(本記事は、ジム・ロジャーズ氏の著書『日本への警告 米中朝鮮半島の激変から人とお金の動きを見抜く』の中から一部を抜粋・編集しています)

ロシア,子供
(画像=PIXTA)

中国に続くBRICs期待株はロシア

著しい経済発展を遂げているという意味で、BRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)に注目している人もいるだろう。

まずはブラジル。ブラジル人によると、次に大国になるのはブラジルという話だが、彼らは昔から同じことを言い続けている。「ブラジルは神様のお気に入りの国である」と。

しかし、ブラジルは商品の騰落の振れ幅が大きい。相場が急騰するときにはブラジルはいつでも素晴らしい国だが、下落するときにはブラジルでは軍事クーデターが起き、すべてが崩壊する。彼らは借金を増やし、厄介な事態に陥るのだ。日本人にとって、日系人が多く住むブラジルは暮らしやすい場所かもしれないが、投資先にするのは難しい。

インドは訪れる場所としては素晴らしい国だ。もし生涯で1つの国しか訪れることができないのであれば、私はインドを選ぶ。建造物も自然も目を見張るものばかりで、インドの女性は美人コンテスト優勝者の常連だ。あたりに漂う食べ物のいい匂いで、通りを歩くだけで魅了される。

しかし、インドは世界最悪の官僚制度という問題を抱えている。彼らはイギリスから官僚制度を学び、そして極度に改悪した。またインドは、もともと異なる民族の多数の国々が集まって成立した国である点も成長を阻害している。同質性の高い社会の日本や人口の9割以上が漢民族である中国とは違い、インドでは同じ国民であっても同じ言語を読み書きすることさえできないのだ。

こうした実情を踏まえると、私はブラジル、インド、ロシアから投資先をひとつ選ぶとするなら、ロシアを選ぶ。私は、もともとロシアを投資先としては最低の国と考えていたのだが、最近その考えを改めたのだ。理由を説明しよう。

かつて、私が1966年に初めてソ連を訪れたときは、融通が利かない警察国家であり、反資本主義の国という印象しかなく、「これでは社会が機能するはずがない」と感じたものだ。

1991年にソ連が崩壊し、ロシアになってからも、私はロシアの株式や債券を投資対象として考えることはなかった。当時のロシアでは、共産主義時代に建てた工場やインフラを修理もせずに使っていたため、生産性は低いまま。近代化路線を進め、資本を効率的に使う努力をしていた当時の中国とは対照的だった。

また、モスクワ滞在中にかたわらで爆弾が炸裂した音を耳にし、国家として危機的状況に陥っていることを肌で感じたことも、私をロシア投資から遠ざけた。

このような経験から、私は約50年にわたってロシアを投資先として考えることはなかったのだが、最近はロシアについてやや楽観的になっている。実際、いくつかのロシア企業に投資をし、取締役に就いた企業もある。

考えを改めた最初のきっかけは、ロシアが2015年にウラジオストクで「東方経済フォーラム」と名付けた国際経済会議を開催し、共同基金を立ち上げたことを知ったことだった。ロシアでは1997年以来、毎年サンクトペテルブルクで国内最大規模の国際経済会議を開催してきたが、新たにウラジオストクで東方経済フォーラムを開くようになった。その目的は、ロシア極東の開発だ。以来、プーチンは自らのリーダーシップのもと、莫大な資金をロシア極東開発に投入している。私も2018年のフォーラムに参加したが、そのときもやはりプーチン大統領が参加していた。

ロシアで共同基金が設立されたというのは、根本的な変化が起きていることを示す。共同基金の仕組みとは、簡単に言うと、「あなたが儲かれば、私も儲ける。あなたが損をすれば、私も損をする」というものだ。この仕組みは当たり前のように思えるかもしれないが、〝ロシアで〞共同基金が設立されたという点が画期的なのだ。なぜなら、外国企業から財産を没収していたかつてのロシアとはまったく違うスタンスなのだから。おそらく、ロシア政府内で何かが起きたのだ。古いルールではこれからの世界でプレイできないと理解したのだろう。

