(本記事は、高須 克弥氏の著書『全身美容外科医 道なき先にカネはある』講談社の中から一部を抜粋・編集しています)

二重まぶた
(画像=PIXTA)

日本での手術1位は二重まぶた

いまや日本は美容整形大国のひとつになりました。

美容外科の国際学会であるISAPS(国際美容外科学会)が全世界を対象にした美容外科に関する2017年の調査結果を発表しました。この統計によると、美容上の外科的、非外科的処置が多くなされた国の上位5ヵ国は以下の通りです。   


 1位 アメリカ
 2位 ブラジル
 3位 日本
 4位 メキシコ
 5位 イタリア

肥満体国であるアメリカは、脂肪吸引手術が際立って多いことが要因です。意外に思われるかもしれませんが、ブラジルは美容医療の世界では先進国です。ブラジルでは貧乏な人でも整形しますし、お金持ちも整形します。そういうお国柄なんです。彼らは年に一度のリオのカーニバルに全財産を投入して踊りますが、そのために豊胸し、彼らが性的魅力を感じる「お尻」を大きくする女性も多いのです。

2018年に日本で行われた美容施術の件数は1,707,363件。日本でもっとも多く行われた美容外科処置は、顔面・頭部の外科手術の207,826件で、その中でも多かったのがまぶたの手術。一方、手術をしない非外科的処置は1,435,908件を占め、その1位は顔面若返り関連の489,538件。次いで多かったのは、注入剤(乳房を除く)の408,323件でした。

このデータからも明らかなように、日本の美容整形は「手術なし」の傾向を強めています。全国五ヵ所にある高須クリニックには、1日平均500人の患者が来ますが、売り上げが安定しているのは二重まぶた。続いて、エイジングケアのボトックス注射、ヒアルロン酸注入、そして豊胸です。

歯を1本抜くのも整形

何をもって整形というのか?

という疑問があるかもしれません。顔やボディのデザインをすることが美容外科医の仕事ですから、外見に関わることはすべて整形と認識してください。我々の業界の常識では、歯を1本抜いたらもう整形です。ですから、歯のホワイトニングはもちろん、ホクロ取り、脱毛、植毛……すべてが整形です。

日本の技術力は世界に誇れるものです。美容外科の得意技は、その国の民族の特徴をあらわしています。ワシ鼻の手術がうまいのはイラン。脂肪吸引はアメリカ。シワ取りはフランス。日本では二重まぶたと、低い鼻やダンゴ鼻の手術が得意です。この技術に関してはダントツで世界一です。

美容整形を受ける人が増えた要因は、料金の安い治療方法が増えたこと。メスを使わない治療が一般的になり、若い女性など患者の絶対数が増えました。

50代、60代の整形が急増している

年金,夫婦
(画像=PIXTA)

もうひとつの要因は、中高年、高齢者の患者が増えていることです。高須クリニックを見ても、50代や60代の患者が急増しています。先日は、なんと86歳の女性の豊胸手術を行いました。ちなみに、高須クリニックの歴史を振り返ると、最高齢の患者は90歳です。

時代の流れの読めない美容外科医は、若い女性に懸命にメッセージを送っています。が、いまの若い男性はお金を使いませんし、男性が貧乏になってくれば、女性の消費も落ち込みます。そもそも人口は減少傾向にあり、いまやお金を持っているのは老人だけです。人が目を向けていないところがこれからの金脈ですから、これからのメインターゲットは中高年や高齢者になります。

だから僕は「美容医療は老人医療だ」と言っています。

美容外科が流行っているとはいっても、バブルのころといまとでは目指すところが違います。昔は「もっと美しく」「もっと若く」「もっと劇的に」とプラス方向への大きな変化を求める人ばかりでした。しかし、いまの主流は「メイクの延長のような形でごく自然に」「著しく足りないところや、ひどく衰えたところを普通にする」といった、マイナス部分を一般的なレベルまで引き上げる治療です。

ここ数年、アンチエイジングという言葉がよく使われていますが、これも若返りというより、いまを維持するという意味合いが強いものです。

高須クリニックでも「驚きました。まるで別人ですね」と驚かれるような大手術をするのは中国の富裕層ばかりです。

美容整形をする高齢男性

「若さ」を望むのは女性ばかりではありません。ここ数年、若返り治療を受ける男性患者は増加傾向にあり、今後ますます増えるでしょう。その昔、美容整形をする男性といえば、包茎手術や性器改造など下半身の手術ばかりでしたが、こちらは減少傾向にあります。その代わりに、シワ取り治療、ヒゲの脱毛、シミやホクロの除去、お腹の脱脂などが人気です。とりわけ人気なのは、10分程度で施術が完了するボトックス注射とヒアルロン酸注入です。

