(本記事は、高須 克弥氏の著書『全身美容外科医 道なき先にカネはある』講談社の中から一部を抜粋・編集しています)

エネルギー
(画像=PIXTA)

人間のエネルギーの根本は欲

医者は職人である。僕は自分の腕に絶対の自信を持っていました。高須病院に運び込まれてくる患者の多くが交通事故で怪我をした方でしたが、あっという間に治して早く社会復帰させてあげました。事故の衝撃でフロントガラスに突っ込んでしまい、割れたガラスでグチャグチャになった顔であっても、形成外科で修業をしていたので、傷跡が残らないように細かくきれいに縫うことができました。

術後、保険会社の方が「あれ、きれいですね。顔は傷がつかなかったんですね」と言うので、「いや、300針くらい縫ってきれいにしました」と説明すると、彼らは驚いていたものです。

どんな患者が来ても、傷跡をきれいに治して、短期間で退院させてしまう。どれほど評判になるのだろうかと思ったのですが、肝心の患者さんからはあまり感謝されませんでした。

むしろ、「治療に時間がかかったほうが、保険がたくさんおりてうれしい」と不満を漏らす人が少なくありませんでした。患者からすると、すぐ退院してしまうと労災をもらえないし、事故補償保険も安くなってしまうので、入院が長ければ長いほどありがたいというわけです。また、保険会社の人にしても、「これほどきれいだと、後遺障害認定ができません」と言っていました。

医者としての当然の善意で早く退院できるようにとしたことが、逆に迷惑とさえ思われていました。これはショックでした。

僕は人間のすべてのエネルギーの根本は欲だと考えています。僕の欲は人に感謝されたいというもの。人に感謝されてその人の笑顔を見ることが、僕には最大の快感であり、何よりも重要なんです。スポーツ選手のスポンサー活動をしたり、慈善活動をしたりするのもそのためです。だからこそ、患者にあまり喜ばれなかったことがこれ以上ないほどショックだったんです。

ついでながら、グルメや酒、女遊び……といった世俗的な欲には一切興味がありません。グルメについては、せっかちなのでどんな高級料理でも混ぜてしまいます。東京滞在中は寿司屋「久兵衛」に行くことが多いのですが、握り寿司にお茶をかけ、グチャグチャにかき混ぜて食べるので周囲の人にあきれられています。また、着るものにはこだわりませんし、ブランド品にも興味がない。名古屋の自宅もごく普通の家です。そもそもお酒が飲めませんし、銀座の高級クラブなどお金のかかるお姉さんも嫌いです。好色家に見られているのか、接待でタレント風の美女をあてがわれることもありますが、実際の僕は実に淡泊なタイプです。

下手な医者が儲かるおかしさ

保険が利く病気やケガの場合、患者からすると、早く治らないほうが金銭的に助かることもある。これは病院にしても同じで、早く完治させるよりも、いつまでも延々と治療していたほうが儲かる仕組みになっていました。

一方、高須病院は入院も短期間で、術後のマッサージもリハビリもない。たしかに患者は数多く来ましたし、回転もよかった。ところが、設備投資にお金をかけていたこともあり、肝心の儲けがありません。病院の事務長からは「院長、普通のやり方でやってくれませんか。一度、ほかの病院を見てきてください」と泣きつかれました。

よその病院を偵察すると、そこには入院患者がゴロゴロいました。半年入院とか、1年入院とかそんなレベルばかりです。しかし、その人たちのどこが悪いかというと、ただのムチ打ち症なんです。骨折で入院している人にしても、マッサージ治療であったり、リハビリであったり。だから、入院しているにもかかわらず、パチンコに出かけているような人もいました。

日本では健康保険の点数が決まっていて、当時は手術して治療するときの値段と、切らないで治療するときの値段があまり変わりませんでした。つまり、手術しないでただ手で引っ張ってギプスを巻くのが一番儲かったんです。事務長はこうも嘆いていました。

「いい手術をやったら、儲かりません。下手な医者のほうが売り上げが上がるんです」

医療の世界では事務長の言うことはもっともなのかもしれませんが、僕は日本の医療制度の矛盾に対し、ものすごく怒りを感じました。腕のいい医者が喜ばれず、収益も少ない。これがおかしいことは明らかであり、こんな制度が医療の進化を妨げていると考えざるをえませんでした。そんなやりどころのない怒りが込み上げているとき、キール大学で目撃した美容外科手術が浮かんできたのでした。

実は、整形外科が専門の高須病院には「美容整形」を求めてくる患者さんも数多くいました。僕は形成外科医として、交通事故でグチャグチャになった顔でも元通りに治してあげることができました。それはマイナスにもなりましたが、一方ではクチコミで評判になり、いつしか「二重まぶたにしてほしい」「鼻を高くしてほしい」と望む人たちが自然発生的に増えてきたのです。

そこで、高須病院とは別に「自由診療」のクリニックをつくろうと思いました。自由診療である美容外科の場合、患者にいい施術をして、短期間で社会復帰させてあげたら必ず喜ばれます。しかも、治療が済むのが早ければ早いほど患者さんに喜ばれる。いわば、医者の腕が厳しく問われるものであり、実力勝負の世界がそこにあると思いました。

