体内時計を整えるには朝食は絶対必要

コルチゾールに加えて、もう一つ大事なのがメラトニンという睡眠ホルモンです。これが適切に分泌されないと、身体が眠るモードに入らないため、寝つきが悪くなったり、熟睡できないといった症状が起こります。

メラトニンを増やすには、朝の過ごし方が重要です。まずは、朝食をしっかり摂ること。ビタミン、ミネラル、タンパク質をバランスよく摂って欲しいのですが、中でも重要なのがトリプトファンというアミノ酸とビタミンB6です。トリプトファンは、大豆食品や卵、バナナなどに、ビタミンB6は魚類やゴマなどに多く含まれます。

また、朝食には体内時計のズレを修正し、働くべき時間帯に活動モードに入って休むべき時間にしっかり眠るというサイクルを作る役割もあります。そして体内時計を整えるには、朝食で白米などの糖質を多く含む食品を摂るのが効果的です。最近は糖質制限がブームですが、朝の適度な糖質摂取には体内時計の調整という大切な役割があることを知っておきましょう。

以上を総合すると、睡眠にとって良い朝食メニューは、ご飯に味噌汁、魚や納豆、卵焼きなどの伝統的な和食になります。パン派なら、野菜サラダとツナサンド、スムージーなどを組み合わせるといいでしょう。

なお、「牛乳にはトリプトファンが含まれるので、夜寝る前にホットミルクを飲むと良い」と聞いたことがある人は多いと思いますが、トリプトファンを摂取しても、メラトニンになるまでに半日以上かかります。よって寝る直前にホットミルクを飲んでも、まったく良い影響がないわけではありませんが、すぐに睡眠の質が向上するわけではありません。むしろ日本人は牛乳が体質に合わない人も多いと言われていますので、かえって熟睡できなくなる方も多いかもしれません。

朝型か夜型かは遺伝子で決まっている

メラトニンを増やすには、太陽の光を浴びることも重要です。

朝食で摂取した栄養は、日中に光を浴びることで、夜になるとメラトニンに変わります。ですから朝食で必要な栄養を取っても、ずっと暗い場所にいたら睡眠ホルモンは思うようにうまくは生成されません。1日に60分から90分程度の直射日光を浴びると良いので、ランチは社内で済まさず外に出るなど、できるだけ太陽の光を浴びるようにしてください。

ちなみに、「早起きは健康的」と思われていますが、全員に当てはまるわけではありません。約50%は遺伝で「朝型」「夜型」「中間型」が決まっていて、夜型や中間型の人が無理に早起きすると日中に眠くなってしまいます。決して朝型が偉いわけではないのです。早起きで日中のパフォーマンスが低下するのであれば、起床時間が自分に合っていない可能性を考えてみるといいでしょう。

<『THE21』2019年10月号より>

山口真由子(やまぐち・まゆこ)
睡眠栄養指導士協会代表理事
1984年、福岡県生まれ。立教大学卒業後、大手金融機関に入社。睡眠時間を削りすぎて健康の危機に瀕したことで睡眠学を学び、「ハイパフォーマンス睡眠」のノウハウを確立。2014年から「ハイパフォーマンス睡眠セミナー」を開始し、17年には年間100回開催、合計3,000人以上が参加。また、月間最大80人に睡眠のパフォーマンスを上げるための個別コンサルティングを行なう。著書に、『3時間の睡眠で8時間分のリフレッシュができるハイパフォーマンス睡眠』(マネジメント社)がある。(『THE21オンライン』2019年10月15日 公開)

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