人生には3つの寿命があるのをご存じでしょうか? すなわち「生命寿命」「健康寿命」「資金寿命」です。金融ジェロントロジーではこの3つの寿命をバランス良く一致させることを研究課題の一つとしています。

高齢化社会の様々な問題を解決するために医学、看護学、工学、法学、心理学など多様な分野で研究が進められている金融ジェロントロジー。当連載では1月20日配信のコラム『金融資産1億円でも安心できない!? 2035年、有価証券の5割を高齢者が保有する時代へ』 で紹介しましたが、私のFP事務所でも読者から相談が寄せられるなど反響がありました。

高齢化を背景に「生命寿命」「健康寿命」「資金寿命」のバランスが崩れつつあり、その問題は着実な広がりを見せています。金融業界にとっても大きな課題であり、大手信託銀行が相次いで新サービスを提供する動きも見られます。富裕層の中には資産防衛の一環として成年後見制度や各種信託等を活用するケースも見られますが、今後はより広い層でニーズが高まることが予想されます。

今回は、人生の「3つの寿命」と資産防衛についてお届けしましょう。

どんどん延びる「生命寿命」

富裕層,資産防衛
(画像=doodlia / shutterstock, ZUU online)

人生100年時代と呼ばれるように日本人の「生命寿命」は延び続け、高齢化が進んでいます。たとえば、厚生労働省の資料によると日本の男性の平均寿命(生命寿命)は1950年頃の60歳から2018年には81歳にまで延びています。つまり、生命寿命はこの70年間で平均20年以上も延びているのです。今後についても男女問わず生命寿命がどんどん延びることが予想されます。

「資金寿命」も延ばさなければならない

気がかりなのは「生命寿命」と「資金寿命」のバランスです。仕事をしている時期と退職後では、資産の考え方が大きく変わります。現役で働いているステージでは、労働収入の一部を公的年金や企業年金、iDeCo(イデコ)等で積み立てることで資産を蓄えます。

そして、退職後は現役時代に蓄えた資産を取り崩すステージに移行します。換言すれば定年退職後に資産のパラダイムシフトが起こるわけですが「生命寿命」がどんどん延びるなか「老後2000万円問題」に見られるような不安も広がりを見せています。つまり、「生命寿命」と「資金寿命」のバランスが崩れつつあるのです。

私たちがより良い人生を送るためには「生命寿命」に合わせて「資金寿命」をどう延ばすかが課題となりますが、そのためには運用が欠かせません。しかし、退職後に焦ってリスクの高い運用に手を出すとかえって「資金寿命」を縮める危険性が高くなります。全否定はしませんが、私はそのようなハイリスクの運用を推奨できません。