンスだけを脳に記憶させるために、必要なページだけを2回続けて読むのです。
このとき、私が推奨する読み方が「青ペンなぐり書きリーディング」です。青ペンなぐり書きリーディングとは、聞き慣れない言葉かもしれません。それもそのはずで、これは完全に私のオリジナル造語です。
しかし、脳科学的なエビデンスに裏づけされた、記憶に残りやすい読書法です。具体的に紹介していきましょう。
よく本を新品同様にきれいに読む人がいます。もちろん、性格の問題もあるでしょう。私の会社でも、本には線も引きたくない、という社員は確かにいます。また、シニアの方は本を大事にする傾向が強いようです。本を転売目的できれいにするならわかります。
しかし、きれいに本を読む人には欠点があります。それは、内容が記憶に残りづらいということです。記憶に残っていない本は、ほとんどあなたの人生に役に立ちません。むしろ、時間を投資したのに回収できないということは、マイナスでしかありません。
これを、私は「本の内容があなたの脳にインストールされていない状態」と表現します。とくにきれいに本を読む人に顕著です。それははたしてなぜでしょうか。きれいに読むということは、読書をしている際に、なんら行動のアクションを本に加えていないということです。
しかし、脳というのは基本的に、喜怒哀楽の感情があったほうが記憶に残りやすいという特徴があります。
つまり、「へー」とか「なるほど」と感情を表に出して読書をするほうが、本の内容が脳に移植されやすいのです。これを脳科学では「エピソード記憶」と呼びます。
そして、ここにこそ青ペンでなぐり書きをする秘密があるのです。
ありのままの感情を本にぶつけてエピソードにする
では、なぜ青ペンでなぐるように書くのか。これは気づいたことを感情をこめて文字として書き残すと、エピソード記憶として知識が脳に移植されやすくなるためです。
人の過去の記憶というのは、実際には完全には消去されておらず、脳の中で格納されていることがわかっています。脳だけで生命維持全体の25パーセントのエネルギーを消費すると言われています。その脳が、すべての記憶を留めていたら、非常に燃費が悪いのです。
そのため、過去の記憶は脳の奥深くに収納され、必要がない限りは、なかなか表に出ることはありません。しかし、例えば、キャンプ場を訪れたとき、子どものときにキャンプで食べたカレーの味や作り方が、鮮明によみがえってくることがありますよね。
これは普段、脳が生活に不要な記憶として脳の奥深くに収容してしまっていたからです。これがキャンプ場を訪れるというトリガーがヒントになり、エピソードとして過去の記憶とともに引き出されたわけです。
例えば、楽しそうなスキューバダイビングのポスターを見て、ウミウシやフジツボなどの名前を思い出すのと同じです。それぞれの記憶は、そのときの喜怒哀楽などの感情をトリガーにして、あなたの脳の中のエピソードとして全部つながっているのです。
記憶の達人と呼ばれる人たちは、ただ単に脳のスペックが高いわけではありません。脳科学的にいえば記憶のトリガーを作る名人であり、エピソード記憶を自在に操って暗記しているだけなのです。これが、脳科学的にも認められた最先端の記憶術です。
この仕組みを読書にも利用したのが、「青ペンなぐり書きリーディング」です。
本に文字を書くことは、それ自体がトリガーになりますので、ものすごい記憶に残りやすい。さらに感情を乗せて書けば、エピソード記憶につながります。
ただ読むだけでは、本の内容は9割記憶に残りません。こうやって工夫して、脳に記憶を残していくことが大事なのです。
なぜ〝青ペン〟がベストなのか
また、青ペンを利用するのにも意味があります。色にはそれぞれ脳に与える刺激などの印象因子が違います。例えば、白色は信頼感を与えます。赤い色は情熱やパッションを呼び起こします。
私もよく利用する餃子の王将は看板をオレンジに変えただけで、売上が数倍になったといいます。これは、暖色系には食欲を高める効果があるからです。
いっぽうで、青色が脳に与える影響は何でしょうか。
青色はおもに思考力や分析力を与えてくれます。脳に記憶を定着させるのにも一定の効果があるといわれています。
さらに、本の書籍の文字はたいてい黒色です。そのため黒ペンを使うと、うまく書き込みが読み取れないということが起こります。かといって、赤色だと目立ちすぎて、高速読書をするのに目ざわりです。
それを避けるためにも、私はなぐり書きリーディングでは青ペンを使用すると決めています。
汚くてもいい! 印象深いメモで記憶に残す
青ペンでなぐり書きするさいには、なるべく文字に感情を込めて書くことがとても大切です。
というのも、1回目の高速読書のときには「なるほど、企画書に使える」「明日、部下に話そう」と思って読んでいても、忘れてしまうことがあるからです。人間はとにかく忘れる生き物です。1回目に読んで印象深かった内容を、2回目に読むときに、青ペンでなぐり書きすることで、記憶として脳に焼き付けるのです。
ですから、青ペンでただ線を引くだけでなく、その脇に、
「これを部下の田中さんに言う!」
「この心理学を商談で活用して、営業で全員ポジティブに!売上 倍!」
などと書いたほうが印象に強く残ります。
