スタートアップのVC資金調達額が2018年に4000億円に達するなど、個人にとって起業しやすい環境が整いつつある。賃金上昇を見込むことが難しい中、一旗揚げて起業したいと考える向きも多いだろう。
株式会社ドリームインキュベータ執行役員で、投資ファンド「DIMENSION」代表取締役でもある宮宗孝光さんはコンサルタント歴18年の間に大企業のコンサルティングと国内ベンチャーの支援の両方を経験し、企業の大小を問わず、1000人以上の経営者とかかわってきた。宮宗さんによると、「凄い経営者」と「凄そうな経営者」には明確な違いがあるという。
長く成功する「凄い経営者」と、一時的な成功しか手にできない「凄そうな経営者」の違いはズバリ、人的資産の築き方。「ユニクロ」ブランドで知られるファーストリテイリングの柳井正氏と宮宗さんとの具体的なエピソードを交えて紹介する。(取材・藤堂真衣/写真・森口新太郎)
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・日本のスタートアップ資金調達額が米国の4%に過ぎない理由【特集#19】
東京工業大学大学院を卒業後、シャープ株式会社でDVD用半導体レーザーの開発・量産化に携わる。ドリームインキュベータにて大企業・ベンチャーの戦略策定や採用、M&A、提携といったコンサルティングを行い、3社の上場、3社の東証一部上場企業へのMBOに貢献する。起業家を集めての勉強会も自主的に主宰し、その参加者のうち10名が上場を果たす。現在は国内ベンチャー投資ファンド「DIMENSION」の代表取締役も兼務。
スタートアップの課題は集客と収益化
──貴社は大企業の支援も、ベンチャーやスタートアップの支援も展開されていますが、宮宗さんはどのようなウエイトで業務に携わっていらっしゃいますか?
現在は国内ベンチャー投資と上場支援が約8割、残りの2割を当社の経営にかかわる業務……という割合で仕事をしています。私は起業から間もないスタートアップか、ステージを上がってきて上場を目前に控えたベンチャー企業のいずれかを見させていただくことが多いですね。
──企業支援の場で、よく起こりがちな問題や課題などはありますか。
VC調達額にも表れているように、資金を集めることは以前と比べて容易になっているのは事実です。ただ、それを活用しながらビジネスを組み立てて、黒字化させるところに課題のある企業が多い印象です。赤字のまま上場するという選択もあるかもしれませんが、いつまでも赤字では退場せざるをえません。
特に、ビジネスの最初にやるべきことは“集客”。どんなにいいものを作っても、使ってくれる人がいないとお金は生まれません。お客さまにまずは知ってもらうこと、使ってもらうこと。ここを押さえることが必須です。
また、これまでになかったような商品やサービスの場合は、価格の設定も難しい。価格はそのまま収益性に影響するので「値付けが商売だ」という人もいるくらいです。
世の中をこう変えたい、というイメージやビジョンはあっても、それをビジネスモデルとして“集客”と“収益”に落とし込むところで苦戦する経営者は多いと感じています。
人生の転機となった「凄そうな人」との出会い
──新卒で一度、シャープに就職し、その後、コンサルティングの会社に転職されています。どのような変化があったのでしょうか。