結果の概要:雇用者数の伸びは前月から加速、失業率は小幅上昇

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2月10日、米国労働省(BLS)は1月の雇用統計を公表した。非農業部門雇用者数は、前月対比で+22.5万人の増加(1)(前月改定値:+14.7万人)と、+14.5万人から上方修正された前月から大幅に伸びが加速、市場予想の+16.5万人(Bloomberg集計の中央値、以下同様)も大幅に上回った(後掲図表2参照)。

失業率は3.6%(前月:3.5%、市場予想:3.5%)とこちらは前月から+0.1%ポイント上昇し、市場予想も上回った(後継図表6参照)。労働参加率(2)は63.4%(前月:63.2%、市場予想:63.2%)と、3ヵ月ぶりに前月から+0.2%ポイント上昇し、市場予想も上回った(後掲図表5参照)。

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(1)季節調整済の数値。以下、特に断りがない限り、季節調整済の数値を記載している。
(2)労働参加率は、生産年齢人口(16歳以上の人口)に対する労働力人口(就業者数と失業者数を合計したもの)の比率。

結果の評価:足元で雇用増加ペースが加速も、賃金上昇は引き続き緩やか

1月の雇用増加数は、2ヵ月ぶりに20万人台の大台を回復した結果、過去3ヵ月の平均雇用増加ペースでも+21.1万人と20万人超となった。これは、19年平均の+17.5万人を大幅に上回っており、足元で雇用増加ペースが加速していることを示している。

一方、家計調査は失業率が4ヵ月ぶりの上昇となったものの、労働力人口の大幅な増加を伴って労働参加率が改善していることから、労働市場の再参入の増加に伴う影響と考えられ、労働需給の悪化を意味している訳ではない。

時間当たり賃金(全雇用者ベース)は、前月比が+0.2%(前月:+0.1%、市場予想:+0.3%)と、前月から伸びが加速したものの、市場予想は下回った。また、前年同月比は+3.1%(前月改定値:+3.0%、市場予想:+3.0%)と、こちらは+2.9%から上方修正された前月、市場予想を上回った(図表1)。もっとも、19年夏場に+3.5%となっていたことを考慮すると、労働需給がタイトな中でも賃金上昇は緩やかと言えよう。

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(画像=ニッセイ基礎研究所)

このようにみると、1月は足元で雇用増加ペースの加速がみられているものの、引き続き賃金上昇の伸びは緩やかに留まっている状況を確認する結果となった。

事業所調査の詳細:製造業の雇用減少が持続も、全般的に雇用の伸びが加速

事業所調査のうち、民間サービス部門は前月比+17.4万人(前月:+14.7万人)と前月から伸びが加速した(図表2)。

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民間サービス部門の中では、小売業が前月比▲0.8万人(前月:+4.5万人)と前月からマイナスに転じたものの、専門・ビジネスサービスが+2.1万人(前月:+1.4万人)と堅調な伸びが持続したほか、医療サービスが+3.6万人(+1.9万人)と前月から伸びが加速した。さらに、当月は運輸・倉庫が+2.8万人(+0.4万人)となり、前月からの雇用の伸びが目立った。

財生産部門は前月比+3.2万人(前月:▲0.5万人)と前月からプラスに転じた。製造業は▲1.2万人(前月:▲0.5万人)と2ヵ月連続でマイナスとなったものの、建設業が+4.4万人(前月:+1.1万人)と前月から伸びが加速し、全体を押し上げた。

政府部門は、前月比+1.9万人(前月:+0.5万人)と前月から伸びが加速した。内訳をみると、州・地方政府が+0.7万人(前月:+0.7万人)と前月並みの伸びに留まった一方、連邦政府が+1.2万人(前月:▲0.2万人)と前月からプラスに転じて全体を押し上げた。

前月(12月)と前々月(11月)の雇用増加数(改定値)は、前月が+14.7万人(改定前:+14.5万人)と+0.2万人上方修正されたほか、前々月が+26.1万人(改定前:+25.6万人)と、こちらも+0.5万人上方修正された。この結果、2ヵ月合計の修正幅は+0.7万人の上方修正となった(図表3)。なお、今月は昨年の年次改定値も発表され、雇用者数全体の水準が▲50万人程度下方修正された。一方、各月の雇用者数の増減については小幅な修正に留まり、修正幅は昨年の月平均で▲0.1万人の下方修正となった。

BLSの公表に先立って2月5日に発表されたADP社の推計は、非農業部門(政府部門除く)の雇用増加数が前月比+29.1万人(前月改定値:+19.9万人、市場予想:+15.7万人)と、+20.2万人から下方修正された前月、市場予想を大幅に上回った。1月の結果は雇用の伸びが大幅に加速した雇用統計と整合的な内容となった。

1月の賃金・労働時間(全雇用者ベース)は、民間平均の時間当たり賃金が28.44ドル(前月:28.37ドル)となり、前月から+7セント増加した。週当たり労働時間は34.3時間(前月:34.3時間)とこちらは前月から横這いとなった。この結果、週当たり賃金は975.49ドル(前月:973.09ドル)と、前月から増加した(図表4)。

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家計調査の詳細:労働参加率は13年6月以来の水準に回復

家計調査のうち、1月の労働力人口は前月対比で+57.4万人(前月:+20.9万人)と前月から伸びが大幅に加速した3。内訳を見ると、就業者数が+41.8万人(前月:+26.7万人)と前月から伸びが加速したほか、失業者数が15.6万人(前月:▲5.8万人)と前月からプラスに転じた。非労働力人口は▲44.2万人(前月:▲4.8.万人)と、こちらは前月からマイナス幅が拡大し、職探しを再開して労働市場に再参入した人数が増加していることを示した。

これらの結果、労働参加率は63.4%と13年6月(63.4%)以来の水準に改善した(図表5)。一方、プライムエイジと呼ばれる働き盛り(25~54歳)のみの労働参加率も1月が83.1%(前月:82.9%)とこちらも前月から+0.2%ポイント上昇し、08年9月(83.1%)以来の水準となった。男女の内訳は、男性が89.3%(前月:89.2%2)と前月から+0.1%ポイント上昇したほか、女性も77.0%(前月:76.8%)と+0.2%ポイント上昇した。

失業率は4ヵ月ぶりの上昇となったものの、労働参加率の改善にみられるように労働市場の再参入の増加に伴う影響とみられることから、上昇を気にする必要はないだろう。

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1月の長期失業者数(27週以上の失業者人数)は116.6万人(前月:118.6万人)となったほか、長期失業者の失業者全体に占めるシェアは19.9%(前月:20.5%)となった(図表7)。一方、平均失業期間は21.9週(前月:20.8週)となった。

最後に、周辺労働力人口(146.4万人)4や、経済的理由によるパートタイマー(418.2万人)も考慮した広義の失業率(U-6)5をみると、1月は6.9%(前月:6.7%)と前月から+0.2%ポイント上昇した(図表8)。この結果、通常の失業率(U-3)と広義の失業率(U-6)の差は3.3%ポイント(前月:3.2%ポイント)と、前月から+0.2%ポイント上昇した。

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窪谷浩(くぼたに ひろし)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 主任研究員

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