いかがでしょうか。
ちょっと書き方を工夫するだけで、こうも違うものなのです。ああ、こういう気持ちで書いたんだ、とすぐに伝わってきませんか。あとで読み返したときに、それが記憶に留めたい重要エッセンスの近くにあれば、線や書き込みをした理由が一目でわかりますよね。
そうすることでなにより、エピソード記憶として脳に定着しやすくなります。このように高速読書では青ペンでの書き込みが必須です。そのため図書館で借りた本では実施が難しくなります。本は人生のパートナーです。だから買って、ぞんぶんに青ペンで書き込みましょう。
4. 【高速読書3回目】人生を変えるアウトプットリーディング
青ペン箇所を中心にアウトプット法を考えながら読む
3回目を読む場合はどうするのでしょうか。3回目の所要時間は約5分です。
私の場合であれば、さらに読む箇所は全体の10%程度になります。書籍全体からいうと、1割程度を読み取るようなイメージです。加えて、私はすべての本を3回読みしているわけではありません。
本の内容が薄かったり、ある程度記憶に定着してしまった本は、2回読みでストップしてしまいます。そのため、10冊読んでも、このステージまで進んでくるのは3冊程度になります。ここまでくると、誰もがその本の内容が自分にとって人生にとても役立つとか、仕事ですぐに使えるとか、あるいは部下に教えたり話したい内容と思っているはずです。
これが、速読というステップを超えて、自分の目的や願望に適した本になります。こうした本は、あなたの人生を変えてくれる可能性があるので、3回目の高速読書をおこないます。
逆にいえば、速読とはそうした本に出合うための、ふるい分けの手段でしかありません。3章で詳しく紹介しますが、「アウトプットノート」という名の読書ノートをつける価値があるのも、このステージの本となります。
アウトプットノートとは、簡単にいうと、本で得た知識を、自分の具体的行動につなげていくために書くものです。
アウトプットノートを書くことを前提に、「本で得た知識を、どう自分の行動につなげるか?」を考え、その内容を青ペンで本に書き加えていくのが、3回目のアウトプットリーディングです。難しいことはありません。P138で紹介したように、「これを●●さんに伝えよう」とか「来週のプレゼンでこの方法を使おう」など、具体的に書き込んでいきます。
そんなに時間をかける必要はありません。5分で、アウトプットノートにとりまとめる箇所を読めば大丈夫です。
すでに2回も読んでいるし、「漢字だけリーディング」「つまり読み」もマスターしているはずです。さらに1回目で実行したドッグイヤーも役立ちます。しかも青ペンなぐり書きリーディングで、どこが重要かが一目で想起しやすいようにしてあるはずです。
そのため、そこだけ抜き出すようにして読んでも、一目でこれらがトリガーとなり、エピソード記憶としてそのときの感情が甦ってきます。これも、記憶を定着させるのに一役買います。ページにしても、10~20枚前後でしょうか。
そのため、速い人なら1分もかからずに終えてしまうかもしれません。
5. 教養書や参考書を記憶するために高速読書のパターン②も役立つ
集中して読むのが苦手な人向けのやり方
さて、高速読書には、ちょっとした「変形パターン」(巻頭の「パターン②」)もあります。
ここまでは1冊を3回、間隔をあけて集中して読む方法を紹介してきましたが、集中力が15分ももたない方もいるでしょうし、高速読書のスピードでは理解が追いつかない難しめの本もあります。
例えば、編年体で書かれた歴史の本や学習参考書は、変形パターン向きかもしれません。また、パターン②は、受験生や資格試験を受けようという人にもおすすめです。
では、パターン②のやり方を紹介しましょう。
キモは以下の2点です。
・1章を読み終えたら、もう一度1章を読む
・章ごとに2回ずつ読み、3回目は通して読む
要するに、読み進めるプロセスが少し違うだけで、1冊を30分かけて3回読むのは同じです。集中して読むのが苦手な方や難しめの本は、こう読むことで、脳にしっかり記憶を定着させることができるのです。
もちろん、これまで紹介してきたやり方(巻頭のパターン①)でおこなうドッグイヤーや青ペンなぐり書きは、パターン②でも同様におこないます。
具体的にはこんな感じになります。
例えば、5章立ての本の場合、読書時間は30分として、以下のような配分となります。
・第1章 1回目の読み(3分)→2回目の読み(2分)
↓
・第2章 1回目の読み(3分)→2回目の読み(2分)
↓
・第3章 1回目の読み(3分)→2回目の読み(2分)
↓
・第4章 1回目の読み(3分)→2回目の読み(2分)
↓
・第5章 1回目の読み(3分)→2回目の読み(2分)
↓
・3回目は通しで読む(5分)
章を読むごとに時間を開けることになりますので、5章立ての本ならば計6回の読書時間で1冊を読み切ることになります。
あるいは1、2章を計10分、3、4章を計10分、5章と通しを計10分と分割してもいいでしょう。あなたが実践しやすい方法を見つけていただければと思います。今日は集中力が少し欠けているかもと感じるような日には、こちらのパターン②を使ってみてください。