男であれ女であれ、欲望は一緒です。「女は容姿が大事だが、男は中身だ」なんていわれますが、あくまで建て前です。本音では、女性であっても中身を重要視していますし、男性も容姿を大切にしています。

「若いですね!」と言われると、とてもうれしいでしょう? 「イケメンですね」とか「かっこいいですね」「美人ですね」と言われても、ウソっぽいというか、リップサービスのように聞こえてしまいます。だけど、「若いですね!」という誉め言葉にはウソっぽさがない。これほど言われてうれしい言葉はないと思います。

昔はよく遊んだが、見た目が衰えてきて、派手に遊ぶのは気が引ける。だから若返り治療をしたいという高齢者が増えています。たとえば、ある男性はシミを治して、植毛をして、歯にインプラントを入れて、さらにバイアグラまで飲む。彼の家族が「せっかく女遊びをやめておとなしくなったのに……また春が来てしまった」と嘆いていたので、「残りの人生、長くないのですから、温かく見守ってあげてください」とアドバイスしました。

夫婦で整形する人も増えている

いまでは夫婦で整形されるケースも増えています。奥さんが若返り治療を受ける際、旦那さんが心配して付き添うことがあります。治療前の奥さんは「あなたもやってみたら?」と誘いますが、旦那さんは「怖いから……」と及び腰です。ところが、治療によって若返った奥さんを見るや、態度を一変させて「俺もやってみようかな!」となることが多々あります。

こうした高齢化に伴う需要増、そしてプチ整形ブームもあり、美容外科は急速に広まりました。一方で、トラブルに発展するケースも少なくありません。美容外科は基本的に不要不急の手術であり、医者は万全の準備をして手術に臨みます。ですから、「美容外科は命に関わらない治療」と言われてきましたが、それは神話になりつつあります。

美容外科治療というのは、医師免許さえあれば誰でも行うことができます。そのため、市場が拡大し、違う業界からの参入者が増え、玉石混交な状態を生み出しました。つまり、医者の技術差が大きく、下手な医者が淘汰されないまま施術を行っている現状があるため、考えられない事故が起きているのです。

最近増えているのが皮膚科あがりの女性美容外科医です。彼女たちは動機が不純なんです。嫁入り道具の代わりに医師免許を取り、そこそこ稼ぎのある亭主を見つけたら、高給を取りながら片手間に治療を続けたい。そうした生活をするのに、美容外科はぴったりだと思われているのです。しかし、救急のトレーニングをしていなかったら、手術の最中に命に関わる緊急事態があったときにどうなりますか?

実際、美容外科の現場ではありえない死亡事故が起きています。

悪徳業者に要注意

美容外科の黎明期、僕は患者を増やすべく雑誌などを使って啓蒙活動に励みました。ただし、インターネットが発達して情報が簡単に入るようになったいま、そうした作業は不要になりました。現在、美容外科クリニックはこぞってインターネット広告に熱心ですが、これがトラブルの温床になっているという問題もあります。

インターネットに掲載された、集客のためのおいしい情報を見て足を運んだところ、強引な勧誘に遭い、さらに治療トラブルに巻き込まれてしまったというケースは少なくありません。たとえば高須クリニックは厚生労働省が設けた「医療機関ホームページガイドライン」を遵守して、キャンペーン情報は掲載していません。また、術前・術後は同じ条件で撮影したものを掲載するなどルールを厳格に守っています。

しかし、こうしたガイドラインやルールを無視している美容外科クリニックも存在しているので要注意です。もちろん、国も規制をかけていますが、それを巧みにくぐり抜ける悪徳業者も存在します。

僕は開業以来、「美容医療は幸福医療だ」と訴え続けてきました。美容外科医は健康でおカネも余暇もあり、さらにプラスアルファが欲しいという人の幸せのお手伝いをしているだけ。当然、余裕がない人に美容外科をすすめるなんて間違えていますし、患者をだまして過剰な施術をするなんてもってのほかです。言うまでもなく、こうした問題を解決するにはダメな医者を淘汰するしかありません。ところが、日本の美容外科界は異色の成り立ちゆえ、その仕組みがないという現実があります。

全身美容外科医 道なき先にカネはあるび
高須 克弥
1945年1月、愛知県生まれ。日本の美容外科医。医学博士(昭和大学、1973年)。美容外科「高須クリニック」院長。東海高校、昭和大学医学部卒業。同大学院医学研究科博士課程修了。大学院在学中から海外へ(イタリアやドイツ)研修に行き、最新の美容外科技術を学ぶ。「脂肪吸引手術」を日本に紹介し普及させた。「プチ整形」の生みの親でもある。紺綬褒章を受章。近著には『炎上上等』『大炎上』(ともに扶桑社新書)などがある。

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