「逆張り」をすればいい

カジノ
(画像=Getty Images)

美容外科医への転身を決意した理由は、医療システムへの不満だけではありません。市場原理の問題もありました。すでに整形外科医としての一歩を歩み始めていましたが、この分野ではすでに実績を積んだ人たちが数多くいました。正直、層の厚い整形外科で若造の僕がナンバーワンになれるとは思えませんでした。また、形成外科にしてもそれなりに層が厚かった。

一方、当時の美容外科は、ほとんど手のつけられていない未開拓の分野でした。もともと僕は人の後ろをついて歩くのが嫌いな性分ですし、層が薄い美容外科であれば第一人者になれるという野心も後押ししました。自分の努力次第でそこが最先端になる。すべては自分の実力次第。もちろん、先陣を切る風当たりも予想されましたが、それでもこの分野を開拓することに無限の可能性を感じました。

これまで何度も「成功する秘訣は?」「お金持ちになる秘訣は?」と質問されてきましたが、答えは簡単です。常に「逆張り」をすればいいのです。

この世の中には勝ち組と負け組が存在しますが、勝ち組というのは常に少数派です。周囲を見ても、お金持ちになれない人のほうが大多数で、お金持ちになれる人のほうが少数派でしょう。つまり、常に少数派のほうへ「逆張り」をしていれば、お金持ちになる確率が高くなるということです。みんなが株を買っているのであれば、株を売るべきですし、みんなが土地を買っているのであれば、土地を売ればいいわけです。

「人の行く裏に道あり花の山」という言葉があるように、大勢の人の言うことを聞いていてはダメです。そっちに行っても成功は得られません。僕の周りでもお金持ちは「逆張り」をしてきた人ばかりです。

僕はギャンブルをするときも常に「逆張り」をします。ギャンブルで本当に儲けている人というのは、なかなか張りません。ずっと他の人が張っているところを見て、たくさん張っているほうの逆に張っています。そうすると配当が大きくなります。

競馬にしても、本命にばかり賭けても、たいした儲けは出ません。それどころか儲かるのは主催者ばかりです。そんなの悔しいじゃないですか。穴馬を狙わない限り、大金を得ることはできません。それに、誰も注目していないような穴馬に けて当たったら、配当云々(うんぬん)を抜きにしても純粋にうれしいし、何より楽しいと思いませんか?

子供のころからそうでした。僕は天邪鬼(あまのじゃく)でみんながやることに拒否感があり、すべて「逆張り」をしていました。授業中でも「先生が言っていることは間違っているんじゃないか」とあら探しをして、先生に質問して恥をかかせるのが趣味で、ずいぶん嫌われていました。だからこれは、染みついた習性みたいなものなんでしょう。

「逆張り」は僕の人生哲学といえます。

 

いかがわしいものこそ成功する

美容外科に進むこと自体も「逆張り」でした。僕が美容外科に進もうかと思っていた時代、美容外科は世の中で一番あやしいものであり、あまりにもうさん臭くてビジネスにならないと思われていました。実際、まっとうな医者は一切手を出していない分野であり、失敗した経験を持つ医者のふきだまりみたいなところでした。本来、これから売り出そうとする人が進む分野ではなかったのです。

しかし、「逆張り」がポリシーの僕は、そうした世間の目とは真逆の目にけて一発逆転を狙おうと考えました。失敗するリスクもありますが、成功したときのインカムは大きい。誰もが行くほうに進んで小さな勝ちを何度か得るよりも、大勝負でドカッと何十倍も稼いだほうが絶対に効率がいいと思ったのです。

もちろん、失敗するリスクはあります。世の中の流れと逆のことをするわけですから、一文無しになってしまう可能性だってあるでしょう。しかし、リスクを冒さずに成功を得るなんてことは不可能です。失敗してもいいじゃないですか。無一文になっても、また最初からやり直せばいいんです。日本で生活している限り、たとえ無一文になっても命を取られることはありません。我が家の家訓は「この世で起きたことは、全部この世で解決できる。何を くよくよすることがあろうか」です。失敗したら、また稼げばいいのです。無一文になっても、生きていさえすれば再浮上のチャンスはあります。

これも大事なことですが、僕は「全盛の産業はまもなく衰退する。次の時代の覇者はいまあやしげなもの、いかがわしいものとされているものだ」と信じています。少年時代の僕が漫画家志望だったことは先にふれましたが、漫画が将来的に日本を代表する文化になると確信していましたし、実際世界に誇れる文化になりました。医療にしても、ちょっと前までは「再生医療はあやしい」と言われていましたが、現在、再生医療の最先端を担っている人たちは、近い将来、必ず勝ち組になるでしょう。

全身美容外科医 道なき先にカネはあるび
高須 克弥
1945年1月、愛知県生まれ。日本の美容外科医。医学博士(昭和大学、1973年)。美容外科「高須クリニック」院長。東海高校、昭和大学医学部卒業。同大学院医学研究科博士課程修了。大学院在学中から海外へ(イタリアやドイツ)研修に行き、最新の美容外科技術を学ぶ。「脂肪吸引手術」を日本に紹介し普及させた。「プチ整形」の生みの親でもある。紺綬褒章を受章。近著には『炎上上等』『大炎上』(ともに扶桑社新書)などがある。

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