今後、世界からロシア極東に資金が集まることで、ウラジオストクは世界のなかで最もワクワクする都市のひとつになるだろう。

加えて、ロシアの極東、中国との国境付近のシベリア地方には、中国から資本や人々が集まってきている。すでに記したが、この土地はいずれ中国が実質的に占領する可能性がある。おそらく、そのことをプーチンは見越しているのだろう。超大国となる中国が進出してくれば、ロシア極東はさらに発展するからだ。

アメリカの経済制裁がロシアの農業を後押し

昔、私がロシアをオートバイで横断したときには、道路はほとんどないといっていい状態だったのだが、今はあらゆるところに高速道路も橋もできている。これらはプーチン大統領の時代に造られたものだ。

モスクワの空港でも変化に気がつくだろう。中国人で溢れかえっている。5年前はモスクワの空港に中国人は誰一人見当たらなかったのだが、今は空港も赤の広場も中国人がいっぱいで、中国語があちこちで聞かれる。

以前はロシアに行くのは嫌だったが、変化している最中だから今は楽しみだ。ロシアが変わろうとしているのだから、自分の考えも改めねばなるまい。

国土が広すぎて管理が困難という問題を抱えるロシアは、アメリカや中国のような大国になる可能性は低い。それでも、分野によっては成長する見込みがある。私はロシアのETF(ERUS)やアエロフロートの株式に加え、農業分野の企業にも重点的に投資をしている。

私がロシアの農業に期待する理由のひとつがアメリカの存在だ。皮肉なことに、アメリカがロシアに加えている経済制裁が、ロシアの農業を成長させているのだ。

ロシアでは、経済制裁により食料を自由に輸入することができない。そうすると自国で作物を育てることになる。その結果、本来であれば、グローバル経済のなかであらゆる国がアメリカなどの農業大国との競争にさらされるものなのだが、ロシアは影響を免れているというわけだ。

アメリカはロシアを攻撃しているつもりでいるかもしれないが、その間にロシアの農家はグローバルな競争にさらされることなく、最新の機械を導入し規模の経済を獲得している。経済制裁はロシアの農家にとって、むしろギフトにほかならないのだ。

アメリカがこの事実に気づいて経済制裁を解除する頃には、ロシアの農業はすでに成長を遂げ、アメリカを凌駕する規模を獲得していることだろう。そのときになって初めてアメリカは「なぜロシアの農業はこれほど巨大なのか」といぶかしむことになる。これはトランプ大統領、あるいはオバマ前大統領によってなされたことであるにもかかわらず。

ロシア文学には豊かで成功した農家が大勢登場する。歴史的に見てもロシアの農業には成長の見込みがあるという証左だ。ロシアには農業に適した土壌が豊富にあり、何百年もの間、農業を大規模に営んできていた歴史がある。

アメリカがロシアと中国両国に経済制裁措置をとっていることを忘れてはならない。これもアメリカのひどい間違いだ。なぜなら、この経済制裁がロシアと中国を接近させ、両国の発展に寄与しているからだ。

債務が少ない国であることも、ロシアにとって有効に働く。アメリカや日本をはじめとする多くの国が借金を重ね、次世代に負担を押し付けているが、ロシアは違うのだ。これは誰もロシアに金を貸さないことが理由だが、昔の中国や今の北朝鮮とも似ている。

現在、世界の中で、国債を購入するのにふさわしい国はロシアくらいしか思いつかない。事実、私はロシアの短期債を持っている。

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ジム・ロジャーズ
1942年米国アラバマ州出身の世界的投資家。
イェール大学とオックスフォード大学で歴史学を修めたのち、ウォール街で働く。ジョージ・ソロスとクォンタム・ファンドを設立し、10年で4200%という驚異的なリターンを叩き出す。37歳で引退後はコロンビア大学で金融論を教えるなど活躍。2007年に「アジアの世紀」の到来に予測して家族でシンガポールに移住し、その後も数多くの投資活動と講演をおこなう。 主要著書に『冒険投資家ジム・ロジャーズ 世界バイク紀行 』『冒険投資家ジム・ロジャーズ世界大発見』(以上、日経ビジネス人文庫)、『世界的な大富豪が人生で大切にしてきたこと60』(プレジデント社)、『お金の流れで読む 日本と世界の未来 世界的投資家は予見する』(PHP新書)がある。

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