交渉事は戦略的に進めよう
あらゆるところに「交渉」はある
「交渉」と聞くと、対立した相手との厳しいやりとりを想像しがちです。
しかし、営業や仕事の依頼といったビジネスシーンはもちろん、異性を食事に誘うとき、あるいは家庭の中でさえ、「交渉」が必要な局面は多くあります。いやむしろ、私たちが今置かれている状況は、これまでの交渉で「Yes」を勝ち取ったり「No」と拒絶されたりした結果である、というべきかもしれません!
「交渉事でYesを勝ち取るには戦略が必要だ」と説くのは、「交渉のスペシャリスト」としてコンサルや講演を多数こなしている石井通明さん。著書の『最高の結果を得る 「戦略的」交渉の全技術』で、MBAの交渉学や心理学をベースにした実践的な交渉術を解説しています。
ここでは同書から、交渉をうまく運ぶためにまず頭に入れておきたい「交渉相手のタイプ別攻略法」を紹介します。
丸腰での交渉は無謀
交渉に戦略が必要なのは、交渉のその場だけではYesを得ることが難しいからです。お互いに信頼関係がなければ交渉は成立しません。そのためにはそれなりの時間をかけて調査をして、戦略を練らなければなりません。
そこでまず必要なのが、「相手を知る」ということ。「彼を知り己を知れば百戦殆うからず」(「孫氏」)ですね。
今ではネットによって、相手の会社のことなどは事前にいくらでも調べることができます。また、個人を調べるにはSNSのチェックは欠かせません。フェイスブックを公開している人も多いので趣味や嗜好、人脈もわかります。つまり、手間を惜しまなければ、誰でもある程度「彼を知る」ことはできるわけです。
しかし、直接会ってみないとわからないことが多いのも事実です。事前の調査で大枠を想像しつつ、面談初期では相手の人物像・タイプを探ることが交渉のスタートには必要です。
交渉相手はどのタイプ?
石井さんによれば、交渉時の相手のタイプは次の6つに分類できるそうです。
1.分析型
物事を論理的に考える。数字に強い。経理や財務、銀行員、税理士などに見られる。
2.審美型
視覚や聴覚などが敏感。デザイナー、アーティスト、建築家などに多い。
3.直感型
判断が速く、即決する。弁護士や医師、会社のトップなどに多い。
4.細密型
ルールや細部にこだわる。事務系や公務員、税理士、会計士などに見られる傾向。
5.八方美人型
顔が広く、気が利く。営業関係や総務、自営業に多い。
6.優柔不断型
決定や判断を渋る。誰かの後ろ盾がないと決められない。業界職種問わず存在。
まずは、自分の交渉相手がどのタイプに当てはまるかを考えてみましょう。経験が浅い人には難しいかもしれませんが、「場数を踏んで多くの人に会ってきた人なら、数分話すとある程度見えてくる」と石井さんは言います。何事も経験ですね。
相手のタイプ別対処法
さて、相手のタイプをある程度把握できたら、それぞれに合った対処法で信頼関係の構築に努め、交渉にあたります。石井さんが解説する、6タイプそれぞれへの対処法を見ていきましょう。
分析型への対処法
論理的思考に長け、数値やグラフなどのデータや専門家の意見を重視するので、話題に「エビデンス」を多く盛り込みましょう。
審美型への対処法
見た目が大事、だらしない格好で会わないこと。プレゼン資料は見やすく美しく仕上げましょう。商品もデザインや品質が大切です。
直感型への対処法
こちらの態度や仕草を大いに注目しています。交渉においては大切なポイントをより引き立たせて伝え、その他は「些末なことです」と明確に伝えれば話が進みやすいでしょう。
細密型への対処法
資料作り、想定問答を念入りに準備しましょう。前例にこだわる傾向があるのでヒントになる前例に目を通しておき、あらかじめ対処法を考えておきます。
八方美人型への対処法
「持ち帰って検討」が多発します。身内であれこれと相談し決定が覆されることもあるので、わかりやすい資料を提供し相手の出方を待ちます。
優柔不断型への対処法
もっともやっかいですが、イライラせずに辛抱強く交渉を続けることです。相手を迷わすような過剰な資料の提出は避けてください。その場で結論を提示し、誘導していく戦略がベストです。
以上を眺めながら交渉相手を思い浮かべてみてください。「あの社長には、要点だけを大胆に強調してみよう」「あの課長へのセールスは時間がかかりそうだけど、とにかく辛抱強くいこう!」などのイメージが湧いてきませんか。イメージできたら、自信を持って交渉に臨めるはずです。
その他、「相手を味方にする技術」「相手の感情を刺激するスキル」など、石井さんが本書で披露する交渉の技術は、「交渉学」の知見をベースにしながらも、現場で役立つように実践的にかみ砕かれたものです。「どうにも交渉がうまくいかない」「なかなか話がまとまらない」と悩んでいるビジネスパーソンの皆さんの味方になるでしょう。
(提供:日本実業出版社)
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